特定技能外国人を雇用したいとき受入れ機関がまず確認すべきこと

特定技能の基準をチェック
目次

受入れ可能な産業分野かどうか

特定技能制度は、その名の通り特定の分野の産業における人手不足の解消を目指す制度です。この制度を利用するにあたっては、どのような分野の受入れ機関でも外国人を雇用できるわけではありません。まずは受入れ機関が特定技能分野の業務を行っているかどうかを確認して下さい。受入れ機関(所属機関ともいう)とは特定技能外国人を雇用する個人事業主や株式会社、合同会社、社団法人、医療法人などの法人のことです。以下が、特定技能の対象産業分野です。現在、12分野が対象となっています。また、以下の分野に当てはまったとしても、その中でも特定技能制度の対象となる業務や施設と対象とならない業務や施設がありますので、各分野の上乗せ基準を告示などで確認することも合わせて行って下さい。

関係法令 | 出入国在留管理庁 (moj.go.jp)(参照2024-9-19)

  • 介護
  • ビルクリーニング
  • 素形材産業・産業機械・電気電子情報関連製造業
  • 建設業
  • 造船・舶用工業
  • 自動車整備業
  • 航空業
  • 宿泊業
  • 農業
  • 漁業
  • 飲食料品製造業
  • 外食業

出入国在留管理庁 「出入国管理及び難民認定法別表第1の2の表の特定技能の項の下欄に規定する産業上の分 野等を定める省令」

930003891.pdf (moj.go.jp) ←こちらは消去されたようです。追加の分野が記載されたものを下記に記しておきます。

(参照2024-9-19)

https://www.moj.go.jp/isa/content/001425415.pdf(参照2024-10-14)

また、2024年3月29日の閣議決定で追加された分野が、以下の4分野になります。

  • 自動車運送業
  • 鉄道
  • 林業
  • 木材産業

追加分野も含めた省令がこちらです↓

https://www.moj.go.jp/isa/content/001425415.pdf(参照2024-10-14)

出入国在留管理庁の政策課に問い合わせたところ(2024/9/19)、上記4分野の施行は2024年9月下旬からになるそうです。この記事を書いているのが9月中旬ですので、省令にも上記4分野は追加されていません。つまり、実際に受入れが可能になるのは、9月下旬からということです。

ただし、今のところ試験の実施や協議会の運用は未定ですので、実際に特定技能外国人の受け入れが可能になるのは、まだ暫く先になるだろうということでした。まずは、技能実習から同じ分野で移行できる外国人を受け入れていくことから始まる形になると予想されます。ただ、切望されている自動車運送業分野は技能実習の移行対象職種に入っていませんので、残念ですがこのルートでの採用も期待できそうにありません。制度が整うのを待つ他はなさそうです。

外国人を受け入れるための基準を満たしているかどうか

次に、どういった基準が受入れ機関に求められるのかを見ていきます。

① 外国人と結ぶ雇用契約が適切であること(例:報酬額が日本人と同等以上)

② 機関自体が適切であること(例:5年以内に出入国・労働法令違反がない)

③ 外国人を支援する体制があること(例:外国人が理解できる言語で支援できる)

④ 外国人を支援する計画が適切であるこ(例:生活オリエンテーション等を含む)

それでは、①から④の基準の具体的な内容を確認していきましょう。

①外国人と結ぶ雇用契約が適切であること

特定技能外国人を雇用するためには、当然のことながら適切な雇用契約を結ぶ必要があります。では適切な雇用契約とは具体的にどのような契約をいうのでしょうか?以下がその内容になります。

