フィリピン人を特定技能で雇用したい時に必要なMWO申請とは

フィリピン人を特定技能外国人として受け入れるには、日本側で「在留資格変更許可申請」や「在留資格認定証明書交付申請」(以下ビザ申請)を行って許可を得る必要がありますが、それ以外に、フィリピン側の手続きである「MWO申請」をして許可を得る必要があります。

ベトナムやタイ、カンボジアのように、MWOの許可書類がビザ申請時に求められるわけではありませんが、特定技能でフィリピン人を受け入れたい場合には必要な手続となります。

目次

MWOとは

MWOの概要

MWO(Migrant Workers Office)とは、フィリピン政府が設立した機関で、日本で働くフィリピン人労働者とその家族の福祉を保護し、支援するための事務所です。以前は、POLO(Philippines Overseas Labor Office)と呼ばれていましたが、2023年から組織の改編に伴い、MWOに改称されました。厳密には組織の形態が異なりますが、その役割と日本側に求められる手続き等は基本的に同じです。

MWOの役割

簡単に言うと、MWOはフィリピン人労働者が海外で働く際に、労働者の側に立ってその権利を守るために各種手続きを行っている機関です。時々勘違いをしておられる受入れ機関もありますが、MWOにっとて受入れ機関等の日本側の人々は、フィリピン人を雇ってくれるお客様ではありません。あくまで受入れ機関は審査対象であり、許可するかどうかの権限はMWO側にあります。

MWOの審査には申請が受理されてから2週間~1か月ほどかかり、その中で特に重視されるのが、フィリピン人労働者の賃金や待遇です。これらの基準は公にはされていませんが、MWOの基準に満たない場合、書類の修正と再提出が求められます(これら以外の理由でも修正依頼はあります)。また、再提出が求められるケースは多いですので、時間に余裕をもって申請することをお勧めします。

また、MWO申請で特徴的なものが「面接」です。これはMWOから受入れ機関に通知があり、受入れ機関がMWOの事務所に赴くか、Zoom面談の形で行われます。ただし、受入れ機関がどちらかを選べるわけではありません。面接は英語で行われますので、英語に堪能な職員がいない受入れ機関は、通訳を雇う必要があります。面接に登録支援機関の職員や行政書士は同行できません。

MWOの連絡先と管轄

MWOの事務所は東京と大阪にあります。以下がそれぞれの管轄と連絡先です。本社と受入れ事業所の住所が違うために管轄が異なる場合は、受入れ事業所の住所の方の管轄のMWOに申請をします。

基本的には東日本がMWO東京で、西日本がMWO大阪の管轄ですが、愛知県が大阪管轄であることに注意してください。

MWO東京
管轄

北海道・青森・岩手・宮城・秋田・山形・福島・茨城・栃木・群馬・埼玉・千葉・東京・神奈川・新潟・長野・静岡・山梨

連絡先

在東京フィリピン共和国大使館移住労働者事務所(MWO)
〔所在地〕東京都港区六本木5-15-5

〔電話番号〕03-6441-0428、03-6441-0478
〔メールアドレス〕mwo_tokyo@dmw.gov.ph

MWO大阪
管轄

愛知県、岐阜県、三重県、富山県、石川県、福井県、滋賀県、京都府、大阪府、兵庫県、奈良県、和歌山県、鳥取県、島根県、岡山県、広島県、山口県、徳島県、香川県、愛媛県、高知県、福岡県、佐賀県、長崎県、大分県、熊本県、宮崎県及び鹿児島県・沖縄(2023年10月1日より東京管轄から大阪管轄へ)

連絡先

在大阪フィリピン共和国総領事館移住労働者事務所(MWO)
〔所在地〕大阪府大阪市中央区淡路町4-3-5 URBAN CENTER御堂筋7階
〔電話番号〕06-6575-7593
〔メールアドレス〕mwoosaka.ssw@gmail.com

〔公式サイト〕MWO Osaka (dmw.gov.ph)

MWO申請に関する用語と大まかな手続きの流れ

フィリピンの特定技能外国人を雇用するためのMWO申請は、他の国の方を雇用する場合よりも複雑で、時間や手間、費用がかかります。

まずは、MWO申請に関する用語を解説してから、大まかな流れを確認したいと思います。

MWOに関する用語

DMW

DMW(Department of Migration Workers / 移民労働者省) は、海外で働くフィリピン人労働者(OFW)の保護や手続きに関する窓口となるフィリピンの政府機関です。フィリピン人が特定技能で日本で働くためには、OECという許可証(後述します)が必要ですが、その許可証を発行するのがこの機関になります。

こちらも2023年の組織改編に伴い、旧POEA(フィリピン海外雇用庁)と他の6つの省庁や組織が統合されてできた機関ですが、実務的には単にPOEAの名称変更のようにみなされることが多い機関です。

OEC

上記DMWの説明の中で出てきたOECは、「Overseas Employment Certificate」の略で、日本語の正式名称は「海外雇用許可証」といいます。これはフィリピン人労働者が海外での雇用を受ける際に必ず必要な文書で、フィリピン国内においてDMWから発行されます。

特定技能フィリピン人はMWOから指定されたオフィスでOECを申請し受け取ります。申請は有料です。フィリピンにいる特定技能フィリピン人はこれを持って出国します。OECが無いと出国することができませんので大変重要な書類となります。

