特定技能制度の背景
日本の特定技能制度は、2019年4月に創設されました。この制度の新しい点は、日本の人手不足の解消を目的としているところです。その為、外国人がこの制度で働くことができる業種は、人手不足の分野に限られています。
技能実習制度(1993年創設)でも、外国人が人手不足の業種で働いていたよね?と思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、技能実習制度は外国人に労働力を期待する制度ではありません。あくまで、日本で学んだ技術を本国に持ち帰って本国の経済発展に寄与してもらうための制度であり、いわば日本の国際貢献制度なのです。その点が、人材確保を目指した特定技能制度と大きく異なっています。
特定技能の種類
特定技能制度には「特定技能1号」と「特定技能2号」の2種類があります。
- 特定技能1号: 基本的な技能と日本語能力を有する外国人労働者を対象とし、在留期間は最長5年です。家族の帯同は認められていません。
- 特定技能2号: より高度な技能を持つ外国人労働者を対象とし、在留期間の更新が可能で、家族の帯同も認められています。
特定技能1号
- 特定産業分野に属する相当程度の知識又は経験を必要とする技能を要する業務に従事する活動を行う
- 技能試験と日本語試験に合格する必要あり(技能実習2号を良好に修了した場合は免除)
- 所属機関または登録支援機関による支援の対象
- 原則、家族帯同は不可
- 在留できる期間は5年まで
- 付与される在留期間は法務大臣が個々に指定する期間(1年を超えない範囲)
特定技能2号
- 特定産業分野に属する熟練した技能を要する業務に従事する活動を行う
- 特定技能1号より高度な技能試験に合格する必要があるほか、一定の実務経験が求められる
- 所属機関または登録支援機関による支援の対象外
- 配偶者と子の帯同可能(「家族滞在」の在留資格を得る必要あり)
- 在留期間の更新を受ければ上限なく滞在可能
- 付与される在留期間は3年、1年又は6月
ただし、「介護」分野にだけは特定技能2号の制度はありません。2017年に運用が開始された、「介護」という在留資格があり、この資格は介護福祉士の資格を取得することが要件となっているハードルの高い在留資格ですので、こちらが特定技能1号(介護分野)の上位資格として位置付けられたことが理由です。
対象となる業種
- 介護
- ビルクリーニング
- 素形材産業・産業機械・電気電子情報関連製造業
- 建設業
- 造船・舶用工業
- 自動車整備業
- 航空業
- 宿泊業
- 農業
- 漁業
- 飲食料品製造業
- 外食業
最新の動向
2024年3月29日の閣議決定で、特定技能の対象分野が拡大されました。追加されたのは以下の4分野です。
- 自動車運送業
- 鉄道
- 林業
- 木材産業
また、特定技能「介護分野」においては、厚生労働省は2024年3月22日の有識者検討会で、特定技能外国人材が訪問介護サービスに従事することを解禁する方針を固めました。早ければ2025年度にも実施される予定です。
まとめ
最後までお読みいただきありがとうございました。
この記事で書いたことを箇条書きでまとめてみました。
- 特定技能制度は人材不足の解消のために創設された制度
- 特定技能は1号と2号の2種類
- 特定技能の従来の対象分野は、人材不足の12分野
- 2024年3月からは4分野が追加
- 介護分野では訪問介護サービス解禁へ
特定技能制度が開始されたことで、外国人の方を雇いやすくなりましたし、外国人の方も仕事を見つけやすくなったと思います。
ただし、政府はかなり慎重にこの制度を運用していますので、どんな会社でも外国人を雇えるわけではありませんし、外国人なら誰でも特定技能の在留資格を得る事ができるわけではありません。
特定技能の制度を利用するには、雇用側には多くの要件をクリアしていく必要がありますし、外国人の方も技能実習で経験を積むか、テストに合格するなどの要件が課せられています。
次回は、どのような要件があるのかを記事にしていきたいと思います。