現場仕事もできる大卒の外国人を雇用するには~特定活動46号の事例と注意点~

目次

特定活動46号ビザとは

まず、「特定活動」のビザとは何かということですが、他の在留資格にはあてはまらないけれど、日本で中長期で滞在して、何らかの活動を行う必要がある外国人に特別に与えられる在留資格です。


具体例としては、外交官等の家事使用人、ワーキング・ホリデー、経済連携協定に基づく外国人看護師・介護福祉士候補者などがあり、法務省告示により活動が指定されています。

この法務省告示が、令和元年6月17日に改訂され、46号が追加されました。46号は、日本にいる留学生に日本の企業に就職をしてもらうことを目的として制定されました。

前回のブログ記事では、「特定活動46号」の告示で定められている要件について、詳しく解説しています。

この中で、実際にこの在留資格で日本に滞在している外国人の数は、1000人もいかないとお話ししましたが、とはいえこの在留資格で日本で活躍している外国人もおられます。その具体的な事例を、出入国在留管理庁が公表している「留学生の就職支援に係る「特定活動」(本邦大学等卒業者)についてのガイドライン」から抜粋して見ていきたいと思います。

「特定活動46号」の活用事例

「特定活動46号」の要件

具体的な事例を見る前に、46号の要件をさらっとおさらいしていきましょう。というのも、事例には認められるケースと認められないケースが載っています。それだけを見ても、なぜこちらは認められて、あちらは認められないのかが分からないからです。

「特定活動46号」のビザが認められるための要件は、大きく分けて次の4つがあります。

  1. 学歴要件
  2. 報酬要件
  3. 日本語要件
  4. 業務内容の要件
1.学歴要件

日本の大学、大学院、短大、専門学校(高度専門士必要)を卒業した外国人

2.報酬要件

同じ業務に就く日本人と同等、若しくはそれ以上の報酬を外国人が得ること

3.日本語要件
  • 日本語能力試験N1又はBJTビジネス日本語能力テストで480点以上
  • 大学又は大学院において「日本語」を専攻して大学を卒業したこと(「日本語」を専攻した大学が外国の大学でもかまいませんが、別途学歴要件にある日本の学校を卒業していることは必要です。)

外国人が上記どちらかの要件を満たしていること。

4.業務内容の要件

外国人は次の二つの条件を満たす業務に就かなければなりません。

  • 大学等において修得した学修の成果等を活用できる業務
  • 高い日本語能力を活かせる他者との双方向のコミュニケーションを要する業務

※一般的なサービス業務や製造業務等が主たる活動となるものは認められません。

※日本語を使用する機会が、単に作業支持を聞く時のみであったり、自分の作業をする時だけでは認められません。

※業務独占資格が必要な業務と風俗関係業務は認められません。

「特定活動46号」の具体的な事例

上記4つの要件の中では、特に4の要件が重要となってきます。それでは、仕事別に具体的な事例を見ていきましょう。

飲食店での事例

飲食店に採用され、店舗管理業務や通訳を兼ねた接客業務を行うもの(日本人に対する接客を行うことも可能です。)。
※ 厨房での皿洗いや清掃にのみ従事することは認められません。

工場での事例

工場のラインにおいて、日本人従業員から受けた作業指示を技能実習生や他の外国人従業員に対し外国語で伝達・指導しつつ、自らもラインに入って業務を行うもの。
※ ラインで指示された作業にのみ従事することは認められません。

小売店での事例

小売店において、仕入れ、商品企画や、通訳を兼ねた接客販売業務を行うもの(日本人に対する接客販売業務を行うことも可能です。)。
※ 商品の陳列や店舗の清掃にのみ従事することは認められません。

ホテルや旅館での事例

ホテルや旅館において、翻訳業務を兼ねた外国語によるホームページの開設、更新作業等の広報業務を行うものや、外国人客への通訳(案内)を兼ねたベルスタッフやドアマンとして接客を行うもの(日本人に対する接客を行うことも可能です。)。
※ 客室の清掃にのみ従事することは認められません。

