はじめに
フィリピン人材の採用に魅力を感じている企業は少なくありません。若く安定した人材を確保でき、職場の活性化にもつながるからです。
しかし一方で、「費用が高い」「手続きが煩雑」 といった課題に直面し、なかなか一歩を踏み出せない所属機関もあるのではないでしょうか。
そこで今回は、フィリピン人材のメリットとデメリットを整理したうえで、コストや手続きの課題を 「自社支援+専門家協力」 で解決する方法をご提案します。
フィリピン人材のメリット・デメリット
フィリピン人材のメリット
フィリピン人材を雇用すると、以下のような多くのメリットがあります。
- 安定雇用が見込める
- 若い人材が豊富
- 宗教による制約が少ない
- 英語が話せる
- 明るく社交的な性格
安定雇用が見込める
出入国在留管理庁発行の「技能実習生の失踪者数の推移」によると、令和4年度から令和6年度の失踪率は、フィリピンが断トツで低いことが分かります。

出典:出入国在留管理庁|001425159.pdf
フィリピンでは国民の約10%が海外で働き、その送金額はGDPの約10%に相当します。政府は海外労働者を支援する制度を整え、認定送出し機関が必ず関与する仕組みにより、無認可ブローカーによる借金や不正を防いでいます。
また、失踪すれば政府からの仕事紹介が受けられないなどのペナルティがあるため、失踪や安易な転職は労働者にとってメリットがありません。技能実習生だけでなく特定技能でも同様に、政府が労働者の動向を把握しており、転職には厳格な手続きが必要です。
一方、他国では悪質なブローカーが安価に人材を紹介するケースがあり、質の低下や二重紹介などの問題が生じます。フィリピン人材はこうしたリスクがなく、長期的かつ安定して働いてもらえる傾向があります。
若い人材が豊富
以下は日本の人口ピラミッドと、フィリピンの人口ピラミッドを並べたものです。
左が日本で、右がフィリピンです。日本人の平均年齢は約50歳に対して、フィリピンの平均年齢は24歳です。また、日本はこれからも高齢化が進むと予想されていますが、フィリピンは後10年はこの人口割合が続く予想です。


フィリピンには、若い人材が豊富に存在します。つまり、やる気のある優秀な人材を雇用できるチャンスがまだまだあるということです。
因みに、ベトナムの平均年齢は32歳、インドネシアは29歳です。
宗教による制約が少ない
フィリピンでは国民の8割以上がローマカトリックであるため、飲食物に大きな制約がなく、他国籍の外国人ともキッチンを共有しやすい環境があります。さらに、祈りの場所や時間、休日に特別な制約がないため、業務に支障をきたすことなく働いてもらうことができます。
英語が話せる
特定技能1号で来日する外国人の多くは、日本語力がN4レベルにとどまるため、日本語を完全に理解することは難しいのが現状です。こうした場面では、共通言語である英語でコミュニケーションを取れることが大きな助けになります。
さらに、特定技能制度では面談やオリエンテーションの際に通訳が必要ですが、英語通訳者は他言語の通訳者に比べて見つけやすいという利点があります。もし社内に英語話者がいれば、外部の通訳者を雇う必要がなく、コスト削減にもつながります。
明るく社交的な性格
フィリピン人は家族を非常に大切にし、孤独を避ける文化を持っています。そのため、レストランやカフェでも仲間と大勢で集まり、コミュニケーションを楽しむ傾向があります。初対面の人に対しても人見知りをせず、すぐに打ち解ける人が多いのも特徴です。
こうした明るく社交的な性格は、職場においても良い影響をもたらします。一緒に働く仲間が明るければ、自然と雰囲気が和らぎ、チームワークの向上や職場環境の改善につながることが期待できます。
フィリピン人材のデメリット
メリットがある反面、デメリットもあり、多くの所属機関がフィリピン人雇用に際して、問題を感じやすい点が以下の2点です。
- 費用負担が重い
- 手続きが面倒くさい
費用負担が重い
ベトナム、インドネシア、中国などに比べると、フィリピン人材の雇用にはより重く費用の負担がかかります。これは、フィリピンが国を挙げて出稼ぎ労働者を保護しているため、労働者から費用を徴収できない仕組みになっているからです。その結果、雇用にかかる費用の大部分を所属機関が負担しなければなりません。
さらに、他国では任意とされる保険やオリエンテーション費用も、フィリピン人材の場合は必須であり、所属機関が負担する必要があります。
手続きが面倒くさい
フィリピン人を雇用する場合は、フィリピンの DMW(移住労働者省) に登録する必要があります。その手続きは、日本の MWO(移住労働者事務所) に申請を行い、雇用契約書に許可印を得ることで進められます。
MWO申請は、フィリピンから新たに労働者を招聘する場合だけでなく、国内で転職するフィリピン人を雇用する際にも必要です。
提出書類は多岐にわたり、すべて英語に翻訳して提出しなければなりません。準備から許可が下りるまでには、通常2カ月から半年程度を要すると考えられます。
さらに、この手続きは在留資格申請とも並行して進める必要があり、初めてフィリピン人を受け入れる所属機関にとっては、相応の書類準備とスケジュール管理が求められます。
解決策:自社支援+専門家協力
フィリピン人雇用には魅力を感じるけれど、コストや手間を考えて二の足を踏んでいるという所属機関の方には、この2つのデメリットを解決する「自社支援+専門家協力」戦略の検討をお勧めします。
費用負担が重い→自社支援
まず、費用負担を減らすために、登録支援機関の支援から自社支援への切り替えを検討してみましょう。フィリピン人労働者は政府によるサポート体制が整っているため、他国の特定技能外国人に比べて所属機関の支援に依存する場面が少ない傾向があります。そのため、所属機関の職員に過度な負担をかけることなく、自社支援へ移行することが可能です。費用が軽減できても、職員の負担が急増してしまっては本末転倒です。
そこで、まずはフィリピン人材のみを自社支援に切り替え、社内の状況を確認しながら、他国の特定技能外国人についても段階的に自社支援へ移行していく方法が有効です。
手続が面倒くさい→専門家協力
面倒な手続きは、専門家(弁護士や行政書士)に依頼するのも一つの方法です。特定技能1号は、最初の在留資格申請が許可された後も、1年ごとに更新申請が必要な資格です。さらに、MWO申請も行わなければなりません。制度や法律に詳しい専門家と協力すれば、比較的費用を抑えながら手続きを進めることができます。
専門家の協力を得る方法としては、以下の3つのパターンがあります。
- 顧問契約を結び、毎月顧問料を支払っていつでも相談できる体制を整える
- フィリピン人を雇用する際の入管手続きやMWO申請、自社支援導入サポートのみを依頼する
- 1と2の両方を依頼する
最もコストがかかるのは3のパターンですが、それでも複数の特定技能1号外国人の支援を登録支援機関に依頼する場合と比べれば、月額の負担は軽く済む可能性があります。
まとめ
最後までお読みいただきありがとうございました。
「今回のブログ記事では、フィリピン人材のメリットとデメリットを整理したうえで、コストや手続きの課題を『自社支援+専門家協力』で解決する方法をご提案してきました。
もしフィリピン人材の採用や支援に課題を感じている企業様がありましたら、ぜひ一度、長尾真由子事務所へご相談ください。制度や手続きに精通した専門家として、御社の状況に合わせた最適なサポートをご提供いたします。初回相談は無料ですので、安心してお問い合わせいただけます。

