はじめに
出入国在留管理庁は平成29年9月に、「「クールジャパン」に関わる分野において就労しようとする留学生等に係る在留資格の明確化等について」という文書を公開しました。
その中では、昨今のクールジャパン戦略のおかげで、日本にアニメやファッション、デザイン、食などを学びに来ている留学生が増加しているため、彼らがこれらの分野で就職を考える時の指針となるよう、「技人国ビザ」が許可されるにはどういったことに気を付けねばならないのか、許可・不許可の基準と事例を示して解説してくれています。
要件と事例
要件
留学生が、クールジャパンの分野に、「技人国ビザ」で就業しようとする時は、以下の1、2の要件を満たす必要があります。3は外国人に「実務研修」を実施する場合のみ当てはまる要件です。
- 外国人が日本の大学又は専門学校においてアニメ又はファッション・デザインに関連する科目を履修して卒業していること
- 就職しようとする機関での業務が、学術上の素養を背景とする一定水準以上の専門的技術又は知識を必要とする業務であること
- 2に該当しない業務に一時的に従事する場合には、それが企業における研修の一環であって、在留期間の大半を占めるようなものではないこと
1.日本の大学、専門学校で関連科目を履修、卒業
外国人は日本の大学又は専門学校において、アニメ又はファッション・デザイン・食に関連する科目を履修して卒業している必要があります。
2.学術上の素養を背景とする一定水準以上の専門的技術又は知識を必要とする業務
大学、または専門学校で学んだ知識を用いて日本の企業に就職を希望する場合、一般的には、出入国管理及び難民認定法(以下「入管法」)別表第一の二の表の在留資格「技術・人文知識・国際業務」に業務内容が合致しているかどうかの審査が行われます。
本邦において行うことができる活動
技術・人文知識・国際業務
本邦の公私の機関との契約に基づいて行う理学,工学その他の自然科学の分野若しくは法律学,経済学,社会学その他の人文科学の分野に属する技術若しくは知識を要する業務又は外国の文化に基盤を有する思考若しくは感受性を必要とする業務に従事する活動(一の表の教授の項,芸術の項及び報道の項の下欄に掲げる活動並びにこの表の経営・管理の項から教育の項まで,企業内転勤の項及び興行の項の下欄に掲げる活動を除く。)
文書の中では、「学術上の素養を背景とする一定水準以上の専門的技術又は知識を必要とする活動であって、単に経験を積んだことにより有している技術・知識では足りず学問的・体系的な技術・知識を要するものでなければならない」書かれています。
どういうこと?となるような文章ですが、事例を見ると分かる通り、アシスタント的な仕事や、接客、販売、調理のように、経験をすればできるようになる仕事では、「技人国」の仕事には当たりませんよ、と言っているわけです。
つまり、アニメーション分野やデザイン分野でいうと創作活動が含まれていたり、広報や商品開発、営業など、大学や専門学校で学んだことが活かせるような仕事でないといけないということです。
3.「実務研修」が就職期間の大半を占めない事
これについては、以下のブログ記事に詳しくまとめていますので、よろしければご覧ください。
事例
許可事例
本邦の専門学校においてマンガ・アニメーション科を卒業し、専門士の称号を付与された外国人が、アニメ制作会社において、入社当初の6月程度背景の色付け等の指導を受けながら行いつつ、その後は絵コンテ等の構成や原画の作成といった主体的な創作活動に従事するもの。
本邦の専門学校においてデザイン科を卒業し、専門士の称号を付与された外国人が、服飾業を営む会社の海外広報業務を行う人材として採用された後、国内の複数の実店舗で3か月間販売・接客に係る実地研修を行い、その後本社で海外広報業務に従事するもの。
本邦の専門学校において美容に関する専門課程を卒業し、専門士の称号を付与された外国人が、ヘアーウィッグやヘアーエクステンション等の商品開発及び営業販売の業務に従事するもの。
本邦の専門学校において経営学に係る学科を卒業し、専門士の称号を付与された外国人が、飲食店チェーンの海外展開業務を行う人材として採用された後、本社における2か月の座学を中心とした研修及び国内の実店舗での3か月の販売・接客に係る実地研修を行い、その後本社で海外展開業務に従事するもの。
出典:出入国在留管理庁 https://www.moj.go.jp/isa/applications/resources/nyukan_nyukan69.html
不許可事例
本邦の専門学校においてマンガ・アニメーション科を卒業し、専門士の称号を付与された外国人が、アニメ制作会社において、主体的な創作活動を伴わない背景画の色付け作業等の補助業務にのみ従事するもの。
本邦の専門学校においてデザイン科を卒業し、専門士の称号を付与された外国人が、服飾業を営む会社において、主体的な創作活動を伴わない裁断・縫製等の制作過程に従事するもの。
本邦の専門学校において美容学科を卒業し、専門士の称号を付与された外国人が、海外展開を予定する化粧品会社に雇用され、同社の海外進出準備のための企画・マネジメント業務を行うため1年間の座学及び実地研修を行うとして申請があったが、実際には、同社で同じ業務に就く日本人は4か月で実地研修が終わるのに対し、当該外国人については店舗を替えながら実地研修をするという名目で1年間に渡って販売・接客業務をさせる計画であったことが、審査
の過程で明らかになったもの。
本邦の専門学校において経営学に係る学科を卒業し、専門士の称号を付与された外国人が、飲食店チェーンにおいて3年間の滞在予定で海外展開業務を行うとして申請があったが、実際には、入社後2年間は実地研修の名目で店舗での調理・接客業務に従事させる計画であったことが審査の過程で明らかになったもの。
出典:出入国在留管理庁 https://www.moj.go.jp/isa/applications/resources/nyukan_nyukan69.html
食分野に関する他のビザ
食分野に関しては、他のビザ申請を検討することも可能です。
- 「特定活動」
- 「技能」
- 「特定技能(外食分野)」
「特定活動」
調理師又は製菓衛生師としての就労を希望する方で、農林水産省が実施する「日本の食文化海外普及人材育成事業」の対象となる場合は、在留資格「特定活動」による就労が認められます。
(参考URL:http://www.maff.go.jp/j/shokusan/gaisyoku/ikusei/)
本邦の調理師養成施設において調理師免許の取得資格を得た外国人が、農林水産省が実施する「日本の食文化海外普及人材育成事業」の対象となって、5年間調理に関する技能を要する日本料理の調理に係る業務に従事するもの。
「技能」
日本において外国料理の調理師として就労する場合には、在留資格「技能」での就労が認められる場合があります。
「特定技能(外食分野)」
技能試験と日本語試験に合格することにより、大学や専門学校を卒業せずとも、食の分野での就労が認められる場合があります。詳しくは以下のブログ記事をご覧ください。
まとめ
最後までお読みいただきありがとうございました。
昨今のクールジャパンブームにより、多くの外国人が留学生として日本に滞在し、また学んだ知識を活かして就職しようとしています。
ただ、現場の下働きや、販売、接客のどの業務は、短い期間に「実務研修」として従事する分にはかまいませんが、就業期間の大部分を占めるような計画になっていると、ビザの申請をしても不許可になりやすくなります。
「自分の場合はどうだろう」と疑問に思われる方は、一度下記までご相談ください。相談料は無料です。
対応可能地域
大阪府 箕面市、池田市、豊中市、茨木市、吹田市、大阪市
兵庫県 川西市、尼崎市、宝塚市、西宮市
いずれも公共交通機関が利用できる地域を想定していますが、地域についてはご相談に応じます。