対象施設とは
特定技能制度を使って、外国人を雇用できる施設は、「上乗せ基準告示」によって基準が定められています。これは、全ての介護事業者を対象として作成されていますが、中には訪問介護事業者のみが対象となる基準もあります。
上乗せ基準告示
以下が介護分野の「上乗せ基準告示」を要約したものになります。
- 受入れ機関が介護等の業務を行っていること
- 外国人介護人材を雇用するに当たっては、実務経験1年以上の1号特定技能外国人を雇用すること
- 外国人介護人材に対し、訪問介護等の業務の基本事項等に関する研修を行うこと
- 外国人介護人材が訪問介護等の業務に従事する際、一定期間、責任者等が同行する等により必要な訓練を行うこと
- 外国人介護人材に対し、訪問介護等における業務の内容等について丁寧に説明を行いその移行等を確認しつつ、キャリアアップ計画を作成すること
- ハラスメント防止のために相談窓口設置等の必要な措置を講じること
- 外国人介護人材が訪問介護等の業務に従事する現場において不測の事態が発生した場合等に適切な対応を行うことができるよう、情報通信技術の活用を含めた必要な環境整備を行うこと
- 1号特定技能外国人の数が、当該事業所の日本人等(外国人介護福祉士、永住者、日本人の配偶者等を含む)の総数を超えないこと
- 介護分野における特定技能外国人の受入れに関する協議会に入会すること
1.受入れ機関が介護等の業務を行っていること
介護等の業務を行っている機関とは、以下のような施設になります。

抜粋:厚生労働省 介護分野における特定技能外国人の受入れについて
2.外国人介護人材を雇用するに当たっては、実務経験1年以上の1号特定技能外国人を雇用すること
外国人介護スタッフが訪問系サービスを適切に提供できるよう、事業所は一定の基準を満たす人材を受け入れることが求められます。
1. 実務経験の要件
✔ 原則として、介護事業所等での実務経験が1年以上あるスタッフを受け入れる
✔ 例外的に、実務経験が1年未満の場合は、より高い日本語能力(N2相当以上)を有することが必須
2. 同行訪問の徹底
✔ 利用者ごとに同行訪問を実施し、サービス提供の質を確保
✔ 週1回のサービス提供の場合は半年間同行訪問
✔ 週2回の場合は3ヶ月、週3回以上の場合は2ヶ月の同行訪問を実施
3. ICTの活用による支援
✔ 利用者・家族の同意がある場合、同行訪問3ヶ月後に見守りカメラなどICTを活用し、事業所との円滑な連携を図る
✔ スタッフが安心して業務を行えるよう、ICTを活用した継続的な支援体制を整備
3.外国人介護人材に対し、訪問介護等の業務の基本事項等に関する研修を行うこと
受入事業所は、利用者やそのご家族の生活習慣や個々の状態に配慮したサービスを提供できるよう、以下の内容を含む研修をしっかりと実施することが求められます。
研修内容
✔ 訪問介護の基本と生活支援技術
利用者の居宅で介護サービスを適切に提供できるよう、食事・入浴・排泄介助などの技術を学びます。
✔ 利用者・家族・近隣とのコミュニケーション
傾聴・受容・共感のスキルを身につけ、利用者やご家族との信頼関係を築きます。
✔ 日本の生活様式の理解
食事のマナーや礼儀作法、季節の行事など、日本の文化を理解し、利用者との交流を深めます。
✔ 緊急時の対応研修
急な体調不良や事故発生時にも落ち着いて対応できるよう、連絡方法や報告手順を事前に確認します。
介護現場では、利用者一人ひとりの生活習慣や状態に寄り添ったサービスが求められます。特に訪問介護では、利用者の自宅でケアを行うため、スタッフが適切に対応できるよう研修をしっかりと行うことが重要です。
4.外国人介護人材が訪問介護等の業務に従事する際、一定期間、責任者等が同行する等により必要な訓練を行うこと
訪問介護では、利用者の生活習慣や居住環境に合わせた個別対応が求められます。特に外国人介護スタッフが安心して業務を遂行できるよう、OJT(On-the-Job Training)を適切に実施することが重要です。
具体的には、一定期間サービス提供責任者や利用者を担当している先輩職員などが同行するなどの措置を取ることが求められます。
5.外国人介護人材に対し、訪問介護等における業務の内容等について丁寧に説明を行いその移行等を確認しつつ、キャリアアップ計画を作成すること
外国人介護スタッフが安心して働き、長期的に成長できるよう、事業所は以下の取り組みを計画的に実施することが求められます。
1. 業務内容や注意事項の丁寧な説明
