公印確認・アポスティーユとは
現代社会において、国際的な取引や手続きがますます増加しています。このような背景の中で、文書の信頼性と正当性を確保するための手段として、公印認証とアポスティーユ(Apostille)が重要な役割を果たしています。この記事では、「公印認証とアポスティーユの違い」と「証明できる書類」についてお伝えしたいと思います。
公印確認とアポスティーユの違い
公印確認とアポスティーユは、どちらも日本の官公署や自治体が発行する公文書に押印された公印の印影を認証するものです。これは、公文書の作成の真正性(権限のある公務員ないし公的機関が発行した文書)であり、その文書の内容の真正性を担保するものではありません。どちらを選択すべきかは、書類の提出先国がハーグ条約に加入しているかどうかによります。
基本的に、書類の提出国がハーグ条約に加入している場合は、アポスティーユを選択しますが、例外もあります。アポスティーユが利用できる場合には、公印確認で求められる「領事認証」を取得する必要がありません。
ただ、外国に提出する公文書全てにこれらの認証が必要となるわけではありません。外国の提出機関あるいは駐日大使館・(総)領事館が求めている場合のみ申請をします。
公印確認とは
日本にある外国の大使館・(総)領事館の領事による認証(=領事認証)を取得するために事前に必要となる外務省の証明のことです。外務省では公文書上に押印されている公印についてその公文書上に証明がなされます。外務省で公印確認を受けた後は必ず日本にある外国の大使館・(総)領事館の領事認証を取得しなければなりません。
注1 外務省における公印確認は、その後の駐日外国大使館・(総)領事館での領事認証が必要となる証明ですので、必ず駐日外国領事による認証を受けてから提出国関係機関へ提出します。
注2 提出先機関の意向で日本外務省の公印確認証明ではなく、現地にある日本大使館や総領事館の証明が求められている場合があります。外務省で公印確認証明を受けた書類は、現地日本大使館や総領事館で重ねて証明することはできません。
アポスティーユとは
「外国公文書の認証を不要とする条約(略称:認証不要条約)」(1961年10月5日のハーグ条約)に基づく付箋(=アポスティーユ)による外務省の証明のことです。提出先国はハーグ条約締約国のみです。アポスティーユを取得すると、日本にある大使館・(総)領事館の領事認証がある文書と同等のものとして、提出先国で使用することができます。つまり、公印確認よりも簡便な手続きで文書の証明を得ることができます。
注1 提出先国がハーグ条約(認証不要条約)の締約国であっても、領事認証が必要となり、公印確認を求められる場合があります。事前に提出先または日本にある提出先国の大使館・(総)領事館に確認しましょう。
注2 ハーグ条約に加入していない国へ提出する公文書の証明は全て公印確認となります。
証明できるのは公文書のみ?
公の機関が発行する公文書に対して、それ以外の機関や個人が作成する書類を私文書と言います。
この私文書にも、公印確認やアポスティーユを取得することは可能ですが、公文書の証明よりも多くの手続きが必要となります。
公文書と私文書の違い
公文書は、政府機関や公的機関が作成し、公式な業務の一環として発行される文書です。例えば、登記簿謄本や戸籍謄本などが公文書に含まれます。これらの文書は法的効力を持ち、公的な手続きや証拠として使用されます。
一方、私文書は、個人や企業が作成する文書で、私的な用途に使用されます。例えば、遺言状や契約書などが該当します。私文書も法的効力を持つ場合がありますが、公文書と比べて効力が限定されることが多いです。
公文書と私文書の主な違いは、作成主体と法的効力にあります。公文書は公的な機関によって作成され、法的に広範な効力を持つのに対し、私文書は個人や企業によって作成され、効力が限定的です。
公文書と私文書の認証手続きの違い
公文書の場合は、直接に外務省で証明を取得することができます。
私文書の場合は、外務省では直接証明ができません。公証役場で公証人の認証を受けた後、その公証人の所属する(地方)法務局長による公証人押印証明を取得することで、公証人が認証した公文書として外務省の証明を取得することができます。つまり、私文書を公文書に変える手続きを経てから、外務省で証明してもらう流れとなります。
証明できる書類
証明できる書類は以下の1~3の全ての要件を満たす公文書になります。
- 発行日付が記載されていること(発行日より3か月以内のもの)
- 発行機関(発行者名)が記載されていること
- 個人印や署名ではなく、公印が押されていること
証明できる発行機関の例
証明できる書類について、申請手続きガイド 1 証明できる書類|外務省 に表形式で掲載されています。大変分かりやすいものですので、こちらを抜粋して説明したいと思います。
下の表で×印が付いている場合でも私文書の認証手続きを行えば証明の対象となります。ただし、発行機関が公的機関であってもコピーには証明してもらえませんので注意して下さい。
【表1 証明できる発行機関の例(官公署など)】
注1 公証役場で公証人による私文書の認証を受けた公証人認証書は、その公証人の所属する(地方)法務局長による公証人押印証明が必要です。またアポスティーユ証明の場合(ワンストップサービス除く)、証明に記載する発行者を公証人または法務局長のいずれかを選択する必要があります。
【表2 証明できる発行機関の例(教育機関)】
(注)在職証明、学校案内、行事予定表などは対象外です。
- 注2 まだ法人に移行されていない国公立大学が発行した学位記などはアポスティーユの対象です。「POPITA」や「証明書学外発行サービス」のようにコンビニエンスストアにおけるマルチコピー機等で発行される大学等の証明は、現在のところ受け付けられていません。
- 注3 公印確認又はアポスティーユの対象とならないこれらの書類については、お近くの公証人役場にご相談くださいとのことです。
【表3 証明できる発行機関の例(病院)】
- 出生、死亡など市区町村役場、法務局で発行可能な証明書は対象外です。
- 赤十字病院については、健康診断書のみが対象です。個別の疾病の診断書などは対象外です。
まとめ
最後までお読みいただきありがとうございました。以下に今回の記事をまとめました。
公印確認とアポスティーユの違い
公印確認とアポスティーユのどちらを取得すれば良いのかは、文書の提出先国がハーグ条約に加入しているかどうか鍵となります。
ハーグ条約に加入している国に提出する場合
ハーグ条約に加入している国であれば、より簡便な手続きで文書の正当性を証明できるアポスティーユでの証明が可能です。ただし、ハーグ条約の加入国であっても領事認証を求められたために、公印認証が必要になることがありますので、提出先への確認が大切です。
ハーグ条約に加入していない国に提出する場合
ハーグ条約に加入していない国の機関から、公文書に正当性の証明を求められた場合には、領事認証が必要ですので、公印認証を行います。
公印確認又はアポスティーユで証明できる書類
どの機関の発行する書類なら証明してもらえるのか
以下の機関の書類は公文書として認められますが、どの書類でも証明を得られるわけではありません。
- 国や地方自治体などの官公署
- 教育機関
- 病院
証明できる対象書類に入っていない場合は?
「私文書の認証手続き」を行えば証明の対象となります。公証役場で私文書の認証を受けた後、その公証人の所属する(地方)法務局長による公証人押印証明を取得することで、証明対象の書類に変更することができます。
今回のブログ記事は以上となります。申請方法や流れについては、また別のブログ記事でお伝えします。