「技術・人文知識・国際業務」で従事できる仕事
「技術・人文知識・国際業務」で従事できる仕事は限定されています
3つ前のブログ記事では、「技術・人文知識・国際業務で従事できる仕事」について解説をしました。その中で、この在留資格の対象となる仕事は、いわゆるホワイトカラーの仕事に限定されており、そのような仕事で雇用できる外国人とはどういった人たちなのかを詳述しました。
「技術・人文知識・国際業務」で活動できる分野(仕事)
「技術・人文知識・国際業務」では、名前にもある通り、技術、人文知識、国際業務の3分野での活動(仕事)が認められています。「技術」はいわゆる理系の仕事です。「人文知識・国際業務」はどちらも文系の仕事です。国際業務は、通訳や翻訳、デザイナーなど、外国人であることを活かした仕事になります。
具体的な「技術・人文知識・国際業務」で従事できる仕事
技術(理学、工学その他の自然科学の分野に属する)業務
「理学,工学その他の自然科学の分野」には、理学、工学のほかに、農学、医学、歯学及び薬学等も含まれます。具体的な仕事としては、技術開発、設計、システムエンジニア、医師、歯科医、薬剤師などが該当します。
人文知識(法律学、経済学、社会学その他の人文科学の分野に属する)業務
「法律学,経済学,社会学その他の人文科学の分野」には、法律学,経済学,社会学のほかに、文学、哲学、教育学、心理学、史学、政治学、商学、経営学等が含まれます。具体的な仕事としては、販売・営業、海外業務、貿易業務、広報・宣伝、教育、会計業務などが該当します。
国際(外国の文化に基盤を有する思考若しくは感受性を必要とする)業務
「外国の文化に基盤を有する思考若しくは感受性を必要とする業務」とは、単に外国人であるだけでなく、日本国内の文化の中では育てられないような思考または、感受性に基づく一定水準以上の専門能力をもって、その能力を要する業務に従事する者であることが必要です。具体的には、通訳・翻訳、デザイナー(服飾、建築)、海外取引業務、商品開発などの仕事が該当します。
「技術・人文知識・国際業務」の許可基準
入管法「別表第一の二の表の下欄」の規定
平成20年3月に、出入国在留管理庁より、「技術・人文知識・国際業務の在留資格の明確化等について」において、「出入国管理及び難民認定法(入管法)」の別表第一の二の表の下欄」↓に該当する活動の内容について、申請者(外国人)が許可・不許可を申請前にある程度判断できるよう、より詳しい要件が公表されました。
本邦において行うことができる活動
技術・人文知識・国際業務
本邦の公私の機関との契約に基づいて行う理学,工学その他の自然科学の分野若しくは法律学,経済学,社会学その他の人文科学の分野に属する技術若しくは知識を要する業務又は外国の文化に基盤を有する思考若しくは感受性を必要とする業務に従事する活動(一の表の教授の項,芸術の項及び報道の項の下欄に掲げる活動並びにこの表の経営・管理の項から教育の項まで,企業内転勤の項及び興行の項の下欄に掲げる活動を除く。)
3つの要件
- 行おうとする活動が申請に関わる入管法別表に掲げる在留資格に該当すること
- 法務省令で定める上陸許可基準に適合していること
- その他
1.行おうとする活動が申請に関わる入管法別表に掲げる在留資格に該当すること
つまり、上の「出入国管理及び難民認定法(入管法)」の別表第一の二の表の下欄」に当てはまる業務でないと不許可になるということです。上記の「技術・人文知識・国際業務で従事できる仕事」と重なる部分もありますが、こちらの要件は、外国人が付こうとする仕事が法に合致した活動であることを求めています。
ア 自然科学の分野には、理学、工学のほか、農学、医学、歯学及び薬学等が含まれます。また、人文科学の分野には、法律学、経済学、社会学のほか、文学、哲学、教育学、心理学、史学、政治学、商学、経営学等が含まれます。いずれの場合も、前提として、学術上の素養を背景とする一定水準以上の専門的能力を必要とする活動でなければなりません。
