認定送出し機関(PRA)とは
フィリピン人労働者を採用する際、「現地の認定送出し機関(PRA)を通すと、初期費用や管理費がかさんでしまう…」「自社で直接スカウトした優秀な人材や、知人の紹介で出会った人材を、エージェンシーを挟まずにスムーズに雇用したい」と考えたことはありませんか?
結論から言うと、特定の「免除要件」を満たせば、送出し機関を通さずに直接雇用(Direct Hire)でMWO申請を行うことは可能です。
しかし、フィリピン政府は労働者保護の観点から「原則として直接雇用を禁止」しているため、この特例を利用するには厳しいハードルが存在します。さらに、実務上で非常に見落とされやすい「通算5人まで」という数制限についても注意が必要です。
今回は、企業の採用担当者や受入れ機関の皆様に向けて、送出し機関なしで直接雇用するための最新要件と、制限を超えた場合の対策を徹底解説します。
なぜ原則禁止?フィリピンの「直接雇用(Direct Hire)」ルール
フィリピン政府(移住労働者省:DMW/旧POEA)の基本方針として、自国籍の労働者が不当な労働環境に置かれないよう、政府が公認した「認定送出し機関(PRA)」を間に挟むことを義務付けています。
このルールを無視して日本側だけで雇用手続きを進めてしまうと、フィリピン人労働者が現地を出国する際に必要な「OEC(海外雇用許可書)」が発給されず、空港で足止めを食らって出国できないという最悪のトラブルに発展します。
そのため、送出し機関を通さない「直接雇用(Direct Hire)」を行うには、必ずフィリピン政府から「直接雇用禁止の免除(Exemption on the Ban on Direct Hiring)」の認証を得る必要があります。
送出し機関なしでMWO申請するための「免除要件」
POEA規則第124条により、直接雇用禁止の適用除外となる主な対象は以下の通りです。
1. 外交官・国際機関・政府高官等(第124条 a〜c, d-1)
- 外交団の構成員、国際機関、国家元首や副大臣以上の政府高官
- 上記に準ずる官職で、MWO(旧POLO)または大使館等の推薦を受けた者
2. 専門職・技能労働者の直接雇用(第124条 d-2)★一般企業向け
以下の条件をすべて満たす場合、企業は送出し機関を通さずに直接雇用申請が可能です。
- POEA基準以上の労働条件: 規定の標準契約を上回る優れた雇用条件で契約が締結・公証されていること。
- 人数制限: その事業主(雇主)が初めて直接雇用で受け入れる専門職・技能労働者の数は「5名」を超えてはならない。 ※複数名を一括雇用する場合は、まとめて申請をすることができます。
3. 親族・家族による雇用(第124条 d-3)
- 日本の永住権を持つ親族・家族によって雇用される場合。
☆ 担当者が注意すべきポイント 一般的な「特定技能」や「技能実習」の在留資格は、原則としてこの免除対象には含まれません。基本的には送出し機関を通す必要があります。
実務でわかる「直接雇用の可否」の見極め方
制度上の要件は定められているものの、実際の判断が非常に曖昧なケースも少なくありません。 実務上、当事務所ではまず管轄のMWO(またはDMW)へ「どの提出書類を準備すべきか」を直接確認することをおすすめしています。
その際のMWO(またはDMW)からの回答によって、以下のように判断できます。
「Professional Skilled Worker (Direct Hire)(MWO大阪)」又は「Exemption on the Ban on Direct Hiring」(MWO東京)の書類を案内された場合
直接雇用の要件に該当している可能性が高く、そのまま直接雇用の手続きを進められます。
「Professional Skilled Worker (Agency Hired)」又は「PROFESSIONALS and SKILLED WORKERS via PRA」の書類を案内された場合
原則として「直接雇用は不可(PRA経由が必要)」という判断になります。
※「PRA(認定送出し機関)を通して」と案内された場合でも、ダメ元で「直接雇用」として書類を提出してみる選択肢自体は存在します。ただし、認証されずに不許可となるリスクが高く、時間・手間・申請費用が無駄になってしまう可能性が高いため、慎重な判断が必要です。
知らないと実務が止まる「通算5人ルール」
専門職(技術・人文知識・国際業務など)の外国人を直接雇用する場合に、多くの企業担当者様が見落としてしまうのが「人数の上限」です。
フィリピン政府の海外雇用規則(2016 Revised POEA Rules and Regulations)に基づき、「同一の雇用主(法人)が、送出し機関を通さずに直接雇用できるフィリピン人労働者は、累計で5名まで」と厳格に定められています。
これはMWO大阪が発行している公式チェックリストにも明記されているルールです。
ここに注意!「5名」のカウント方法
- 「同時に雇用している人数」ではなく、「過去に直接雇用で受け入れた通算人数」です。
- 過去に直接雇用した社員がすでに退職していたり、帰国していたりしても、カウントはリセットされません。
「うちはITエンジニアだから何人でも直接雇用できる」と思い込み、6人目の申請をMWOに出した段階で「上限オーバー」として手続きがストップしてしまうケースもあります。
6人目からはどうする?企業のリカバリー策
もし自社がすでに過去5名の直接雇用枠を使い切ってしまっている場合、6人目のフィリピン人専門職を採用するにはどうすればよいのでしょうか?
