改正後の特定技能1号は6年も可能?通算在留期間と受入れ機関の対応

目次

はじめに

特定技能1号は、外国人材の受入れを支える重要な在留資格です。従来は「通算5年まで」が原則でしたが、2025年9月30日の制度改正により一定の条件を満たせば6年まで在留可能となりました。所属機関・受入れ機関にとって、この改正は人材戦略や契約管理に直結する大きなポイントです。

通算在留期間の基本ルール

  • 原則:通算5年まで
    → 在留期間は1年、6か月、4か月などで付与され、更新を繰り返しても合計5年が上限。
  • 技能実習の期間は含まれない
    → 技能実習での在留は、特定技能1号の通算には算入されません。
  • 5年を超える場合は特定技能2号への移行が必要
    → 建設業や工業製品製造業分野・外食業分野など、2号が認められる分野では移行可能。

通算在留期間に含まれないケースと期間

  • 新型コロナ対策で入国できなかったケース:新型コロナウイルス感染症の感染拡大防止のための上陸を拒否する措置などのやむを得ない事情により、再入国することができなかった期間
  • 妊娠・出産・育児による中断のケース:産前産後休業期間・育児休業期間により1号特定技能外国人としての活動が行えない期間
  • 病気・けがによる休業のケース:病気・けがにより1号特定技能外国人としての活動が行えない期間(数日間自宅で療養する場合や、断続的な通院により業務が行えない場合は対象外)

2号に不合格でも6年まで在留可能な特例

特定技能2号への移行が認められている分野(後述します)で、特定技能2号評価試験に不合格となった1号特定技能外国人でも、以下の要件を満たす場合には、通算6年まで在留が可能となります。

対象者の条件

試験結果の基準

  • 分野別運用方針に定める「特定技能2号」への移行に必要なすべての試験で、合格基準点の8割以上を取得していること
  • 疎明資料(試験結果通知書など)から要件を満たしていることが確認できること(不合格となった試験の受験日は問われません)

申請人の誓約事項

申請人(特定技能外国人)は、「通算在留期間を超える在留に関する申立書」において、以下の事を誓約し、署名します。

  • 合格基準点の8割以上を取得した試験について、合格に向けて精励し、再受験すること
  • 試験に合格した場合は、速やかに「特定技能2号」への在留資格変更許可申請を行うこと
  • 合格できなかった場合は、速やかに帰国すること

所属機関の要件

  • 当該外国人を引き続き雇用する意思があること
  • 特定技能2号試験の合格に向けた指導・研修・支援体制を有していること

申請の方法

在留期間更新許可申請

改正後の特例を希望する場合は、5年の通算在留期間が満了する前(概ね3か月前)に、必要な疎明資料を添付して在留期間更新許可申請を行います。
その際、在留を適当と認めるに足りる「相当の理由」がある場合に限り、通算在留期間6年を上限として許可されます。

提出が必要な書類

  1. 在留資格「特定技能1号」の在留期間更新許可申請に係る提出書類
  2. 通算在留期間を超える在留に関する申立書(参考様式第1-31号)
  3. 分野別運用方針に定める「特定技能2号」への移行に必要な全ての試験結果通知書(試験実施機関から発行されたもので、合格基準点の8割以上の得点を取得していることが確認できる資料の写し)

1.2の様式は、出入国在留管理局のホームページからダウンロードすることができます。

  1. 在留資格「特定技能」 | 出入国在留管理庁
  2. 特定技能関係の申請・届出様式一覧 | 出入国在留管理庁

3はそれぞれの分野の試験実施機関から発行してもらってください。

対象となる分野

現在対象となる分野

  • ビルクリーニング分野
  • 工業製品製造業分野
  • 農業分野
  • 漁業分野
  • 飲食料品製造業分野
  • 外食業分野

試験結果通知書のサンプルは、出入国在留管理局のこちらのサイトから確認できます。以下は、ビルクリーニングのサンプルです。

抜粋|特定技能関係の申請・届出様式一覧 | 出入国在留管理庁

今後対象となる分野

  • 建設業分野(2025年12月以降対象となる予定
  • 造船・舶用工業分野(2026年4月以降対象となる予定
  • 自動車整備分野(2026年1月から対象となる予定
  • 航空分野(2025年11月以降対象となる予定
  • 農業分野(2026年3月から対象となる予定

2号に移行できなかった場合の対応

2号に移行できなかった場合、特定技能1号として再度受け入れることはできないため、同一人物の特定技能制度での再雇用はできません。そのため、この場合の対応としては、主に次の2点となります。

  • 帰国
  • 他の在留資格への変更

帰国

特定技能1号の通算在留期間が満了し、2号への移行や他の在留資格への変更ができなかった場合、外国人本人は原則として速やかに帰国する必要があります。所属機関・受入れ機関は、以下の点を踏まえて計画的に対応しましょう。

