上乗せ基準とは
以前に投稿した「特定技能外国人を雇用したいとき受入れ機関がまず確認すべきこと」のブログ記事では、特定技能のすべての分野に共通の基準をお伝えしました。
今回は、共通の基準に加えて、各分野ごとに異なる基準を書いていきたいと思います。この各分野ごとに異なる追加の基準を「上乗せ基準」と言い、出入国在留管理局のホームページの中で分野ごとの「上乗せ基準告知」が公開されています。これらの告知を基に、特定技能外国人を受け入れる前に守るべき基準に焦点をあてて抜粋し、理解しやすいよう読み替えてまとめてみました。
当ブログ記事では、「特定技能所属機関」を「受入れ機関」の方で記載しております。ご了承下さい。
分野別の上乗せ基準
介護分野
- 受入れ機関は特定技能外国人を派遣形態で雇用はしないこと
- 受入れ機関の事業所が介護等の業務を行っていること(※1)
- 特定技能外国人の数が日本人等の常勤の介護職員の数を超えない事(※2)
- 受入れ機関が「介護分野における特定技能協議会」の構成員であること(※3)
※1 詳しくは下記のPDFをご覧ください。
介護分野の1号特定技能外国人を受け入れる対象施設について|出入国在留管理庁
000941619.pdf (mhlw.go.jp)(出典2024-9-24)
特に気を付けたいのは、訪問介護等の「訪問系サービス」は対象外となっていることです。ただし、訪問系サービスでの雇用も25年からの解禁が予定されています。
※2 日本人等とは、「日本人」、「介護福祉士国家試験に合格したEPA 介護福祉士」、「在留資格「介護」により在留する者」、「永住者や日本人の配偶者など、身分・地位に基づく在留資格により在留する者」を指します。日本国籍のみが日本人等の条件にはならないことがポイントです。
※3 「介護分野における特定技能協議会」のホームページはこちら
ビルクリーニング分野
- 受入れ機関は特定技能外国人を派遣形態で雇用はしないこと
- 受入れ機関は「建築物における衛生的環境の確保に関する法律」(建築物衛生法)の第12条の2第1項第1号又は第8号に掲げる事業の登録を受けた営業所に特定技能外国人を受け入れること
- 「建築物衛生法」に立脚した建築物内部の「清掃」を特定技能外国人の業務とすること。ここでいう「清掃」とは人の健康を守る「衛生性」、人に快適さを与える「美観」、建築物の機能を長持ちさせる「保全性」、建築物各室の安全を確保する「安全性」の維持を目的として、建築物内の汚れやほこり等の異物を取り除くとともに、廃棄物を収集し廃棄物保管場所まで運搬する維持管理業務をいう(※1)
- 受入れ機関が「ビルクリーニング分野特定技能協議会」の構成員であること(※2)
※1 ただし、住宅は対象外です。また、運用要領別冊では、「これらの業務に従事する日本人が通常従事することとなる関連業務に付随的に従事することは差し支えない。」としています。
※2 入会は厚生労働省のWEBサイトから行うことができます。
素形材・産業機械・電気電子情報関連製造業分野
- 受入れ機関は特定技能外国人を派遣形態で雇用はしないこと
- 受入れ機関の事業所が下記の「製造業分野における受入れ可能な事業所の日本標準産業分類」のいずれかの産業を行っていること
- 2194 鋳型製造業(中子を含む)
- 225 鉄素形材製造業
- 235 非鉄金属素形材製造業
- 2422 機械刃物製造業
- 2424 作業工具製造業
- 2431 配管工事用附属品製造業(バルブ、コックを除く)
- 245 金属素形材製品製造業
- 2462 溶融めっき業(表面処理鋼材製造業を除く)
- 2464 電気めっき業(表面処理鋼材製造業を除く)
- 2465 金属熱処理業
- 2469 その他金属表面処理業(ただし、アルミニウム陽極酸化処理業に限る。)
- 248 ボルト・ナット・リベット・小ねじ・木ねじ等製造業
- 25 はん用機械器具製造業(ただし、2591消火器具・消火装置製造業を除く。)
- 26 生産用機械器具製造業
- 27 業務用機械器具製造業(ただし、274医療用機械器具・医療用品製造業、276武器製造業を除く。)
- 28 電子部品・デバイス・電子回路製造業
- 29 電気機械器具製造業(2922内燃機関電装品製造業を除く。)
- 30 情報通信機械器具製造業
- 3295 工業用模型製造業リスト
