どちらも日本で働くための「在留資格」です
「在留資格」の具体例
現在までの当事務所のブログ記事では、「特定技能」について多くのページを作成してきました。「特定技能」は、就労系の在留資格であり、外国人が日本に滞在して労働に従事するために必要な「在留資格」の一つです。
同様に、「技術・人文知識・国際業務」も就労系の「在留資格」で、この在留資格をもって日本に滞在し、就労することができます。
「在留資格」には、就労系以外にも資格があります。身分系と呼ばれる在留資格には、「永住者」や「日本人の配偶者」などが該当します。これらの在留資格を持つ外国人が、日本で就労を希望した場合に、新たに就労系の在留資格を取得する必要がありません。つまり、日本人のように自由に職業を選択できます。また、これらの外国人を雇用する場合も同じです。外国人が就労しようとする会社や機関が、「特定技能」で求められるような要件を満たす必要はありません。
また、多くの外国人が「留学」という「在留資格」で日本に滞在していますが、これは非就労系の在留資格です。本来であれば日本には勉強のために来ているわけですので、就労は不可ですが、「資格外活動許可」を取得することにより、アルバイトでの就労のみが認められています。ただし、労働時間に制約があります。同様に、「家族滞在」といって、在留外国人が扶養する配偶者と子のための「在留資格」をもって、アルバイトに従事することもできます。
「留学」や「家族滞在」とは違い、「文化活動」や「短期滞在」の非就労系資格では就労は認められていません。
「在留資格」とは
日本に上陸しようとする外国人は、外国人がしようとする日本での活動と、申請をした在留資格の活動が合致するかどうかの審査を受けなければならないと、「出入国管理及び難民認定法(入管法)」に定められています。この審査を受けて許可されると「在留資格」が資格が与えられます。
また、在留資格は30以上ありますが、入管法の別表第一に全ての在留資格が規定されています。今回は、「特定技能」と「技術・人文知識・国際業務」のみを扱いますので、ご興味のある方は、以下のサイトをご覧ください。
「特定技能」とは
就労系の在留資格の一つである、「特定技能」は、1919年に施行された比較的新しい在留資格です。昨今の日本における特定の分野での人手不足を解消するために制定されました。
特定の分野には、介護、建設、飲食、ビルクリーニング、宿泊などの16分野があります。どれも昨今の人手不足が顕著な業種ばかりですね。
現場仕事に従事する外国人のための資格ですが、一定の技術、知識を持つ外国人でなければ、この在留資格を得ることはできません。一定の技術と知識を持っているかどうかの判定は、試験によって行われます。また、外国人を雇う側(受入れ機関)にも多くの要件が課されています。
特定技能には、1号と2号がありますが、2号は1号の上位資格であり、知識だけでなく、現場での実務経験も必要となってきます。2号になると、1号のように在留期間に制限がなく、家族の帯同が許されるなど、外国人にとってもメリットの大きな在留資格となります。
特定技能については、以下に詳しく書いています。よろしければお読みください。
一 法務大臣が指定する本邦の公私の機関との雇用に関する契約(第二条の五第一項から第四項までの規定に適合するものに限る。次号において同じ。)に基づいて行う特定産業分野(人材を確保することが困難な状況にあるため外国人により不足する人材の確保を図るべき産業上の分野として法務省令で定めるものをいう。同号において同じ。)であつて法務大臣が指定するものに属する法務省令で定める相当程度の知識又は経験を必要とする技能を要する業務に従事する活動
二 法務大臣が指定する本邦の公私の機関との雇用に関する契約に基づいて行う特定産業分野であつて法務大臣が指定するものに属する法務省令で定める熟練した技能を要する業務に従事する活動
出典:出入国管理及び難民認定法 | e-Gov 法令検索 別表1
「技術・人文知識・国際業務」とは
こちらも、特定技能と同じく就労系の在留資格です。ですが、特定技能と違い、現場の作業をするための資格ではなく、主にオフィスワークをするための資格です。
「技術・人文知識・国際業務」の在留資格が認められるためには、外国人は大卒等の学歴または一定以上の実務経験を有していなければなりません。また、学校で学んだ専門や実務経験に関連した業務に従事しなければならず、既習の専門知識とは関係のない、単純作業がメイン業務だと判断された場合には、在留資格の申請を行っても不許可になってしまいます。
入管が発表した統計では、2023年末時点で約36万人が「技術・人文知識・国際業務」をもって在留しています。これは「永住者」、「技能実習」に次いで、在留資格別の構成比で3位となり、日本に在留する外国人の10%以上がこの在留資格を持っていることになります。
この「技術・人文知識・国際業務」という在留資格ですが、名称が長いため、よく「技人国」(ぎじんこく)と略して呼ばれます。
