「経営・管理」の在留資格の明確化とは?
令和4年10月に、「「経営・管理」の在留資格の明確化等について」という文書がが出入国在留管理庁から公表されました。
これは、「経営・管理」ビザを申請する人が、何に注意して申請すれば許可を得やすいのか、またはどういった内容では許可できまないのか、ということをはっきりとさせて、申請をする前にチェックできるようにしたものです。
令和5年 4月と令和6年 3月の2回の改訂が行われ、今に至ります。
前回のブログ記事では、この文書の中で、特に入管の審査で気にされることを書きました。今回は、前回では書ききれなかった注意点をお話したいと思います。
今回お話する注意点は、下の2つです。
- 500万の資金についての注意点
- 共同でビジネスをするときの注意点
1、500万の資金についての注意点
「経営・管理」ビザを取るためには、つぎの基準に当てはまる必要があります。
次の全ての基準に当てはまらなくてはいけません。
- 事業所が日本にあること
- ビジネスの大きさが次のどれかにあてはまること
- 経営や管理をする人以外に、2人より多い常勤の従業員をやとっていること
- 資本金または出資金の額が500万以上であること
- AやBと同じぐらいの大きさだと認められること
- 「管理」ビザを申請したい場合は、ビジネスの経営・管理で3年以上の経験(けいけん)があることと、日本人と同じかそれ以上の報酬をもらうこと
今回は、2のBの条件である「資本金または出資金の額が500万以上であること」について詳しく書いていきます。
資本金500万を現金で用意する場合
資本金は、会社を設立する外国人でなくてもかまいません。日本人が資金を出すことも可能です。
入管が一番気にするのは、「見せ金」ではないかということです。「見せ金」とは、申請をとおすために、「会社を作ったらすぐにお金を返す」と約束をして借りるお金のことです。
他にも、入管に疑われるケースがあります。日本で留学で来ていた学生が、留学中に貯めたお金で会社を作るケースです。留学生は週に28時間の労働しか認められないのに、その間に500万もためることができたのは、違法に長時間にわたって働いたからではないかと疑われます。「経営・管理」ビザとは直接関係がないように思われるかもしれませんが、日本での生活態度は、他のビザを取るときにも大きく影響します。
親に借りること、金融機関に借りることは認められます。親に借りる場合でも、借用書または金銭消費貸借契約書を作っておきましょう。
新株予約権の発行により資金を調達する
新株予約権の発行により資金を調達するための要件
新株予約権の発行による払込金のは、以下の1と2の両方を満たすことで、「経営・管理」の基準となる「500万円」に計上することができます。
- 新株予約権の発行によって払い込まれた、返済義務のない払込金であること
- 上記1の払込金について、将来、新株予約権が権利行使されることで払込資本となる場合及び権利行使されずに失効し利益となる場合のいずれであっても、資本金として計上することとしていること
新株予約権の発行により資金を調達するための提出資料
- 新株予約権の発行にあたり締結された投資契約書(J-KISS型新株予約権契約書など)
- 上記1の締結によって実際に払い込まれた額を証明する資料(通帳の写し若しくは取引明細書の写し)
- 上記①の締結によって実際に払い込まれた額のうち、上陸基準省令「経営・管理」の項の第2号ロの「500万円」として計上して申請しようとする額について、将来、新株予約権が利行使された際に資本金として計上することの誓約書等
2、共同でビジネスをするときの注意点
他に従業員がいない状況で、2人以上の外国人が役員になろうとする場合は、それぞれの外国人が実際にビジネスに参加していなければなりません。実際のビジネスに参加するとは、つぎのような業務を行うことをいいます。
- 事業の運営に関する重要事項の決定
- 事業の執行(ビジネスを執り行うこと)
- 監査の業務(チェック業務)
名前だけの役員では、「経営・管理」ビザの許可はおりません。ビザの許可を得るためには、ビジネスの規模、業務量、売上などが問われます。それだけの人数の役員が必要なのか判断するためです。また、業務の内容や役員の報酬なども判断材料となります。
まとめると、次の3つの条件が満たされる必要があります。
- 事業の規模や業務量を考えた時に、それぞれの外国人が事業の経営または管理を行うことについて合理的な理由があると認められること
- 事業の経営または管理に係る業務について、それぞれの外国人ごとに従事することとなる業務の内容が明確になっていること
- それぞれの外国人が経営または管理に係る業務の対価として報酬額の支払いを受けることとなっていること
まとめ
最後までお読みいただきありがとうございました。
今回は、出入国在留管理庁によって公開された「「経営・管理」の在留資格の明確化等について」をもとに、前回のブログに引き続いて、「経営・管理」ビザの審査のポイントについてお伝えしました。前回のブログ記事のポイントの方がより重要になりますので、合わせてお読みください。
今回のポイントは以下となります。
- 500万の資金についての注意点
- 共同でビジネスをするときの注意点
今回の記事は、外国人の方でも読みやすいように、できるだけやさしい日本語で書いています。また、難しいと思われる漢字にはルビを付けました。この記事が、日本で会社を作ろうと考えておられる外国人の方や、その協力者の方のお役にたてれば幸いです。