「私文書」を「公文書」にするには|MWO申請での署名認証との違い

前回までの3回に渡って、「公印確認」と「アポスティーユ」に関する記事を書いてきました。「公印確認・アポスティーユ」とは、日本国内の公的機関から発行された書類を外務省が認証し、その真正性を証明するものです。

「公印確認」と「アポスティーユ」は、どんな書類にでも付されるわけではありません。外務省の認証を得られるのは、「公文書」だけです。

ただし、「私文書」も公証役場で認証を受けることにより、「公文書」にすることができます。

まずは、「公文書」と「私文書」の違いについて見ていきましょう。

目次

「公文書」・「私文書」とは

「公文書」とは

「公文書」とは、国や自治体などの公的な機関が発行した文書のことです。例えば、以下のような文書が「公文書」になります。

公文書の例
  • 登記簿謄本
  • 住民票
  • 運転免許証
  • パスポート
  • 犯罪経歴証明書
  • 納税証明書

※運転免許証やパスポートなど、直接に認証を受けると後に不都合が生じる書類の場合は、コピーを取り、私文書として認証を受けることになります。

「私文書」とは

「私文書」とは「公文書」以外の文書になります。つまり、公的な立場にない個人や会社が作成した書類のことで、これに作成者の署名や記名押印がなされた文書を「私署証書」と言います。以下が良くある私文書の例です。

私文書の例

私文書の例
  • 契約書
  • 履歴書
  • 証明書
  • 領収書
  • 借用書
  • 入学試験の答案
  • 私立大学の卒業証明書や成績証明書
  • 自筆証書遺言

※国公立の学校の卒業証明書や成績証明書は公文書です。

※「公文書」を翻訳した書類は「私文書」になります。

「私文書」を「公文書」にするには

「私文書」を「公文書」にする行為を「公証(ノータリゼーション)」と言います。それに対して、外務省が行う認証をリーガリゼーションと言います。

日本で一般の人が作成した「私文書」は、本当に本人が書いたものなのかどうか、外国の機関には判断することができません。そこで、本人が書いたものであることを公証人が公証(ノータリゼーション)した後に、更に公証役場とは別の公的機関である外務省が認証(リーガリゼーション)を行い、必要に応じてまた更に駐日大使館・(総)領事館の認証を得るという2重、3重の証明を得ることで、文書の真正性を証明することとなっています。

「公印確認」・「アポスティーユ」は外務省による認証(リーガリゼーション)です。詳しくは以下の記事をご覧ください。

外務省の認証を得て「私文書」を提出する場合

以前の記事でも書きましたが、「私文書」に外務省の認証を求められた場合の手続きの流れをおさらいしておきましょう。

STEP
私署証書の作成

「私文書」に署名もしくは記名捺印をして「私署証書」を作成します。

  • 署名とはー自筆でサインをすることです。
  • 記名捺印とはー印刷、ゴム印などで名前を記入し、捺印をすることです。

※宣誓認証では私署証書は求められていません。

STEP
公証(ノータリゼーション)

公証役場で「公証人認証」を申請し、「私署証書」を「公文書」にします。

STEP
公証人所属法務局にて「公証人押印証明」を取得する

認証を得た公証人の所属法務局に出向き、法務局長から「公証人押印証明」を取得します。

STEP
外務省に「公印確認」又は「アポスティーユ」の申請を行う

「公印確認」と「アポスティーユ」のどちらの認証が必要かは、以下のブログ記事で詳しく説明をしていますので、こちらをご覧ください。

STEP
駐日各国大使館・領事館で「領事認証」(「公印確認」の場合のみ)

「公印確認」が必要な書類の場合には、駐日大使館・領事館での「領事認証」が必要です。。(※アポスティーユの場合は必要ありません)。

STEP
提出先に証明された書類を提出する

「ステップ2」が、今回ご紹介する公証(ノータリゼーション)になります。

MWO申請のリクルートメントアグリーメント(RA)の場合

フィリピン人を特定技能で採用する場合に必要となるMWO申請では、様々な書類を求められますが、その中の一つであるフィリピン政府公認の送出し機関と日本の受入れ機関が交わした協定書(リクルートメントアグリーメント|RA)にも、公証が必要です。

公証の種類は、「外国文認証」になります。

リクルートメントアグリーメントで求められるのは、公証のみであり、アポスティーユは求められません。

詳しくはこちらの記事をご覧ください。

3種類の公証(ノータリゼーション)

公証には、次の3種類の認証方法があります。

  • 署名認証
  • 宣誓認証
  • 謄本認証

署名認証

最も一般的な認証です。書類に署名または捺印することにより、認証を受けます。

宣誓認証

一般の署名認証と違い、宣誓認証は、公証人の面前で宣誓することが要件となっている認証方法です。

※公証人の面前で署名したことを証明する「面前署名」ではなく「宣誓認証」が必要がどうかは提出先の求めによります。宣誓が必要な書類には、その署名欄の周辺に「Oath」「Swear、Sworn」などの宣誓を表す文言が入り、宣誓の上で署名をする形になっていることが多いようです。手数料も準備物も変わってきますので、どこまでの認証が必要かが不明な場合には提出先に確認しましょう。

謄本認証

持参した書類の原本とその謄本とを対照し、符合することを確認して認証されます。署名の認証とは異なりますので、利用の際には提出先の求めに合うものかどうかを確認しましょう。