タクシー会社での事例

タクシー会社において、観光客(集客)のための企画・立案や自ら通訳を兼ねた観光案内を行うタクシードライバーとして活動するもの(通常のタクシードライバーとして乗務することも可能です。)。
※ 車両の整備や清掃のみに従事することは認められません。
※ タクシーの運転をするためには、別途第二種免許(道路交通法第86条第1項)を取得する必要がありますが、第二種免許は、個人の特定の市場への参入を規制することを目的とするものではないことから、いわゆる業務独占資格には該当しません。

介護施設での事例

介護施設において、外国人従業員や技能実習生への指導を行いながら、日本語を用いて介護業務に従事するもの。
※ 施設内の清掃や衣服の洗濯のみに従事することは認められません。

工場での事例

食品製造会社において、他の従業員との間で日本語を用いたコミュニケーションを取りながら商品の企画・開発を行いつつ、自らも商品製造ラインに入って作業を行うもの。
※ 単に商品製造ラインに入り、日本語による作業指示を受け、指示された作業にのみ従事することは認められません。

事例の考察

事例をご覧になってどう思われたでしょうか?ご自分の会社にあてはまる事例、もしくはあてはまりそうな事例はありましたか?

個人的な見解を申し上げますと、この在留資格で外国人が雇われてくれれば、会社にはメリットが大きいなと感じました。上記の仕事はどれも「特定技能」の分野の仕事でもありますが、費用面から考えても、登録支援機関や送出し機関の費用負担がない分、企業には有利です。また、「特定技能」よりも優秀な人材を採用できるだろうことも予測できます。

ただし、あくまで人材が集まればの話です。日本の大学を出た、高い日本語能力のある優秀な外国人が、果たして事例にあるような仕事をしてくれるでしょうか。また、「技術・人文知識・国際業務」ビザではなく「特定活動46号」のビザに納得してくれるでしょうか。

私としては、日本語要件の緩和があれば、もっとこの制度を活用する外国人留学生が増えるのではないかと考えています。実際、学歴要件については、最近の令和6年2月に改訂され、今まで認められていなかった短大卒や専門学校卒の留学生もこの制度の対象となりました。

また、「留学生の就職支援に係る「特定活動」(本邦大学等卒業者)についてのガイドライン」には、「日本語能力の判断方法について、当面は上記運用としますが、「日本語教育の参照枠」の活用に向けて検討を進めてまいります。」との文言もあります。期待したいところです。

「特定活動46号」の注意点

前回のブログ記事ではお伝えしきれなかった、「特定活動46号」に関する注意点をご紹介したいと思います。

在留期間

在留期間は、5年、3年、1年、6月又は3月のいずれかの期間が決定されますが、原則として、「留学」の在留資格からの変更許可時及び初回の在留期間更新許可時に決定される在留期間は、「1年」となります。

家族の滞在

「特定活動46号」ビザで滞在する外国人の配偶者と子供は、「特定活動47号」(本邦大学等卒業者の配偶者等)の在留資格を取得することにより、日本で一緒に暮らすことができます。

転職の場合

「特定活動46号」ビザを持つ外国人が転職をしたい場合は、「在留資格変更許可申請」が必要です。これは「技術・人文知識・国際業務」ビザとは異なるところですが、「特定活動46号」ビザの場合、パスポートに「指定書」が貼られます。この指定書には、活動先となる機関(所属機関)を指定することになっていますので、活動先を変更する場合(転職の場合)は在留資格変更許可申請が必要です。

ただし、指定書に記載される機関名は、所属機関名を記載するようになっていますので、同一法人(法人番号が同一の機関)内の異動や配置換えであれば、在留資格変更手続は必要ありません。