帰国準備のステップ

1.契約満了日の明確化
  • 在留期間満了日を基準に、雇用契約の終了日を明記し、本人に早めに通知する。
  • 契約書には「通算在留期間満了時点で契約終了」と記載しておくとトラブル防止になる。
2.本人への説明と面談
    • 帰国の必要性、制度上の制限、今後の選択肢(再申請不可など)を丁寧に説明。
    • 通訳を交えた面談や、母国語での説明資料を用意すると安心感を与えられる。
    3.帰国支援の実務対応
    • 航空券の手配支援(本人負担か会社負担かは契約に準じる)
    • 住居の退去手続き、公共料金の精算、荷物の整理などをサポート
    • 退職証明書や在職証明書の発行(母国での再就職に役立つ)
    4.行政手続きの確認
    • 出国前に必要な届出(住民票の除票、健康保険の脱退、年金手続きなど)を案内
    • 出入国在留管理庁への退去届や、在留カードの返納なども忘れずに対応
    5.本人の心情への配慮
    • 「不合格=失敗」ではなく、「制度上の区切り」として前向きに伝える
    • 感謝の言葉や今後の応援メッセージを添えることで、信頼関係を保てる

    他の在留資格への変更

    特定技能1号の通算在留期間が満了し、6年特例や特定技能2号への移行ができなかった場合でも、本人の状況によっては他の在留資格へ変更する道が残されています。

    ただし、特定技能1号を満了した後に再度技能実習へ戻ることはできません。制度上の逆戻りは認められていないためです。

    主な変更可能性

    留学

    日本の教育機関に進学する場合、在留資格「留学」へ変更が可能です。ただし、本人が学習意欲を持ち、受入れ先学校が決まっていることが条件です。「資格外活動許可」を申請することで、アルバイトとして就業を続けてもらうこともできます。

    家族滞在

    配偶者や子どもが日本に在留している場合、「家族滞在」へ変更できる可能性があります。この場合も「資格外活動許可」を申請することで、アルバイトとして就業を続けてもらうことができます。

    技術人文知識国際業務

    特定技能外国人が大学卒業者である場合、「技術人文知識国際業務」での就労を検討することができます。ただし、特定技能1号で行っていたのと同じ業務に就労させることはできません。文系であれば営業、経理、広報、事務など、理系であればシステムエンジニアやプログラマー、機械・設計の技術者などのいわゆるホワイトカラーの業務を用意する必要があります。

    実務対応のポイント

    本人の希望とスケジュールの確認

    帰国か資格変更かを本人である外国人と早めに話し合いましょう。資格変更には時間がかかりますし、不許可の可能性もあります。不許可の可能性なども考えたスケジュール管理が求められます。

    必要書類の準備

    変更申請をする在留資格によって、揃えるべき書類が異なります。本人の希望する在留資格について、出入国在留管理庁のホームページを見るなどして、要件と必要書類を確認しておきましょう。

    審査期間を考慮

    資格変更には審査期間があるため、在留期間満了前に余裕を持って申請しましょう。在留資格変更の申請をする場合は、特例期間を利用することもできますが、期限ぎりぎりに申請をすることはお勧めしません。

    特例期間とは

    在留カードを所持している方が,在留期間更新許可申請又は在留資格変更許可申請(以下「在留期間更新許可申請等」という。)を行った場合において,当該申請に係る処分が在留期間の満了の日までになされないときは,当該処分がされる時又は在留期間の満了の日から二月が経過する日が終了する時のいずれか早い時までの間は,引き続き従前の在留資格をもって我が国に在留できます。

    抜粋|特例期間とは? | 出入国在留管理庁

    所属機関の役割

    常勤での雇用継続はできない場合でも、本人の生活整理や情報提供を支援することで信頼関係を維持しつつ、アルバイトとして勤務してもらいながら特定技能2号の試験勉強を進めてもらうことが可能です。所属機関にとっても、同じ外国人に長期的に働いてもらえることは大きなメリットとなります。

    まとめ

    最後までお読みいただき、ありがとうございました。

    今回は、2025年9月30日の特定技能制度改正の中で、特に2号試験不合格者に対する例外的措置についてお伝えしました。

    所属機関にとっても、外国人にとっても嬉しい制度ですが、1年間の間に合格できなければ、基本的には帰国となってしまいます。所属機関の担当者は、本人である特定技能外国人とよく話し合い、今後の対応について確認しておく必要があります。

    制度の運用や申請準備でお困りの際は、長尾真由子事務所までお気軽にお問い合わせください。

    相談料は無料です。

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    この記事を書いた人

    大阪府箕面市の行政書士です。
    ・趣味:美術鑑賞、散歩
    ・スポーツ:卓球、テニス
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