- 受入れ機関が「製造業特定技能外国人受入れ協議・連絡会」の構成員であること(※1)
※1 入会は経済産業省のWEBサイトから行うことができます。
協議・連絡会入会システム|特定技能外国人材制度(素形材・産業機械・電気電子情報関連製造業分野) (sswm.go.jp)
建設分野
- 受入れ機関は特定技能外国人を派遣形態で雇用はしないこと
- 受入れ機関は、国内人材確保の取組を行っていること
- 受入れ機関は「1号特定技能外国人に関する計画」(建設特定技能受入計画)を国土交通省に提出し、国土交通大臣の認定を受けていること(※1)
- 受入れ機関が建設業法第3条第1項の許可(いわゆる建設業許可)を受けていること
- 受入れ機関と特定技能外国人双方が「建設キャリアアップシステム」に登録していること(※2)
- 一般社団法人 建設技能人材機構(JAC)に加入していること(※3)
- 特定技能1号の在留資格で受け入れる外国人の数が、特定技能所属機関の常勤の職員(外国人技能実習生、1号特定技能外国人を除く。)の総数を超えないこと
※1 「建設特定技能受入計画」は出入国在留管理庁の申請に必要な書類となる為、在留資格認定証明書交付申請や在留資格変更許可申請を行う前に取得しておく必要があります。取得に約1~2カ月(申請状況による)かかる為、他の分野よりも特定技能外国人を雇用する前に時間がかかることを把握しておきましょう。
※2 一般社団法人 建設技能人材機構(JAC)は他の分野の協議会に当たり、建設業分野に特化したサポートを行う団体です。主に評価試験の実施、無料職業紹介事業の実施および建設分野特定技能外国人の適正な就労環境確保のための適正就労監理業務を行っています。
※3 一般社団法人 建設技能人材機構(JAC)には50以上の業界団体があります。当該受入れ機関がすでに所属している団体があれば、新たに加入する必要はありません。無い場合においても賛助会員として加入をすることができます。詳しくは以下のサイトをご覧ください。↓
造船・舶用工業分野
- 受入れ機関は特定技能外国人を派遣形態で雇用はしないこと
- 受入れ機関が「造船法第6条第1項」の事業を営む事業者(※1)、「小型船造船業法第2条第1項」の小型船造船業を営む者(※2)、その他の造船・舶用工業分野に係る事業を営む者であること
- 国土交通省が設置する「造船・舶用工業分野特定技能協議会」の構成員であること
- 受入れ機関は、登録支援機関に1号特定技能外国人支援計画の実施を委託するに当たっては、造船・舶用工業分野特定技能協議会の構成員である登録支援機関に委託すること
※1 造船法第6条第1項の事業とは、①鋼製の船舶の製造又は修繕をする事業、②鋼製の船舶以外の船舶で総トン数20トン以上又は長さ十五メートル以上のものの製造又は修繕をする事業、③軸馬力三十馬力以上の船舶用推進機関の製造をする事業、④受熱面積百五十平方メートル以上の船舶用ボイラーの製造をする事業をいいます。
※2 小型船造船業の種類は、①小型鋼船造船業、②小型鋼船製造業、③小型鋼船修繕業、④木船造船業、⑤木船製造業、⑥木船修繕業の6種類です。
自動車整備分野
- 受入れ機関は特定技能外国人を派遣形態で雇用はしないこと
- 受入れ機関は「道路運送車両法第78条第1項」に基づき地方運輸局長から認証を受けた事業場(認証工場)を有すること
- 受入れ機関が国土交通省が設置する「自動車整備分野特定技能協議会」の構成員であること
- 受入れ機関は、登録支援機関に1号特定技能外国人支援計画の実施を委託するに当たっては、条件を満たす登録支援機関に委託すること(※1)
※1 登録支援機関の条件とは①「自動車整備分野特定技能協議会」の構成員であること、②自動車整備士1級若しくは2級の資格を有する者又は自動車整備士の養成施設において5年以上の指導に係る実務の経験を有する者を置くこと
航空
- 受入れ機関は特定技能外国人を派遣形態で雇用はしないこと
- 受入れ機関は、空港管理者により空港管理規則に基づく当該空港における営業の承認等を受けた事業者若しくは航空運送事業者又は航空法に基づき国土交通大臣の認定を受けた航空機整備等に係る事業場を有する事業者若しくは当該事業者から業務の委託 を受ける事業者であること
- 受入れ機関は、国土交通省が設置する「航空分野特定技能協議会」の構成員であること