下記は「指定書」の見本(左)と内容(右)となります。

出入国管理及び難民認定法第七条第一項第二号の規定に基づき同法別表第一の五の表の下欄に掲げる活動を定める件(平成二年法務省告示第百三十一号)の別表第十一に掲げる要件のいずれにも該当する者が、下記の機関との契約に基づいて、当該機関の常勤の職員として行う当該機関の業務に従事する活動(日本語を用いた円滑な意思疎通を要する業務に従事するものを含み、風俗営業活動(風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律(昭和二十三年法律第百二十二号)第二条第一項に規定する風俗営業、同条第六項に規定する店舗型性風俗特殊営業若しくは同条第十一項に規定する特定遊興飲食店営業が営まれている営業所において行うもの又は同条第七項に規定する無店舗型性風俗特殊営業、同条第八項に規定する映像送信型性風俗特殊営業、同条第九項に規定する店舗型電話異性紹介営業若しくは同条第十項に規定する無店舗型電話異性紹介営業に従事するものをいう。)及び法律上資格を有する者が行うこととされている業務に従事するものを除く。)
         記
機関名:
本店所在地:

勤務形態

  1. 常勤の職員であること
  2. 所属機関の直接雇用であること
1.常勤の職員であること

常勤の職員とは、フルタイムの職員の事です。正社員でなくともかまいませんが、短時間のパートタイムやアルバイトは対象になりません。

2.派遣でないこと

所属機関の直接雇用のみが認められ、派遣社員として派遣先において就労することはできません。

変更・更新申請

「特定活動46号」の在留資格は、日本の大学などを卒業した外国人、つまり留学生が主な取得者となる資格です。ですので、「留学」→「特定活動46号」、「特定活動46号」→「特定活動46号」に在留資格を変更、更新したい時には、それまでに日本にいた期間があるということです。その為、これらの申請の審査には、日本での生活態度も考慮されます。

具体的には、次の2点が主な審査ポイントになります。

  1. 素行が不良でないこと
  2. 入管法に定める届出等の義務を履行していること
1.素行が不良でないこと

抽象的な表現ですが、よくある「素行が不良」とは、留学中に学校にも行かずアルバイトばかりをしているような場合です。アルバイトは資格外活動許可の範囲(週に28時間以内)で行わなければいけませんが、一時的に数時間、この範囲外で働いてしまったからといって、すぐに不許可になるというわけではありません。ただし、審査においてマイナスポイントにはなります。

2.入管法に定める届出等の義務を履行していること

入管法第19条の7から第19条の13まで及び第19条の15には、在留カードに関する届出や申請が必要な場合について規定されています。「特定活動46号」のビザに変更・更新したい外国人が、日本に在留中、この規定を守っていたかどうかも入管審査のポイントとなります。規定内容は主に次の4つです。

  1. 在留カードの記載事項に変更があった場合の届出
  2. 在留カードの有効期限が切れそうな時の更新申請
  3. 在留カードを紛失した時の再交付申請
  4. 外国人が新在留カードを取得したり、出国や死亡した時の在留カードの返納

入管法19条については、以下のブログ記事に詳しく書いていますので、良かったらご覧ください。

まとめ

最後までお読みいただきありがとうございました。

「特定活動46号」は比較的新しくできた在留資格です。企業にとっては、優秀な人材をコストや時間をかけずに採用できるほか、通常「技術・人文知識・国際業務」ビザでは認められない現場業務や単純作業に従事してもらうこともできます。

また、外国人にとっても、「特定技能1号」では認められない家族の帯同も認められますので、魅力が無いとはいえません。とはいえ、日本語能力試験N1レベルの日本語能力を求められるなど、ハードルが高いことも事実です。

個人的には、「技術・人文知識・国際業務」と「特定技能1号」の間の在留資格ぐらいになれば良いのにな思います。その為には日本語要件を下げるなどして、外国人にとっても企業にとっても利用しやすい在留資格となって欲しいと願っています。

行政書士長尾真由子事務所
対応可能地域

大阪府 箕面市、池田市、豊中市、茨木市、吹田市、大阪市

兵庫県 川西市、尼崎市、宝塚市、西宮市

いずれも公共交通機関が利用できる地域を想定していますが、地域についてはご相談に応じます。

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この記事を書いた人

大阪府箕面市の行政書士です。
・趣味:美術鑑賞、散歩
・スポーツ:卓球、テニス
・座右の銘:失敗は成功のもと
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