特定技能「宿泊」と「外食業」はここが違う!ホテル・旅館が必ず押さえるべき業務範囲【仕込み・ホールは宿泊で可能】

目次

はじめに:なぜ業務範囲の理解が重要なのか

特定技能制度では、分野ごとに従事できる業務が明確に定められています。
ホテル・旅館では「宿泊」と「外食業」が同じ施設内にあることも多く、業務が混在しやすいのが実情です。

しかし、業務範囲を誤ると、
不法就労に該当する可能性があり、企業側に大きなリスクが生じます。

この記事では、入管庁の運用方針をもとに、
宿泊と外食業の業務範囲の違いをわかりやすく解説します。

特定技能1号「宿泊分野」で認められる仕事、認められない仕事

入管庁(出入国在留管理局)のホームページには、特定技能1号「宿泊分野」の仕事内容について、次のように記載されています。

特定技能1号「宿泊分野」の仕事内容

〈 分野、区分の概要 〉
 旅館やホテルにおけるフロント、企画・広報、接客及びレストランサービス等の宿泊サービスの提供業務

〈 従事する主な業務 〉

  • フロント業務(チェックイン/アウト、周辺の観光地情報の案内、ホテル発着ツアーの手配 等)
  • 企画・広報業務(キャンペーン・特別プランの立案、館内案内チラシの作成、HP、SNS等による情報発信 等)
  • 接客業務(旅館やホテル内での案内、宿泊客からの問い合わせ対応 等)
  • レストランサービス業務(注文への応対やサービス(配膳・片付け)、料理の下ごしらえ・盛りつけ等の業務 等)

〈 想定される関連業務 〉
 旅館やホテル内における販売、備品の点検・交換等

特定技能1号の各分野の仕事内容(Job Description) | 出入国在留管理庁

特定技能1号「宿泊分野」で認められる仕事

まとめると、以下が特定技能1号「宿泊分野」で認められる仕事となります。

  • フロント業務
  • 企画・広報業務
  • 接客業務
  • レストランサービス業務
  • 関連業務として館内販売、備品の点検・交換

関連業務については、特定技能「宿泊分野」の運用要領に次のように記載されています。

特定の分野に係る特定技能外国人受入れに関する運用要領 -宿泊分野の基準について
第1 特定技能外国人が従事する業務

○ また、分野別運用要領に記載するとおり、当該業務に従事する日本人が通常従事することとなる関連業務に付随的に従事することは差し支えありません。
○ なお、関連業務に当たり得るものとして、例えば、次のものが想定されます(注)。
・ 旅館、ホテルの施設内の土産物等売店における販売業務
・ 旅館、ホテルの施設内の備品の点検・交換業務
(注)専ら関連業務に従事することは認められません。

抜粋:特定の分野に係る特定技能外国人受入れに関する運用要領 -宿泊分野の基準について930004542.pdf

関連業務には、上記の他に、清掃やベッドメーキングも含まれます。ただし、(注)にあるとおり、清掃やベッドメーキングを主業務にしてはいけません。

主業務はあくまで、「フロント業務」、「企画・広報業務」、「接客業務」、「レストランサービス業務の4業務であり、販売や清掃、ベッドメーキングなどは付随的な業務として行うことが求められます。

特定技能1号「宿泊分野」で認められない仕事

特定技能1号「宿泊分野」で認められない仕事は以下の通りです。

  • 本格的な調理(仕込みはOK)
  • 接待

残念ながら、特定技能「宿泊」の在留資格を持つ外国人に、調理業務を任せることはできません。
ただし、「仕込み」や「盛り付け」は認められているため、厨房に入ることはできます。あくまで、調理人(コック)としての雇用や、調理工程の中心を担う業務が認められていないという点が重要です。

また、接待も認められていません。接待は、「風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律」(風営法)に規定されており、具体的には以下のような行為をいいます。

  • 談笑・お酌など
  • ショーなど
  • 歌唱など
  • ダンスなど
  • 遊戯など
  • その他スキンシップ的なこと

また、特定技能「宿泊分野」の運用要領には次のように記載されています。

特定の分野に係る特定技能外国人受入れに関する運用要領
-宿泊分野の基準について-
第3 特定技能雇用契約の適正な履行の確保に係る基準

ロ 1号特定技能外国人(出入国管理及び難民認定法(昭和26年政令第319号)別表第1の2の表の特定技能の項の下欄第1号に掲げる活動を行おうとする外国人をいう。以下同じ。)及び2号特定技能外国人(同欄第2号に掲げる活動を行おうとする外国人をいう。ハにおいて同じ。)を、風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律(昭和23年法律第122号。次号において「風営法」という。)第2条第6項第4号に規定する施設において就労させないこととしていること。
ハ 1号特定技能外国人及び2号特定技能外国人に、風営法第2条第3項に規定する接待を行わせないこととしていること。

