「技術・人文知識・国際業務」で従事できる仕事とは?どんな人なら雇用できるの?

目次

「技術・人文知識・国際業務」で従事できる仕事

それぞれの分野での活動範囲

外国人を雇用する時、または外国人が雇用されるとき、まずは、外国人が「技術・人文知識・国際業務」の在留資格で行える活動、つまり従事しようとする仕事が、この資格の範囲内であるかどうかを判断する必要があります。

出入国管理及び難民認定法では、「在留資格」の範囲を示す言葉として、その内容を「活動」という言葉で表しています。なぜなら、他の「在留資格」では、仕事以外の内容も含まれるからです。

「技術・人文知識・国際業務」の活動範囲は、「出入国管理及び難民認定法(昭和26年政令第319号)(抄)別表第一の二」に規定されています。

出入国管理及び難民認定法(昭和26年政令第319号)(抄)別表第一の二
本邦において行うことができる活動
技術・人文知識・国際業務

本邦の公私の機関との契約に基づいて行う理学,工学その他の自然科学の分野若しくは法律学,経済学,社会学その他の人文科学の分野に属する技術若しくは知識を要する業務又は外国の文化に基盤を有する思考若しくは感受性を必要とする業務に従事する活動(一の表の教授の項,芸術の項及び報道の項の下欄に掲げる活動並びにこの表の経営・管理の項から教育の項まで,企業内転勤の項及び興行の項の下欄に掲げる活動を除く。)

「技術・知識を要する業務」というのは、学術上の素養を背景とする一定水準以上の専門的能力を必要とする業務のことです。ですので、一般的に「未経験可」のような記載のある業務内容や、後述の「出入国管理及び難民認定法第7条第1項第2号の基準を定める省令」で定める基準を満たしていないような従業員が一般的に従事している業務内容の仕事に就くことはできません。

理学、工学その他の自然科学の分野に属する業務

「理学,工学その他の自然科学の分野」には、理学、工学のほかに、農学、医学、歯学及び薬学等も含まれます。具体的な仕事としては、技術開発、設計、システムエンジニア、医師、歯科医、薬剤師などが該当します。

法律学、経済学、社会学その他の人文科学の分野

「法律学,経済学,社会学その他の人文科学の分野」には、法律学,経済学,社会学のほかに、文学、哲学、教育学、心理学、史学、政治学、商学、経営学等が含まれます。具体的な仕事としては、販売・営業、海外業務、貿易業務、広報・宣伝、教育、会計業務などが該当します。

外国の文化に基盤を有する思考若しくは感受性を必要とする業務

「外国の文化に基盤を有する思考若しくは感受性を必要とする業務」とは、単に外国人であるだけでなく、日本国内の文化の中では育てられないような思考または、感受性に基づく一定水準以上の専門能力をもって、その能力を要する業務に従事する者であることが必要です。具体的には、通訳・翻訳、デザイナー(服飾、建築)、海外取引業務、商品開発などの仕事が該当します。

「技術・人文知識・国際業務」は元は二つの在留資格

「技術・人文知識・国際業務」という在留資格は、以前は、「技術」と「人文知識・国際業務」の二つの在留資格に分かれており、理系と文系で明確に区別されていました。しかし、その制度の基では、理系の大学を出た外国人が文系の仕事に就くことも、文系の大学を出た外国人が理系の仕事に就くこともできず、一部の留学生の就職において大きな支障となっていました。また、外国人留学生を受け入れたい企業の方からの要望もあり、2014年6月の入管法の一部改正により、「技術・人文知識・国際業務」とういう在留資格に統合されました。施行されたのは翌年の2015年4月で、在留期間は、5年、3年、1年、3ヶ月の4種類になります。