イ 外国の文化に基盤を有する思考又は感受性を必要とする業務とは、単に外国人であるだけでなく、日本国内の文化の中では育てられないような思考又は感受性に基づく一定水準以上の専門的能力を持って、その能力を要する業務に従事するものであることが必要です。
ウ 行おうとする活動が、「技術・人文知識・国際業務」に該当するものであるか否かは、在留期間中の活動を全体として捉えて判断されます。つまり、「技術・人文知識・国際業務」に当たる活動がが活動全体から見てほんの一部にすぎない場合で、大部分が単純作業であるなどの場合は、不許可の判断がなされます。
2.法務省令で定める上陸許可基準に適合していること
(1)自然科学又は人文科学の分野に属する技術又は知識を必要とする業務に従事しようとする場合は、次のいずれかに該当することが必要です。
ア 従事しようとする業務に必要な技術又は知識に関連する科目を専攻して卒業していること
イ 10年以上の実務経験があること
(2)外国の文化に基盤を有する思考又は感受性を必要とする業務に従事しようとする場合は、次のいずれにも該当することが必要です。
ア 翻訳、通訳、語学の指導、広報、宣伝又は海外取引業務、服飾若しくは室内装飾に係るデザイン、商品開発その他これらに類似する業務に従事すること
イ 従事しようとする業務に関連する業務について3年以上の実務経験があること
従事しようとする業務と同じ業務の実務経験である必要はありませんが、関連する業務である必要があります。また、大学を卒業した者が、翻訳、通訳又は語学の指導に係る業務に従事する場合は実務経験は不要です。
(3)日本人が従事する場合に受ける報酬と同等額以上の報酬を受けること
日本人が従事する場合に受ける報酬と同等額以上の報酬を受けることが必要です。また、報酬とは、「一定の役務の給付の対価として与えられる反対給付」をいい、通勤手当、扶養手当、住宅手当等の実費弁償の性格を有するもの(課税対象となるものを除きます。)は含みません。
3.その他
「技術・人文知識・国際業務」の在留資格への変更許可申請の際には、「在留資格の変更、在留期間の更新許可のガイドライン」を踏まえて審査が行われます。
こちらは、次回に詳しくお伝えしたいと思います。
許可事例と不許可事例
許可の要件が分かったところで、次の3つのパターンに分けて、具体的な許可事例と、不許可事例を見ていきたいと思います。
- 本国の大学を卒業した者に係る事例
- 日本の大学を卒業した留学生に係る事例
- 日本の専門学校を卒業し、専門士の称号を付与された留学生に係る事例
1.本国の大学を卒業した者に係る許可事例
許可事例
- 本国において機械工学を専攻して大学を卒業し、自動車メーカーで製品開発・テスト、社員指導等の業務に従事した後、本邦のコンサルティング・人材派遣等会社との契約に基づき、月額約170万円の報酬を受けて、本邦の外資系自動車メーカーに派遣されて技術開発等に係るプロジェクトマネージャーとしての業務に従事するもの。
- 本国において会計学を専攻して大学を卒業し、本邦のコンピュータ関連・情報処理会社との契約に基づき、月額約25万円の報酬を受けて、同社の海外事業本部において本国の会社との貿易等に係る会計業務に従事するもの。
- 本国において経営学を専攻して大学を卒業し、経営コンサルタント等に従事した後、本邦のIT関連企業との契約に基づき、月額約45万円の報酬を受けて、本国のIT関連企業との業務取引等におけるコンサルタント業務に従事するもの。
2.日本の大学を卒業した留学生に係る事例
許可事例
- 工学部を卒業した者が、食品会社との雇用契約に基づき、コンサルティング業務に従事するもの。
- 経済学部を卒業した者が、ソフトフェア開発会社との契約に基づき、システムエンジニアとして稼働するもの。
- 国際関係学を専攻して本邦の大学院を修了し、本邦の航空会社との契約に基づき、月額約20万円の報酬を受けて、語学を生かして空港旅客業務及び乗り入れ外国航空会社との交渉・提携業務等の業務に従事するもの。