謄本認証が可能な書類は「私書証書」です。作成者の署名または記名押印(印鑑証明や印鑑登録証明書がある方の場合)のある文章が必要です。これがない書類(例えば表のみが書かれているものなど)は認証ができません。また「公文書」は公証役場での認証の対象にはなりません。

署名認証の3つの方法

公証人は、私文書の作成者が署名、署名押印又は記名押印したことを証明します。その確認方法として次の3つの方法があります。

  1. 面前認証
  2. 自認認証
  3. 代理認証

面前認証(面前署名)

作成者であると名乗る人物が、人違いでないことを確認し、公証人の面前で作成者が署名(捺印)をすることにより認証されます。

自認認証(面前自認)

作成者が、すでに署名(捺印)された私文書を持参し、その署名(捺印)は自らが行ったものであることを公証人に対して認めることにより、認証されます。

代理認証(代理自認)

作成者の代理人が、既にされている署名(捺印)を本人が行ったものであることを、公証人に対して認めることにより認証されます。

外国文認証とは

外国文認証とは、外国語で書かれた文書の認証になります。上でお伝えした、MWO申請書類である、リクルートメントアグリーメント(RA)も英語で書かれているため、外国文認証が必要です。作成者から委任状を付与されることにより代理人証も可能です。

ただし、その証書を提出する国の相手方の意向に沿って行うべきものですので、日本法上は代理認証は有効ですが、その証書の提出を求める外国の機関の中には、代理認証を認めず、署名者本人が公証人の面前で行う目撃認証(面前認証)を求めていることがあるため、注意が必要です。必ず、提出先の機関に確認をしましょう。

手数料

公証役場での認証には手数料が必要です。手数料は政府が定めた「公証人手数料」(令和3年政令第328号)という政令により定められています。

  1.  私署証書等の認証
       契約書等の私署証書の認証は1万1000円ですが、その内容を公正証書にした場合の手数料の半額が1万1000円を下回るときは、その下回る額になります(手数料令34条1項)。したがって、身元・財政保証書のように、金額の記載がないため算定不能となる書面の場合は、5500円が手数料になります。また、委任状の認証は、委任状公正証書の手数料の半額である3500円が手数料となります。
  2.    外国文の認証(外国文加算)
       認証する私署証書が外国語で記載されているときは、上記1の手数料に6000円が加算されます(手数料令34条3項)。
  3.    宣誓認証
       公証人の面前で記載内容が真実であることを宣誓した上で文書に署名・捺印し、または署名・捺印を自認したことを認証する宣誓認証の手数料は、定額で1万1000円です。対象文書が外国文であるときは、上記2の外国文加算(6000円)があります。
  4.    私署証書謄本の認証
       契約書等の謄本の認証手数料は、定額で5000円です(手数料令34条4項)。
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12 手数料 | 日本公証人連合会 公証事務に関する疑問にお答えいたします。日本公証人連合会。
出典:日本公証人連合会ホームページ

まとめ

最後までお読みいただきありがとうございました。

一口に文書の「認証」といっても、公証役場の認証のみ必要な場合、アポスティーユのみ必要な場合、公証役場の認証から駐日大使館・領事館の認証まで必要な場合、など様々なパターンがあります。

まずは、書類が「公文書」なのか「私文書」なのかによって、認証を申請する場所が異なってきます。書類が「私文書」である場合は公証役場に、「公文書」の場合は外務省に認証の申請を行います。公証役場の認証には手数料が発生しますが、外務省では手数料は発生しません。

次に、提出先の機関が、どのような「認証」を求めているのかを、正確に把握する必要があります。MWO申請で使用するリクルートメントアグリーメント(RA)では、外務省のアポスティーユは要らないとお伝えしました。このように、提出先の機関によっては、外務省の認証を必要としない機関もあります。

また、逆に「私文書」にアポスティーユが必要な場合は、アポスティーユと言われたからといって、直接に外務省に「私文書」を持ち込んで認証を申請することはできません。「公印確認」や「アポスティーユ」は「公文書」のみを証明するものですので、公証役場で私文書を公文書にしてから外務省に申請しなければならないからです。

ただし、一部の都道府県の公証役場では、「公印確認」や「アポスティーユ」までを一括で行ってくれます。このサービスをワンストップサービスといいます。

公証役場で「公証人の認証」、「法務局の公証人押印証明」及び
外務省の「公印確認」または「アポスティーユ」
を一度に取得できる都道府県
  • 北海道(札幌法務局管区内)
  • 宮城県
  • 東京都
  • 神奈川県
  • 静岡県
  • 愛知県
  • 大阪府
  • 福岡県

行政書士は、このような認証を代理で取得することができます。もし、外国の機関から、何らかの文書に日本の公的機関の認証を求められているけれど、どこにどのような認証を取ればよいのか分からない、もしくは忙しくて平日の昼間に役所に行く暇がない、外国から郵送申請できないのでアポスティーユが取れない、などでお困りの際には、どうぞ行政書士長尾真由子事務所にご相談ください。相談料は無料です。

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この記事を書いた人

大阪府箕面市の行政書士です。
・趣味:美術鑑賞、散歩
・スポーツ:卓球、テニス
・座右の銘:失敗は成功のもと
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