ですので、理系、文系どちらの大学を卒業していても、「技術・人文知識・国際業務」の在留資格をもって、上記の理系、文系、国際系のいずれの仕事にも就くことができます。

「技術・人文知識・国際業務」の要件に該当するのはこんな人

日本で「技術・人文知識・国際業務」の在留資格をもって仕事に就こうとする外国人の条件(要件)は、「出入国管理及び難民認定法第7条第1項第2号の基準を定める省令(平成2年法務省令第16号)(抄)」で明確に定められています。

出入国管理及び難民認定法第7条第1項第2号の基準を定める省令
法別表第一の二の表の技術・人文知識・国際業務の項の下欄に掲げる活動
基準

申請人が次のいずれにも該当していること。ただし,申請人が,外国弁護士による法律事務の取扱いに関する特別措置法(昭和六十一年法律第六十六号)第五十八条の二に規定する国際仲裁事件の手続についての代理に係る業務に従事しようとする場合は,この限りでない。
一 申請人が自然科学又は人文科学の分野に属する技術又は知識を必要とする業務に従事しようとする場合は,従事しようとする業務について,次のいずれかに該当し,これに必要な技術又は知識を修得していること。ただし,申請人が情報処理に関する技術又は知識を要する業務に従事しようとする場合で,法務大臣が告示をもって定める情報処理技術に関する試験に合格し又は法務大臣が告示をもって定める情報処理技術に関する資格を有しているときは,この限りでない。
イ 当該技術若しくは知識に関連する科目を専攻して大学を卒業し,又はこれと同等以上の教育を受けたこと。
ロ 当該技術又は知識に関連する科目を専攻して本邦の専修学校の専門課程を修了(当該修了に関し法務大臣が告示をもって定める要件に該当する場合に限る。)したこと。
ハ 十年以上の実務経験(大学,高等専門学校,高等学校,中等教育学校の後期課程又は専修学校の専門課程において当該技術又は知識に関連する科目を専攻した期間を含む。)を有すること。
二 申請人が外国の文化に基盤を有する思考又は感受性を必要とする業務に従事しようとする場合は,次のいずれにも該当していること。
イ 翻訳,通訳,語学の指導,広報,宣伝又は海外取引業務,服飾若しくは室内装飾に係るデザイン,商品開発その他これらに類似する業務に従事すること。
ロ 従事しようとする業務に関連する業務について三年以上の実務経験を有すること。ただし,大学を卒業した者が翻訳,通訳又は語学の指導に係る業務に従事する場合は,この限りでない。
三 日本人が従事する場合に受ける報酬と同等額以上の報酬を受けること。

上記の省令を順を追って説明します。

一、「技術・人文知識」の要件に該当するのはこんな人

業務内容

自然科学又は人文科学の分野に属する技術又は知識を必要とする業務

例)技術開発、設計、システムエンジニア、販売・営業、海外業務、貿易業務、広報・宣伝、教育、会計業務など

要件(イロハいずれかに該当していること)

イ 当該技術若しくは知識に関連する科目を専攻して大学を卒業し,又はこれと同等以上の教育を受けたこと。

大学は、日本の大学だけでなく、海外の大学も含まれます。また、短期大学、大学院、大学の付属の研究所を出ている外国人も対象です。

「関連する科目」とありますが、どの程度の関連性が認められるかは、各種学校の性格によります。

大学では、「学術の中心として、広く知識を授けるとともに、深く専門の学芸を教授研究し、知的、道徳的及び応用的能力を展開させることを目的とし・・・」(学校教育法83条第1項、第2項)とあることから、大学における専攻科目と従事しようとする業務の関連性については、従来より柔軟に判断されるようになってきています。

高等専門学校は、「一般科目と専門科目をバランス良く配置した教育課程により、技術者に必要な豊かな教養と体系的な専門知識を身につける機関」(同法第105条第2項)であるとされていることから、大学に準じた判断がされています。

他方、専修学校は、「職業若しくは実際生活に必要な能力を育成し、又は教養の向上を図ることを目的とする」(同法第124条)とされていることから、専修学校における専攻科目と従事しようとする業務については、強い関連性が必要です。

