「外国公文書の認証を不要とする条約」(ハーグ条約)を覗いてみた

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「外国公文書の認証を不要とする条約」(ハーグ条約)が成立した経緯

ここまで4回に渡って、「公印確認」と「アポスティーユ」についてのブログ記事を作成してきました。その中で、ハーグ条約締約国については、「公印確認」の後に「領事認証」の必要のない、「アポスティーユ」のみで、提出先に文書を送ることができることをお話したと思います。

それでは、「外国公文書の認証を不要とする条約」とはどのような条約なのでしょうか?この条約は、数あるハーグ条約の一つです。ハーグ条約の中には、近年有名な「国際的な子の奪取の民事上の側面に関する条約」がありますが、今回はこちらの条約とは別の条約になります。

さて、日本での公的な文書の取扱いについては皆様もご存じの通り、市役所などで発行された文書に、更に別の公の機関の証明は必要ありませんね。

一方で、外国の政府や地方自治体が発行した文書(外国公文書)を国内の民事上の手続に使用する場合には、多くの国では当該文書が真正に成立したことをその国の外交官等が証明することが要求されてきました。

たとえば、日本の市役所が発行した公文書を使用する場合、日本国内であれば市長の公印が押されているのでそのまま使用できますが、アメリカの自治体に提出するとなると、この文書が間違いなく市役所の発行したものであることを外務省で証明した後、更に駐日アメリカ領事から証明を受けるという2重の証明の手続きが必要とされてきたのです。

これらの手続を経ることは、煩雑であり時間を要するので、認証を不要とすることが望まれていました。

そこで、「ハーグ国際司法会議」において、1961年に「外国公文書の認証を不要とする条約」(認証不要条約)が採択され、2重の認証手続を不要とし、領事による認証に代えて発行国政府の作成する一定様式の証明書であるアポスティーユ(Apostille)のみで、提出先の国の機関に当該文書を提出することができるようになったのです。

「領事認証」を取得するとなると、各国によって制度や対応が違いますし、ただでさえ面倒な役所での事務を二つも、それも慣れない外国のお役所でこなさなければならいというのは、忙しい現代人にとってかなりのストレスですね。アポスティーユで制度が統一され、自国の機関のみで手続きが完了できるようになったことは、大変に便利かつストレス軽減になったと言えるのではないでしょうか。

「外国公文書の認証を不要とする条約」の中身

ここからは、少しマニアックな情報になってきますので、ご興味のある方のみお読みください。「公印確認」や「アポスティーユ」の具体的な手続きの流れや申請に必要な情報は、下記のブログ記事にてお話していますので、そちらをご覧ください。

「外国公文書の認証を不要とする条約」の構成

構成は次のようになっています。

  • 全文
  • 第1条~第15条
  • 末文
  • 付属書 証明分の様式

第1条 条約の適用される公文書の範囲

「この条約は、いずれかの締約国の領域において作成された公文書で他のいずれかの締約国の領域において提出されるべきものにつき、適用する。」

ここに、対象の文書が「公文書」であることと、対象国が締約国のみであることが書かれています。ただし、「私文書」も「公文書」にしてもらうことで、アポスティーユの適用を受けることができます。詳しくは下記のブログ記事をご覧ください。

締約国については、外務省の以下のホームページをご覧ください。

外務省参考資料https://www.mofa.go.jp/mofaj/toko/page22_000610.html

「この条約の適用上、次のものを公文書とみなす

  1. 国の司法権に係る当局又は職員が発する文書(検察官、裁判所書記又は執行吏が発するものを含む。)
  2. 行政官庁の文書
  3. 公正証書
  4. 登記済み又は登録済みの証明、確定日付証明、署名証明その他これらに類する公的な証明であって、私署証書に付するもの

ただし、この条約は、次の文書については適用しない。

  1. 外交官又は領事館が作成する文書
  2. 行政官庁の文書で商業活動又は税関の事務と直接の関係があるもの」

かなり明確に「公文書」の定義がなされています。

第2条 認証の免除

「各締約国は、自国の領域において提出される文書でこの条約の適用を受けるものにつき、認証を免除する。この条約の適用上、「認証」とは、当該文書の提出されるべき国の外交官又は領事館が、署名の真正、文書の署名者の資格及び場合により文書に押されている印影の同一性を証明する手続きのみをいう。」

第2条では、アポスティーユで免除される認証とは、提出先の国の大使館・領事館でされる「領事認証」であることが示されています。また、証明されるのは、あくまで署名・捺印・資格の真正であり、文書の中身の真正ではないということが分かります。

第3条 証明文の付与

条文は省略しますが、第2条の「認証」が、証明書を文書に付することによって行う旨が書かれています。

第4条 証明文の様式及び用語

「前条第一項の証明文は、文書自体又は補箋に記載する。その証明文は、この条約の付属書の様式に合致するものとする。

もっとも、証明文は、これを付与する当局の公用語で記載することができる。また、証明文中の文言には、他の言語を併記することができる。「証明(1961年10月5日のヘーグ条約)」という標題は、フランス語で記載する。」

補箋とは聞きなれない言葉ですが、当該文書自体ではなく、様式さえ守っていれば、当該文書に他の紙につけて証明をしても良いということです。

また、自国の言葉のみで記載できると明記していますね。日本なら日本語だけでもOKなのですね。

ハーグ条約はヘーグ条約ともいいます。打ち間違いではありません。

第5条 証明文の付与手続き及び証明力

「証明文は、文書の署名者又は所持人の請求に応じて付与する。

正当に記載された証明文は、署名の真正、文書の署名者の資格及び場合により文書に押されている印影の同一性を証明する。

証明文中の署名及び印影は、全ての証明を免除される。」

署名した人又は、文書を持ち込んだ人が請求して初めて証明文が発行されると書いていますね。つまり、当該文書が公的機関から発行されたときに、自動でこの証明書が付されることはないということです。

後半は、アポスティーユが何を証明する力があるのかということが書かれています。第2条でも書かれていましたが、当該文書の中身ではなく、署名、捺印、資格の証明をする力があるということでしたね。

第6条~第15条

国家間の規定になります。私たちにはあまり関係のない話になりますので、割愛します。 

全文はこちらのサイトから見ることができます。

HCCH | 日本語 (Japanese)(出典 2024-11-09)

付属書 証明文の様式

第4条で、決められた様式の証明文でなければならないと記載がありましたね。

「証明文は、一辺の長さが少なくとも9センチメートルの正方形とする。」

なんと、大きさが決められているのですね。思ったより小さい?下記が証明文の様式になります。

表題はフランス語と決まっているのですね。ちょっと面白いですね。

下記が日本語に訳したものです。

まとめ

最後までお読みいただきありがとうございました。

今回のブログ記事では、アポスティーユの記事を書くに当たって、私が気になっていた「外国公文書の認証を不要とする条約」について書いてみました。

特に皆さんのお役に立てるブログではなかったかもしれませんが、少し興味を持っていただける方がいれば幸いです。

「外国公文書の認証を不要とする条約」の構成

  • 全文
  • 第1条~第15条
  • 末文
  • 付属書 証明分の様式

「外国公文書の認証を不要とする条約」の第1条~第5条

第1条 条約の適用される公文書の範囲

第2条 認証の免除

第3条 証明文の付与

第4条 証明文の様式及び用語

第5条 証明文の付与手続き及び証明力

付属書 証明文の様式

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この記事を書いた人

大阪府箕面市の行政書士です。
・趣味:美術鑑賞、散歩
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