また、日本にいるフィリピン人を雇用した場合でも、一時帰国したフィリピン人が、日本に再入国するためにフィリピンを出国しようとする際にも必要となります。日本の法律上はOECを取得していないフィリピン人も特定技能制度の下で就労することは可能です。ただし、OECを取得していないと、このように一時帰国をした際に再入国できずに退職を余儀なくされてしまうケースがありますので、必ず取得しておくようにして下さい。

更に、OECを持っている特定技能フィリピン人は、フィリピンへの一時的な帰国時にOEC料金や手続きの免除を受けることができます。これにより、特定技能フィリピン人は短期間の帰国時に追加の負担を受けずに済むようになります。

MWO

MWOは、「Migrant Workers Office(移住労働者事務所)」の略であることは最初に記載したとおりです。こちらも実務的には旧POLOが名称変更した機関とみなされています。MWOは、特定技能フィリピン人が日本で就職する際に、受入れ機関からのMWO申請を受けて、当該事業所で働くフィリピン人が適切に評価されているか、給与や雇用条件が公正であるかどうかを確認します。

これらの確認ができると、MWOは受入れ機関に「登録推薦書」を発行します。「登録推薦書」はPRA(後述します)に送られ、DMWに受入れ機関の登録が行われます。その後、PRAからDMWにOECの発行申請が行われ、特定技能フィリピン人にOECが発行されます。つまりMWOは、DMWがOECを発行する前段階の審査をする機関だということです。

PRA

PRAは「Philippine Recruitment Agency」の略で、日本語の正式名称は「フィリピン政府公認の認定送出機関」です。フィリピン労働省の認可を得て、国内の労働者を海外の雇用主に仲介・派遣する事業を行うエージェントです。

PRAは以下のDMWのサイトから検索をすることができます。

DMW | Department of Migrant Workers

受入れ機関はPRAを自分たちで探すか、または雇用しようとするフィリピン人や登録支援機関から紹介を受けてPRAと契約し、RA(後述します)という契約書を交わします。一部例外はありますが、基本的にどの受入れ機関もPRAと契約をしなければなりません。PRAは有料で、受入れ機関の負担となります。

RA

RAは、「Recruitment Agreement」の略で、日本語の正式名称は「フィリピンでの人材募集および雇用に係る取決め書(協定書)」です。フィリピン人材の募集を開始する前に、受入れ機関とPRAとの間で締結をしなければならない協定書の一種で、「人材募集および雇用に係る取決め」について記載されています。

RAのひな形はMWO大阪のサイトからダウンロードできます。締結したRAは、MWOに提出する前に、印鑑証明書を持って日本の公証役場で署名認証の手続きを行う必要があります(アポスティーユは不要)。RAには有効期限が存在し、最長で4年間です。更新時期の3~4か月前に更新手続きを行う必要があります。

MR

MRは「MANPOWER REQUEST」の略で、「JOB ORDER」とも呼ばれます。日本語の正式名称は「求人依頼書」で、こちらもMWO大阪のサイトからひな形をダウンロードすることができます。


フィリピン人の雇用を予定している受入れ機関が、直近で何名のフィリピン人材の雇用を予定しているのかを事前申請する手続きになります。ここで押さえておいて欲しいのは、MWO申請はビザ申請とは異なり、フィリピン人一人一人について申請をするのではなく、人数枠で申請をするということです。

例えば、約2年間の間に10名の採用を見込んだ場合、10名分のMRをMWOに申請します。10名を超えそうな場合は追加申請をします。

追加申請は、最初の申請と比べると書類も手続きもかなり少なくてすみます。できるだけ最初に多くの枠で申請したいところですが、あまり採用予定とかけ離れた人数を記入すると、修正の対象となるため注意が必要です。

MWOに関する大まかな手続きの流れ

  1. 受入れ機関が契約するPRAを探す
  2. 受入れ機関とPRA がRA(協定書)を交わす
  3. 受入れ機関が公証役場に赴き、RAに署名認証の手続きを行う
  4. 受入れ機関がMWOにRAやMRなどの書類を提出し、OEC発行のための申請を行う
  5. 承認を受けるとMWOから受入れ機関に登録推薦書が発行される
  6. 受入れ機関は登録推薦書等をPRAに送る
  7. PRAはDMWにOEC発行申請を行う
  8. DMWが特定技能フィリピン人にOECを発行する
  9. 特定技能フィリピン人がフィリピンを出国することができる

まとめ

最後までお読みいただきありがとうございました。

特定技能でフィリピンの方を雇用する場合には、一部を除いてMWO申請が必要です。MWO申請の手続きはかなり煩雑で、必要書類の数も多く、要件も厳しいものとなっています。

これらの理由から、一つの記事ではお伝えしきれませんので、いくつかの記事に分けてMWO申請を説明していきたいと思います。

最後に大きな注意点として、MWO申請は行政書士や登録支援機関を含む第三者の関与が禁じられています。つまり受入れ機関はMWO申請を誰かに丸投げすることはできません。サポートとして、書類の翻訳や申請のアドバイスを受けることは可能です。

もし、MWO申請に不安があるという方はお気軽にご相談ください。

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

大阪府箕面市の行政書士です。
・趣味:美術鑑賞、散歩
・スポーツ:卓球、テニス
・座右の銘:失敗は成功のもと
\お気軽にお問い合わせください/

目次