2025年4月の制度改正以降、特定技能1号外国人の受入れにおいて「自社支援」を選択する企業が増えています。登録支援機関に委託していた支援業務を自社で担うことで、コスト削減や社内体制の強化につながる一方、入管局への届出義務もすべて自社で対応する必要があります。
この記事では、「定期届出」と「随時届出」の違いや注意点を、自社支援の視点から整理します。
定期届出とは?
年1回の義務に変更
2025年4月15日以降、定期届出は年1回の提出に変更されました。
次回の提出は2026年4月以降となり、それ以降は毎年1回の提出で済むようになります。
提出期間
提出期間:対象年の翌年4月1日~5月31日
対応する対象期間:対象年の4月1日~翌年3月31日
例えば、2025年4月1日~2026年の3月31日までの届出内容(受入れ・活動・支援実施状況)を、2026年の4月1日~5月31日に提出するということになります。
届出内容
届出内容の例:
- 外国人の受入れ状況
- 活動内容(職務、勤務時間など)
- 支援実施状況(生活オリエンテーション、相談対応など)
提出書類
2026年以降の定期届出に対応した提出書類一覧は、現時点では未公表です。最新情報の確認が欠かせません。
随時届出とは?変更があったら即対応
随時届出の種類
随時届出は、外国人の状況や支援内容に変更が生じた場合に都度提出するものです。
例えば、以下のような届出あります。
- 特定技能雇用契約に係る届出(雇用契約の変更・終了・新たな契約の締結)
- 1号特定技能外国人支援計画変更に係る届出
- 登録支援機関との支援委託契約に係る届出(契約の締結・終了・変更)
- 受入れ困難に係る届出(自己都合でない退職、行方不明、傷病、1か月以上活動未実施等)
- 特定技能雇用契約及び1号特定技能外国人支援計画の基準等を定める省令の基準不適合に係る届出
- 1号特定技能外国人支援計画の実施困難に係る届出
随時届出の提出期限
随時届出は、事由が発生してから14日以内に提出します。郵送で提出する場合は、14日以内に管轄の出入国在留管理署に到着していなければなりません。
ただし、届出が遅れた場合でも、遅れた理由を文書にして添付することで受理されます。
随時届出の提出書類一覧
随時届出が必要な変更事項と提出書類の一覧が、入管のホームページからダウンロードできます。
参考:出入国在留管理局|特定技能所属機関・登録支援機関による届出(提出書類)
自社支援に切り替えたら、届出も「自社責任」
登録支援機関に支援業務を委託していた場合でも、届出業務を委託することはできません。(弁護士、行政書士に委託をすることは可能です。)
届出は、あくまで特定技能所属機関の責任において行う必要があります。
とはいえ、実際には登録支援機関に支援業務だけでなく届出まで丸投げしていた所属機関も少なくないのではないでしょうか。
そこで本記事では、そうした所属機関が「自社支援」へ移行する際に、届出業務も含めた負担が増加することへの注意喚起を目的として執筆しています。
「自社支援」を検討されている所属機関の皆さまには、届出義務も含めた全体の業務負担を十分に踏まえたうえで、慎重にご判断いただきたいと思います。
届出を自社で管理することによるメリット・デメリットを以下に整理しました。
自社管理のメリット・デメリット
届出の自社管理のメリット:
- 支援内容を柔軟に設計できる
- 外国人との信頼関係が築きやすい
- コンプライアンスを自社で管理できる
届出の自社管理のデメリット:
- 届出業務の負担増
- 書類不備によるリスク
- 法改正への対応力が求められる
その他「届出」のルール
届出をしなかったらどうなる?
「申請」ではなく「届出」であるため、軽視されがちですが、届出を怠った場合には罰則が設けられています。
届出を行わなかった、または虚偽の届出をした場合には、
「特定技能雇用契約及び1号特定技能外国人支援計画の基準等を定める省令」第2条第4号リに基づき、一定期間、特定技能雇用契約の締結が認められない可能性があります。
さらに、罰金刑や過料の対象となる可能性もあります(出入国管理及び難民認定法第71条の4第1号、同法第77条の2)。
第二条 法第二条の五第三項の法務省令で定める基準のうち適合特定技能雇用契約の適正な履行の確保に係るものは、次のとおりとする。
四 次のいずれにも該当しないこと。
リ 特定技能雇用契約の締結の日前五年以内又はその締結の日以後に、次に掲げる行為その他の出入国又は労働に関する法令に関し不正又は著しく不当な行為をした者
(9) 法第十九条の十八の規定による届出をせず、又は虚偽の届出をする行為
次の各号のいずれかに該当する者は、30万円以下の罰金に処する。
一 第19条の18第1項(第1号に係る部分に限る。)若しくは第2項(第1号に係る部分に限る。)の規定による届出をせず、又は虚偽の届出をした者
第19条の18第1項(第1号を除く。)若しくは第2項(第1号を除く。)の規定による届出をせず、又は虚偽の届出をした者は、10万円以下の過料に処する。
届出先は?
提出先は、特定技能所属機関の住所(法人の場合は登記上の本店所在地)を管轄する、
地方出入国在留管理局またはその支局です。
管轄地域ごとの管理局・支局および担当部門の一覧は、以下をご参照ください。
また、最新情報や詳細については、出入国在留管理庁の公式ホームページもあわせて確認しましょう。
参考:出入国在留管理局|地方出入国在留管理官署
届出の提出方法
届出の提出方法には、次の3つの方法があります。
- 窓口提出
- 郵送
- インターネットから提出
1窓口提出と2郵送の際の届出の提出先は、特定技能所属機関の住所を管轄する地方入管局・支局となります。
※法人の場合は、登記上の本店所在地を管轄する入管局が提出先となりますので注意してください。
届出は、インターネットから提出することもできます。
3のインターネットから提出する場合は、事前に利用者登録をする必要があります。
詳しくは、出入国在留管理庁電子届出ポータルサイトをご覧ください。
まとめ:届出は「義務」、支援は「信頼構築」
特定技能制度を安心して活用するためには、届出義務の履行が不可欠です。
自社支援に切り替えることで、外国人との関係性が深まり、企業としての責任も明確になります。
今後は、制度改正や提出書類の変更にも柔軟に対応できるよう、社内体制の整備と情報収集が重要です。
「自社支援に切り替えたいが、何から始めればよいか分からない」「分からないことが多く、詳しく教えてほしい」といったご相談がありましたら、ぜひ下記までお気軽にお問い合わせください。
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