本邦の公私の機関との契約に基づいて行う理学,工学その他の自然科学の分野若しくは法律学,経済学,社会学その他の人文科学の分野に属する技術若しくは知識を要する業務又は外国の文化に基盤を有する思考若しくは感受性を必要とする業務に従事する活動(一の表の教授,芸術,報道の項に掲げる活動,この表の経営・管理,法律・会計業務,医療,研究,教育,企業内転勤,介護,興行の項に掲げる活動を除く。)
出典:出入国管理及び難民認定法 | e-Gov 法令検索 別表1
「特定技能」と「技術・人文知識・国際業務」の違い
業務の違い
上でも書きましたが、「特定技能」では、人手不足の分野の現場仕事が業務となります。それに対して、「技術・人文知識・国際業務」では、オフィスワークがメイン業務であり、現場仕事ばかりをしてもらうことはできません。例えば、ホテルの予約管理、通訳業務をメイン業務として申請し、許可を受けた後、実はレストランの配膳業務や客室清掃などをメインに活動していたことが判明した場合、当該外国人の更新が認められないばかりか、今後の外国人の雇用までもが不許可になることが往々にしてあります。
「特定技能」では、周辺業務をすることも可能です。ただし、こちらも介護士として採用したのに、清掃や調理ばかりをさせることはできません。
ただし、従事する業務に関する寛容度でいえば、特定技能の方が寛容です。
外国人に関する要件の違い
まずは、それぞれの在留資格を取得するための要件が異なります。
特定技能では、一定の技術・知識を試験にて判定します。知識には日本語の知識も含まれます。2号では、実務経験も必要です。
それに対して、「技術・人文知識・国際業務」では、業務に関連する学部の大学や専修学校の卒業または、その業務での10年以上の経験(国際業務では3年)が必要です。
在留期間の違い
「特定技能」の在留期間は1年、6月、4月、2号は3年、1年、6月、「技術・人文知識・国際業務」は5年,3年,1年又は3月の期間が、それぞれの外国人の個々の審査に合わせて付与されます。
ただし、これは日本に滞在することができる期間ではありません。
在留資格を「更新」することで、「特定技能」1号では5年、2号では無期限に滞在が可能です。「技術・人文知識・国際業務」も更新により、無期限で滞在することができます。
気を付けたいのは、「更新」さえすれば、許可が下りるというわけではないということです。外国人の過去の滞在の素行や、受入れ機関の雇用条件によっては不許可となりますので、注意が必要です。
費用の違い
「特定技能1号」では、支援体制を整えることが受入れ機関の義務となっているため、その為の費用が「技術・人文知識・国際業務」よりも多くかかることになります。受入れ機関が、機関自身で支援体制を整え、実施した場合には、委託料は必要ありませんが、登録支援機関に委託する場合には、1人につき1万円~3万円/月の支援料の支払いが発生します。
転職の違い
「特定技能」の在留資格で滞在する外国人も「技術・人文知識・国際業務」で滞在する外国人もともに転職は可能です。
ただし、特定技能の場合は、転職の際にも「在留資格変更申請」が必要となります。それは、同じ分野の仕事に就く場合でもです。変更申請には1か月ほどの時間が審査にかかりますので、許可がおりるまでは次の受入れ機関で働くことができません。
対して、「技術・人文知識・国際業務」では、在留資格で認められている活動に従事するのであれば、転職の際に「在留資格変更申請」をする必要はありあません。ただし、外国人は、次の更新の際に必要となる就労履歴を残すためにも「就労資格証明書」を取得しておくことをお勧めします。
まとめ
最後までお読みいただきありがとうございました。
日本にいる外国人を採用するにあたっては、その外国人が何の在留資格を持っているのかを見極める必要がありますし、外国人が持っている在留資格が、そのまま自社で通用するのかも判断しなければなりません。また、外国から呼び寄せる場合にも、どの在留資格を申請すれば良いのか判断し、決定し、申請する必要があります。
在留資格は30以上もあることから、普段「在留資格」を取り扱っていない方からすると、何を基準に判断すべきか難しい選択となることでしょう。また、「在留資格」の認定、変更、更新いずれの申請においても、申請先である出入国在留管理局は、虚偽の申請には相当に厳しい取り扱いをします。在留諸申請において、ある要件を満たせず、不利となるのではないかと懸念して、虚偽の申請をし、後に真相が判明するというケースがあります。その場合には、当該外国人が変更、更新の際の申請が不許可となるだけでなく、今後の受入れ機関の他の外国人に関する在留諸申請も不許可になる可能性が高くなります。
また、不法就労助長罪に問われるような虚偽申請をした場合には、300万以下の罰金、3年以下の懲役のいずれか、もしくは両方の罰則を課せられる事態になるかもしれません。
今回ご紹介した「特定技能」と「技術・人文知識・国際業務」の在留資格も、費用がかかるからといって、本当は特定技能の仕事であるにもかかわらず、「技術・人文知識・国際業務」の在留資格を申請したりはなさらないで下さい。特定技能施行後は、特定技能の対象分野での「技術・人文知識・国際業務」で従事する業務について、特に厳しく審査される傾向にあるからです。
もし、どちらで申請すれば良いか判断がつかないという場合には、是非行政書士長尾真由子事務所にお問い合わせ下さい。相談料は無料です。