答えは、「原則通り、フィリピン現地の認定送出し機関(エージェンシー)を利用する手続き(Agency-hired)に切り替える」です。
6人目以降の手続きの流れ
- フィリピン現地の認定送出し機関(PRA)を選定し、エージェンシー契約を結ぶ
- その送出し機関を経由して、日本のMWO(東京または大阪)へ求人登録(Accreditation)の申請を行う
- MWOの承認後、現地で必要な手続きを進める
直接雇用に比べるとPRAの費用や募集の手続きが発生しますが、6人目以降はこのルートを踏まなければ合法的に出国させることができません。採用計画を立てる際は、自社の「過去の累積ビザ取得実績」を必ず確認しておきましょう。
MWO申請と入管申請のタイムライン
フィリピンから呼び寄せる場合
以下は、直接雇用で初めてフィリピン人を呼び寄せる場合の大まかな手順です。
- 「結核非発病証明書」を取得:指定医療機関での「結核スクリーニング」受診:現地本人は日本政府指定の医療機関で「入国前結核スクリーニング(JPETS)」を受診し、「結核非発病証明書」を取得します。
- 日本のMWO(東京・大阪)での審査と面接:必要書類を日本のMWOへ提出し、受入れ企業の代表者(または人事責任者等)に対する面接(現在はほぼ行われていません)をパスして、書類の「認証」を受けます。
- 出入国在留管理庁へのCOE(在留資格認定証明書)申請: 現地から届いた「結核非発病証明書」を添付書類の一部として含め、日本の入管へCOEの交付申請を行います。
- 査証の発給:COEが交付されたら、「日本ビザ申請センター(JVAC)」に申請を行い査証の発給を受けます。
- OECの発行・出国:COE交付後、認証された書類をDMWに提出し、「OEC(海外雇用許可書)」の発給を受けます。フィリピン人はCOE、OEC、査証、パスポートを空港で提出し出国します。
※フィリピンから労働者を呼び寄せる場合は、必ず在留資格認定証明書交付申請よりMWO申請を先に行うか、もしくは両方を同時に行ってください。入管から発行されたOECには3カ月の期限があり、延長は基本的に認められていないためです。
国内で採用する場合
国内採用では、入管へは「在留資格変更許可申請」を行います。ただし、在留資格によってはこの申請は不要です。また、すでに全く同じ条件でフィリピン人を採用してる企業で、DMWに登録した採用枠が残っている場合は、MWO申請も必要ありません。
ただし、上記については必ず専門家(行政書士、弁護士)や各種機関(地方出入国在留管理署、管轄のMWO)に確認をとり、慎重に対応してください。安易な判断は禁物です。
- 出入国在留管理庁への新在留カード申請: 在留資格変更許可申請を日本の入管に行います。
- 日本のMWO(東京・大阪)での審査と面接:必要書類を日本のMWOへ提出し、受入れ企業の代表者(または人事責任者等)に対する面接(現在はほぼ行われていません)をパスして、書類の「認証」を受けます。
- 新在留カードの発行:申請時に登録した受取方法で、新在留カードを管轄の地方出入国在留管理署から受け取ります。
- DMWへの登録:MWOから認証された書類をフィリピン人本人に渡し、本人がMWOから案内されたURLからDMWへの登録を行います。
- OECの取得と再入国:一時帰国の際に、フィリピンにてフィリピン人本人がOECを取得し、日本に再入国します。
スムーズなフィリピン雇用・MWO申請のために
送出し機関を通さない直接雇用は、コスト面やスピード面で大きなメリットがある一方で、受入れ企業と本人がすべての手続きを自ら進める必要があるため、制度への十分な理解と慎重な対応が求められます。 特に、MWO申請は「認証を取れば終わり」という単独の手続きではなく、在留資格申請との整合性を踏まえて進めることが不可欠です。どちらか一方の準備が不十分であると、審査の遅延や差し戻しにつながる可能性があります。
また、直接雇用の場合は、認定送出し機関を通す通常の申請ルートとは、手続きの流れも提出すべき書類も大きく異なります。企業側がどのルートで進めるべきかを正しく判断し、必要書類を適切に整えることが、スムーズな認証取得の鍵となります。
MWO申請(東京・大阪)でお悩みなら、行政書士へご相談ください
MWO申請は郵送での提出が可能であり、事前の確認や協議も電話やメールで完結するため、当事務所では管轄(MWO東京・MWO大阪)を問わず、全国の受入れ企業様および行政書士(同業者)の先生方からのご相談・ご依頼に対応しております。
- 「自社(または顧客)で作成した英文書類や契約内容に不備がないか不安」
- 「事前確認からMWO(東京・大阪)への申請まで、手続きをスムーズに進めたい」
- 「登記簿の英訳や公証手続き、英文レターの作成のみスポットで任せたい」
当事務所では、実際のMWO申請を通じて認証を取得した実務経験をもとに、書類作成から申請サポートまで丁寧に対応しております。
フィリピン人の直接雇用手続きでお困りの企業様・ご担当者様はもちろん、「MWO申請のノウハウがなく対応に苦慮されている」「スポットで実務を依頼したい」とお考えの行政書士の先生方も、どうぞお気軽にお問い合わせ・ご相談ください。