ロ 当該技術又は知識に関連する科目を専攻して本邦の専修学校の専門課程を修了したこと。

専修学校の専門課程を修了した者については、修了していることのほかにも、「専修学校の専門課程の修了者に対する専門士及び高度専門士の称号の付与に関する規定」における次の①②のいずれかの要件を満たす必要があります。

①本邦において専修学校の専門課程の教育を受け、同規定第2条の規定により「専門士」と称することができること。

②本邦において専修学校の専門課程の教育を受け、同規定第3条の規定により「高度専門士」と称することができること。

ハ 十年以上の実務経験を有すること。

大学,高等専門学校,高等学校,中等教育学校の後期課程又は専修学校の専門課程において当該技術又は知識に関連する科目を専攻した期間を含めて、10年とすることができます。

※情報処理系の業務の場合には、法務大臣が告示をもって定める情報処理技術に関する試験に合格するか、法務大臣が告示をもって定める情報処理技術に関する資格を持っている場合は、学歴、職歴の要件は必要ありません。

二、「国際」の要件に該当するのはこんな人

業務内容

申請人が外国の文化に基盤を有する思考又は感受性を必要とする業務

例)通訳・翻訳、語学の指導、広報、宣伝、海外取引業務、服飾若しくは室内装飾に係るデザイナー、商品開発など

要件(イロどちらにも該当していること)

イ  翻訳,通訳,語学の指導,広報,宣伝又は海外取引業務、服飾若しくは室内装飾に係るデザイン、商品開発その他これらに類似する業務に従事すること。


ロ  従事しようとする業務に関連する業務について三年以上の実務経験を有すること。

大学を卒業した外国人が翻訳、通訳又は語学の指導に係る業務に従事する場合は、実務経験は必要ありません。

三 報酬の要件

日本人が従事する場合に受ける報酬と同等額以上の報酬を受けること。

三は、一の「技術・人文知識」、二の「国際業務」どちらにおいても共通の要件です。どちらかというと外国人が守るべき要件というよりは、雇用側が守るべき要件です。また、報酬とは、「一定の役務の給付の対価として与えられる反対給付」をいいますので、通勤手当、扶養手当、住宅手当等の実費弁償の性格を有するものは含みません。

「在留資格変更許可申請」で気を付けるべきこと

「技術・人文知識・国際業務」の在留資格への変更許可に当たっては、「在留資格の変更、在留期間の更新許可のガイドライン」を踏まえて、日本での生活態度も考慮に入れて審査が行われます。

  • 素行が不良でないこと
  • 入管法に定める届出等の義務を履行していること

素行が不良でないこと

素行が不良とは、例えば、留学生の時に、資格外活動許可の条件に違反して、1週間に28時間以上アルバイトに従事していたような場合です。このような場合に、必ずしも不許可となるわけではありませんが、審査においてマイナス要素となります。

入管法に定める届出等の義務を履行していること

「入管法第19条の7~第19条の13」まで、「第19条の15及び第19条の16」の規定する在留カードに関する義務を履行していることが必要です。

詳しくは以下のブログで書いていますので、こちらをご覧ください。

まとめ

最後までお読みいただきありがとうございました。

今回は、どのような要件を満たしている外国人であれば「技術・人文知識・国際業務」の在留資格取得を考えることができるのかについて記載してきました。

次回は、外国人を雇用する側の所属機関(受入れ機関)のカテゴリーについてお話したいと思います。

行政書士長尾真由子事務所
対応可能地域

大阪府 箕面市、池田市、豊中市、茨木市、吹田市、大阪市

兵庫県 川西市、尼崎市、宝塚市、西宮市

いずれも公共交通機関が利用できる地域を想定していますが、地域についてはご相談に応じます。



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この記事を書いた人

大阪府箕面市の行政書士です。
・趣味:美術鑑賞、散歩
・スポーツ:卓球、テニス
・座右の銘:失敗は成功のもと
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