抜粋:特定の分野に係る特定技能外国人受入れに関する運用要領 -宿泊分野の基準について(法務省、国土交通省編)

接待については、別の記事で詳しく解説したいと思います。

特定技能1号「外食業分野」で認められる仕事・認められない仕事

入管庁(出入国在留管理局)のホームページには、特定技能1号「外食業分野」の仕事内容について、次のように記載されています。

特定技能1号「外食業分野」の仕事内容

〈 分野、区分の概要 〉
 飲食物調理、接客、店舗管理

〈 従事する主な業務 〉
・飲食物調理(客に提供する飲食料品の調理、調製、製造を行うもの)
 例 : 食材仕込み、加熱調理、非加熱調理、調味、盛付け、飲食料品の調製等

・接客(客に飲食料品を提供するために必要な飲食物調理以外の業務を行うもの)
 例 : 席への案内、メニュー提案、注文伺い、配膳、下膳、カトラリーセッティング、代金受取り、商品セッティング、商品の受渡し、食器・容器等の回収、予約受付、客席のセッティング、苦情等への対応、給食事業所における提供先との連絡・調整 等

・店舗管理(店舗の運営に必要となる上記2業務以外のもの)
 例 : 店舗内の衛生管理全般、従業員のシフト管理、求人・雇用に関する事務、従業員の指導・研修に関する事務、予約客情報・顧客情報の管理、レジ・券売機管理、会計事務管理、社内本部・取引事業者・行政等との連絡調整、各種機器・設備のメンテナンス、食材・消耗品・備品の補充、発注、検品又は数量管理、メニューの企画・開発、メニューブック・POP 広告等の作成、宣伝・広告の企画、店舗内外・全体の環境整備、店内オペレーションの改善、作業マニュアルの作成・改訂等

〈 想定される関連業務 〉
 ・店舗において原材料として使用する農林水産物の生産
 ・客に提供する調理品等以外の物品の販売

特定技能1号「外食業分野」で認められる仕事

  • 飲食物調理
  • 接客
  • 店舗管理
  • 関連業務として農林水産物の生産、物品の販売

接客は、厨房から離れた宴会場などでも行うことができます。ただし、「宿泊分野」と同じく、接待は不可です。また、特定技能「飲食業分野」の在留資格では、風営法の許可を受けたホテル・旅館であっても「対象旅館等における特定技能外国人の受入に関する誓約書」などの書類を提出することにより、特定技能外国人を雇用することができます。

特定技能1号「外食業分野」で認められない仕事

  • ホテル・旅館のフロント業務
  • ホテル・旅館の企画・広報
  • ホテル・旅館での接客
  • 客室清掃・ベッドメイキング
  • 接待

外食業分野で認められるのは、レストラン・厨房に関連する業務のみです。基本的にホテル・旅館での業務は認められていません。ただし、配膳などの接客はできますので、厨房から離れた部屋や広間、宴会場での飲食に関連した接客業務を任せることはできます。

ホテル・旅館で起こりがちな誤解とリスク

ホテル・旅館で特定技能外国人を雇用した場合、次のような配置ミスが起こりがちです。

  • 宿泊分野で採用した外国人に「調理」をさせてしまう
  • 外食業分野で採用した外国人にフロントを担当させてしまう
  • 宿泊分野のスタッフに「飲食店としての店舗管理」を任せてしまう

これらは不法就労に該当する可能性があり、企業側に罰則リスクがあります。

正しい分野選択のポイント

  • 実際の業務内容を細かく洗い出す
  • 宿泊と外食業が混在する施設では、どの業務が主かを判断
  • 必要に応じて、宿泊と外食業で別々に採用することも検討
  • 曖昧な場合は専門家に確認するのが安全

まとめ

宿泊と外食業は、同じ施設内にあっても業務範囲が明確に異なります。
誤った配置は不法就労につながるため、正しい理解が不可欠です。

特定技能の分野選択や業務範囲の判断に迷われたら、
行政書士長尾真由子事務所へお気軽にご相談ください。

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この記事を書いた人

大阪府箕面市の行政書士です。
・趣味:美術鑑賞、散歩
・スポーツ:卓球、テニス
・座右の銘:失敗は成功のもと
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