外国人と結ぶ雇用契約が適切であること

① 分野省令で定める技能を要する業務に従事させるものであること

→「受入れ可能な産業分野かどうか」で記載した内容になります。

② 所定労働時間が、同じ受入れ機関に雇用される通常の労働者の所定労働時間と同等であること
報酬額が日本人が従事する場合の額と同等以上であること
④ 外国人であることを理由として、報酬の決定、教育訓練の実施、福利厚生施設の利用その他の待遇について、差別的な取扱いをしていないこと
⑤ 一時帰国を希望した場合、休暇を取得させるものとしていること
⑥ 労働者派遣の対象とする場合は、派遣先や派遣期間が定められていること(農業と漁業のみ派遣が可能、他分野は派遣不可
⑦ 外国人が帰国旅費を負担できないときは、受入れ機関が負担するとともに契約終了後の出国が円滑になされるよう必要な措置を講ずることとしていること
⑧ 受入れ機関が外国人の健康の状況その他の生活の状況を把握するために必要な措置を講ずることとしていること
分野に特有の基準に適合すること(※分野所管省庁の定める告示で規定)

関係法令 | 出入国在留管理庁 (moj.go.jp)



以上の内容は、ビザ(在留資格)申請の書類作成の際に確認、記載が求められます。

②機関自体が適切であること

雇用契約だけでなく、受入れ機関が法令違反をしてこなかったかどうかが問われます。具体的にはビザ(在留資格)申請の「所属機関(法人)に関する必要書類」の中で、過去の保険料や税金の納付を証明する書類の提出が求められています。

機関自体が適切であること

労働、社会保険及び租税に関する法令を遵守していること
1年以内に特定技能外国人と同種の業務に従事する労働者を非自発的に離職させていないこと
1年以内に受入れ機関の責めに帰すべき事由により行方不明者を発生させていないこと
欠格事由(5年以内に出入国・労働法令違反がないこと等)に該当しないこと
⑤ 特定技能外国人の活動内容に係る文書を作成し、雇用契約終了日から1年以上備えて置くこと
⑥ 外国人等が保証金の徴収等をされていることを受入れ機関が認識して雇用契約を締結していないこと
⑦ 受入れ機関が違約金を定める契約等を締結していないこと
支援に要する費用を、直接又は間接に外国人に負担させないこと
⑨ 労働者派遣の場合は、派遣元が当該分野に係る業務を行っている者などで、適当と認められる者であるほか、派遣先が①~④の基準に適合すること(農業と漁業のみ派遣が可能)
⑩ 労災保険関係の成立の届出等の措置を講じていること

⑪ 雇用契約を継続して履行する体制が適切に整備されていること
報酬を預貯金口座への振込等により支払うこと
分野に特有の基準に適合すること(※分野所管省庁の定める告示で規定)

関係法令 | 出入国在留管理庁 (moj.go.jp)

③外国人を支援する体制があること

受入れ機関は特定技能2号については、支援義務がありません。特定技能1号で外国人雇用をする場合にみ支援体制と支援計画が必要となります。

また、自ら支援体制を整えることが困難な受入れ機関は、登録支援機関に全てを委託することができます。登録支援機関とは特定技能外国人が日本での生活や仕事を円滑に行えるように支援する機関です。支援は有料で、登録支援機関によりサービスに含まれる内容や料金は異なります。また、一度に受け入れる人数によって割引などを設定しているところもあります。費用相場としては、外国人一人につき月に1万~3万を委託支援料としている登録支援機関が多いようです。また、初期費用やサービスに別途料金がかかる機関もありますので、契約の際にはサービスの内容と金額を確認しておいた方が良いでしょう。

以下のURLに登録支援機関の一覧が掲載されています。

登録支援機関(Registered Support Organization) | 出入国在留管理庁 (moj.go.jp)