- 受入れ機関は、登録支援機関に1号特定技能外国人支援計画の実施を委託するに当たっては、「航空分野特定技能協議会」の構成員であり、協議会に必要な協力を行う登録支援機関に委託すること
宿泊分野
- 受入れ機関は特定技能外国人を派遣形態で雇用はしないこと
- 受入れ機関が旅館業法(昭和 23 年法律第 138 号)第2条第2項に規定する「旅館・ホテル営業」の許可を受けた者であること
- 受入れ機関は風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律(昭和23年法律第122号。以下「風俗営業法」という。)第2条第6項第4号に規定する「施設」に 該当しないこと
- 受入れ機関は特定技能外国人に対して風俗営業法第2条第3項に規定する「接待」を行わ せないこと
- 受入れ機関が、国土交通省が設置する「宿泊分野特定技能協議会」の構成員であること(※1)
農業分野
- 受入れ機関は特定技能外国人を直接雇用及び派遣雇用で雇用することができる
- 労働者派遣形態の場合、次の要件を満たすこと
- 受入れ機関となる労働者派遣事業者は、農業現場の実情を把握しており特定技能外国人の受入れを適正かつ確実に遂行するために必要な能力を有していること
- 外国人材の派遣先となる事業者は、労働者を一定期間以上雇用した経験がある者又は派遣先責任者講習等を受講した者を派遣先責任者とする者であること
- 受入れ機関が「農業特定技能協議会」の構成員であること(※1)
- 受入れ機関は、登録支援機関に1号特定技能外国人支援計画の実施を委託するに当たっては、協議会に対し必要な協力を行う登録支援機関に委託すること
漁業分野
- 受入れ機関は特定技能外国人を直接雇用及び派遣雇用で雇用することができる
- 労働者派遣形態(船員派遣形態を含む)の場合、受入れ機関となる労働者派遣事業者(船員派遣事業者を含む)は、地方公共団体又は漁業協同組合、漁業生産組合若しくは漁業協同組合連合会その他漁業に関連する業務を行っている者が関与するものに限る
- 受入れ機関は、「漁業特定技能協議会」の構成員であること(※1)
- 漁業分野の1号特定技能外国人を受け入れる受入れ機関が登録支援機関に支援計画の全部又は一部の実施を委託するに当たっては、漁業特定技能協議会に必要な協力を行う登録支援機関に委託すること
飲食料品製造業分野
- 受入れ機関は特定技能外国人を派遣形態で雇用はしないこと
- 受入れ機関は、農林水産省、関係業界団体、登録支援機関その他の関係者で構成される「食品産業特定技能協議会」の構成員であること(※1)
- 受入れ機関は、登録支援機関に1号特定技能外国人支援計画の実施を委託するに当たっては、協議会の構成員となっており、かつ、農林水産省及び協議会に対して必要な協力を行う登録支援機関に委託すること
- 受入れ機関は、特定技能外国人に対するキャリアアッププランのイメー ジをあらかじめ設定し、雇用契約を締結する前に書面を交付して説明すること
外食業分野
- 受入れ機関は特定技能外国人を派遣形態で雇用はしないこと
- 受入れ機関は、特定技能外国人に対して、風俗営業等の規制及び業務の 適正化等に関する法律(風俗営業法) 第2条第1項に規定する風俗営業及び同条第5項に規定する性風俗関連特殊営業 を営む営業所において就労を行わせないこと
- 受入れ機関は、特定技能外国人に対して、風俗営業法第2条第3項に規定する「接待」を行わせないこと
- 受入れ機関は、農林水産省、関係業界団体、登録支援機関その他の関係者で構成される「食品産業特定技能協議会」の構成員であること
- 受入れ機関は、登録支援機関に1号特定技能外国人支援計画の実施を委 託するに当たっては、協議会の構成員となっており、かつ、農林水産省及び協議会に対して必要な協力を行う登録支援機関に委託すること
- 受入れ機関は、特定技能外国人に対するキャリアアッププランのイメージをあらかじめ設定し、雇用契約を締結する前に書面を交付して説明すること
まとめ
最後までお読みいただきありがとうございました。
特定技能では、全分野共通の基準にプラスして、分野別の「上乗せ基準」が設定されています。特定技能で外国人を受け入れたいという事業者の方は、必ずご自分の事業所の分野に関する「上乗せ基準」も合わせて確認するようにしましょう。