✔ 事前に業務の内容や注意点を詳しく説明し、スタッフの意向を確認する
✔ 不安や疑問に寄り添い、納得した上で業務に取り組めるようサポート
2. キャリアパスの明確化とキャリアアップ計画の策定
✔ 習得すべき技能や目指す姿を明確にし、本人と話し合いながらキャリアパスを構築
✔ 長期的な成長を見据えたキャリアアップ計画を、外国人スタッフと共同で策定
3. キャリアアップ計画の共有とサポート
✔ 本人の意向を尊重し、日本語能力の向上やスキル習得の目標を計画に反映
✔ 事業所としての支援内容を伝え、目標達成に向けたステップを理解できるよう促す
6.ハラスメント防止のために相談窓口設置等の必要な措置を講じること
外国人介護スタッフが安心して働ける職場環境を整えるため、事業所はハラスメントの防止と適切な対応策を徹底することが求められます。
1. ハラスメントを未然に防ぐための取り組み
✔ 対応マニュアルの作成と共有
職場内のルールを明確にし、スタッフ全員に周知する
✔ 管理者の役割の明確化
ハラスメントを防ぐための責任者を決め、適切な対応を行う
✔ 利用者や家族への周知
ハラスメント防止の取り組みを利用者やその家族にも理解してもらう
2. ハラスメント発生時の対応策
✔ 決められたルールに従い、迅速に対応
問題が発生した際には、事前に策定したルールに沿って対処する
✔ 相談窓口の設置と周知
外国人介護スタッフが安心して相談できる窓口を設置し、必要な支援を受けられるようにする
7.外国人介護人材が訪問介護等の業務に従事する現場において不測の事態が発生した場合等に適切な対応を行うことができるよう、情報通信技術の活用を含めた必要な環境整備を行うこと
介護現場では、不測の事態が発生した際に迅速かつ適切に対応できるよう、事前の準備と情報共有の仕組みを整えることが不可欠です。 そのため、事業所は以下の取り組みを実施する必要があります。
1. 緊急時対応マニュアルの作成
✔ 緊急時の連絡先や対応フローを整理し、スタッフ全員が確認できるようにする
✔ 想定されるケースごとの対応方法を明確にし、速やかに行動できる体制をつくる
2. 緊急時を想定した研修の実施
✔ 実際の現場を想定した訓練を行い、スタッフの対応力を向上させる
✔ 緊急時に必要な応急処置や連絡手順を実践的に学ぶ
3. 他の職員が駆けつけられる体制の確保
✔ 緊急時には迅速にサポートできるよう、職員の連携体制を整える
✔ 事業所内で役割分担を明確にし、円滑に対応できるよう準備する
4. 情報共有の仕組みの整備
✔ サービス提供記録や申し送りの情報をスタッフ間で適切に共有できるシステムを導入
✔ 必要な情報を確実に伝達できるよう、定期的な確認の仕組みを設ける
5. ICTの活用による業務負担の軽減
✔ コミュニケーションアプリを活用し、職員同士の情報共有を円滑にする
✔ 緊急時の連携を強化し、迅速な対応が可能な環境を整える
8.1号特定技能外国人の数が、当該事業所の日本人等(外国人介護福祉士、永住者、日本人の配偶者等を含む)の総数を超えないこと
外国人が就業する事業所ごとに、外国人の数が日本人等の数を超えないかを考えます。会社全体の人数ではありません。
日本人等とは、以下の人を含みます。
- 日本人の介護士や介護福祉士
- 外国人の介護福祉士
- 「永住者」の在留資格を持つ外国人
- 「日本人の配偶者」や「永住者の配偶者」等の在留資格を持つ外国人
つまり、上記の人数が多ければ多いほど、多くの特定技能外国人を雇用することができます。ただし、日本人であっても、看護師や事務員、ドライバーなどの他の職種に従事する人を含めることはできません。
9.介護分野における特定技能外国人の受入れに関する協議会に入会すること
特定技能で外国人を雇用する場合、各分野の協議会に入会する必要があります。介護分野は、「国際厚生事業団」が協議会を運営しています。
特定技能「介護」分野の協議会への入会は、オンラインで行います。詳しい手続きの流れは、厚生労働省の「介護分野における特定技能協議会」手続きの流れをご覧ください。
まとめ
最後までお読みいただきありがとうございました。
特定技能を活用して訪問介護の外国人スタッフを雇用するには、事業所が満たすべき条件が多くあります。しかし、現場では人材不足が深刻であり、外国人人材の力を借りなければ事業の継続が難しいという事業所も少なくありません。
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