初めて外国人を受け入れる機関で、将来的に特定技能外国人雇用を続けていくかどうか分からない場合なども、まずは登録支援機関に委託してみることをお勧めします。

外国人を支援する体制があること

支援責任者と支援担当者は以下のいずれかに該当するように選任すること
ア 過去2年間に中長期在留者(就労資格のみ。)の受入れ又は管理を適正に行った実績があり、かつ、役職員の中から、支援責任者及び支援担当者(事業所ごとに1名以上。以下同じ。)を選任していること(支援責任者と支援担当者は兼任可。以下同じ)
イ 役職員で過去2年間に中長期在留者(就労資格のみ。)の生活相談等に従事した経験を有するもの中から、支援責任者及び支援担当者を選任していること
ウ ア又はイと同程度に支援業務を適正に実施することができる者で、役職員の中から、支援責任者及び支援担当者を選任していること
外国人が十分理解できる言語で支援を実施することができる体制を有していること
③ 支援状況に係る文書を作成し、雇用契約終了日から1年以上備えて置くこと
④ 支援責任者及び支援担当者が、支援計画の中立な実施を行うことができ、かつ、欠格事由に該当しないこと
⑤ 5年以内に支援計画に基づく支援を怠ったことがないこと
支援責任者又は支援担当者が、外国人及びその監督をする立場にある者と定期的な面談を実施することができる体制を有していること
分野に特有の基準に適合すること(※分野所管省庁の定める告示で規定)

関係法令 | 出入国在留管理庁 (moj.go.jp)

④外国人を支援する計画が適切であるこ

支援計画の内容は以下の10項目になります。「③外国人を支援する体制があること」と関連した基準になりますので、受入れ機関は支援計画を実施するにあたって、計画の全部又は一部を登録支援機関に委託することができます。

外国人を支援する計画が適切であること(支援計画の内容)

①事前ガイダンス

②出入国する際の送迎

③住居確保・生活に必要な契約支援

④生活オリエンテーション

⑤公的手続等への同行

⑥日本語学習の機会の提供

⑧日本人との交流促進

⑨転職支援(人員整理等の場合)

⑩定期的な面談・行政機関への通報

こちらについては、また別の記事で解説したいと思います。

受入れ機関の義務

以上が特定技能外国人を雇用しようとする際に確認して欲しい項目になります。確かに、かなり細かい基準が設けられていますので、いちいちチェックしていられないよと思われるかもしれませんが、結局ビザ(在留資格)申請の時に書類に落とし込まないといけない項目ですので、いざ書類作成を進めてから、「特定技能外国人の受入れ機関として基準を満たしていないことが分かった」ということにならないよう、最初に確認しておくことをお勧めします。

また、受入れ時に基準を満たしているだけでなく、受入れ後も受入れ機関には以下の義務が課せられます。

① 外国人と結んだ雇用契約を確実に履行すること(例:報酬を適切に支払う)

② 外国人への支援を適切に実施すること→ 支援については、登録支援機関に委託も可。

全部を委託すれば外国人を支援する体制があるとみなされます。

出入国在留管理庁への各種届出をすること

①~③を怠ると外国人を受け入れられなくなるほか、出入国在留管理庁から指導、改善命令等を受けることがありますので注意が必要です。

まとめ

最後までお読みいただきありがとうございました。

特定技能外国人を雇用するのは、なかなかハードルが高いなと思われたのではないでしょうか?

日本では、今まで人手不足対策として外国人雇用を進めてこなかったという背景があります。ヨーロッパやアメリカ等の先進国が移民政策を進めたことにより、単純労働の低賃金化などの問題が生じたため、日本政府としては慎重に外国人雇用に係る政策を進めている状況です。それ故に、特定技能制度を開始するにあたっては上記のような様々な条件が付されているのです。

この記事では、受入れ機関がクリアするべき基準について書いてきました。次は、外国人が特定技能で雇用されるための基準について書いていきたいと思います。これは外国人本人だけでなく受入れ機関の方でも、不法就労助長罪(罰則ー3年以下の懲役・300万以下の罰金)などに問われないために把握しておくべき基準ですので、合わせて読んでいただければと思います。

今回の記事は、

名古屋出入国在留管理局
就労審査第二部門

「特定技能外国人の受入れ継続に関する注意点について」

jsite.mhlw.go.jp/gifu-roudoukyoku/content/contents/001690562.pdf

を基に、補足説明をつけて作成しました。

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この記事を書いた人

大阪府箕面市の行政書士です。
・趣味:美術鑑賞、散歩
・スポーツ:卓球、テニス
・座右の銘:失敗は成功のもと
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