不許可事例
- 工学部を卒業した者から、コンピューター関連サービスを業務内容とする企業との契約に基づき、月額13万5千円の報酬を受けて、エンジニア業務に従事するとして申請があったが、申請人と同時に採用され、同種の業務に従事する新卒の日本人の報酬が月額18万円であることが判明したことから、報酬について日本人と同等額以上であると認められず不許可となったもの。
- 経営学部を卒業した者から飲食チェーンを経営する企業の本社において管理者候補として採用されたとして申請があったが、あらかじめ「技術・人文知識・国際業務」に該当する業務に従事することが確約されているものではなく、数年間に及び期間未確定の飲食店店舗における接客や調理等の実務経験を経て、選抜された者のみが最終的に「技術・人文知識・国際業務」に該当する業務へ従事することとなるようなキャリアステッププランであったことから、「技術・人文知識・国際業務」に該当する業務に従事するものとして採用された者に一律に課される実務研修とは認められず、不許可となったもの。
3.日本の専門学校を卒業し、専門士の称号を付与された留学生に係る事例
許可事例
- 美容科を卒業した者が、化粧品販売会社において、ビューティーアドバイザーとしての活動を通じた美容製品に係る商品開発、マーケティング業務に従事するもの。
- ゲームクリエーター学科において、3DCG、ゲーム研究、企画プレゼン、ゲームシナリオ、制作管理、クリエイター研究等を履修した者が、ITコンサルタント企業において、ゲームプランナーとして、海外向けゲームの発信、ゲームアプリのカスタマーサポート業務に従事するもの。
不許可事例
- 情報システム工学科を卒業した者から、本邦の料理店経営を業務内容とする企業との契約に基づき、月額25万円の報酬を受けて、コンピューターによる会社の会計管理(売上、仕入、経費等)、労務管理、顧客管理(予約の受付)に関する業務に従事するとして申請があったが、会計管理及び労務管理については、従業員が12名という会社の規模から、それを主たる活動として行うのに十分な業務量があるとは認められないこと、顧客管理の具体的な内容は電話での予約の受付及び帳簿への書き込みであり、当該業務は自然科学又は人文科学の分野に属する技術又は知識を必要とするものとは認められず、「技術・人文知識・国際業務」のいずれにも当たらないことから不許可となったもの。
- 栄養専門学校において、食品化学、衛生教育、臨床栄養学、調理実習などを履修した者が、菓子工場において、当該知識を活用して、洋菓子の製造を行うとして申請があったところ、当該業務は、反復訓練によって従事可能な業務であるとして、不許可となったもの。
まとめ
最後までお読みいただきありがとうございました。
今回のブログ記事をまとめました。
「技術・人文知識・国際業務」で従事できる仕事
- 技術業務ー技術開発、設計、システムエンジニア、医師、歯科医、薬剤師など
- 人文知識業務ー販売・営業、海外業務、貿易業務、広報・宣伝、教育、会計業務など
- 国際業務ー通訳・翻訳、デザイナー(服飾、建築)、海外取引業務、商品開発など
技術・人文知識・国際業務」の許可基準
3つの要件
- 行おうとする活動が申請に関わる入管法別表に掲げる在留資格に該当すること
- 法務省令で定める上陸許可基準に適合していること
- その他→次回の記事にします
以上のように、これまでは明確でなかった許可の要件が明らかになったことは、大変喜ばしいことです。また、許可、不許可のその他の事例は、以下の出入国管理庁のサイトに書かれていますので、ご興味のある方はご覧ください。
出入国在留管理庁
https://www.moj.go.jp/isa/applications/resources/nyukan_nyukan69.html
対応可能地域
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