はじめに
家族滞在ビザ
外国籍の高校生のみなさんは、ご自分が何のビザで日本に住んでいるのかご存じですか?
ご両親と一緒に永住許可を取ったという方は、今回のお話はあまり関係がないかもしれません。ただ、今までは、一度永住許可がおりると、その後取り消されたりはしなかったのですが、2022年6月14日に発表された「外国人材の受入れ・共生のための総合的対応策(令和4年度改訂)」には、永住者のあり方について見直し・検討を行っていくという旨が記載され、外国人の永住許可を取り消せるようにしようという動きがでてきましたので、在留資格の制度を知るためにも、こちらの記事を読んでいただくのも良いかと思います。
まずは、みなさんと同じ立場の方がどれぐらい日本に存在するのかということですが、令和5年6月末の出入国在留管理庁が公表した統計を見ると、中長期在留者数(※)は293万9,051人で、前年末(307万5,213人)に比べて、14万8,645人(4. 8%)増えています。
「中長期在留者」とは、入管法上の在留資格をもって我が国に在留する外国人のうち、次の(1)から(4)までのいずれにも当てはまらない人です。
なお、次の(5)及び(6)に該当する人も中長期在留者には当たりません。
(1) 「3月」以下の在留期間が決定された人
(2) 「短期滞在」の在留資格が決定された人
(3) 「外交」又は「公用」の在留資格が決定された人
(4) (1)から(3)までに準ずるものとして法務省令で定める人(「特定活動」の在留資格が決定された台湾日本関係協会の本邦の事務所若しくは駐日パレスチナ総代表部の職員又はその家族の方)
(5) 特別永住者
(6) 在留資格を有しない人
また、家族滞在ビザで日本に居住している外国人は、24万4890人で、前年末(22万7857人)に比べて1万7033人(7.5%)増加しました。
家族滞在ビザとは、中長期の在留資格を持つ外国人が、家族を日本に呼び寄せて、一緒に暮らすためのビザです。もし、これを読んで下さっている高校生が、「家族滞在」ビザまたは「留学」ビザ(※「家族滞在」と同じ状況の場合のみ)をお持ちであって、日本での就職を考えているということであれば、今回のお話は必ず知っておくべき内容となります。
「家族滞在」ビザ以外の在留資格を持っている外国籍の高校生でも、「家族滞在」の在留資格にあてはまるような場合は、これからお話する制度を利用することができます。例えば、親の仕事の関係で日本に住んでいるが、「留学」の在留資格で高校に通っている場合などがこれにあてはまります。
在留資格とは、外国人が日本に滞在し、特定の活動を行うために必要なビザのことを指します。それぞれの在留資格により、日本でできる活動内容や滞在期間が決められています。この記事でビザという時には、「在留資格」のことを指しています。本来はビザと言えば査証のことですが、日本では留学ビザ、就労ビザというように一般的に在留資格のこともビザと呼んでいるためです。詳しくお知りになりたい方は下記のブログ記事をお読みください。
「家族滞在」ビザのままだとどうなるの?
さて、本題に入っていきますが、「家族滞在」ビザなどで外国人の子供として、日本で生活し学校に通っている高校生も、高校を卒業すれば就職や進学を考える時期が来ることでしょう。進学をした場合は、「技術・人文知識・国際業務」ビザや前回のブログ記事でご紹介した「特定活動46号」ビザを取得して就職という道もありますが、高校卒業と同時に働きたいとなった場合はどのようなビザが用意されているのでしょうか?
実は、今までは特にそのような若者に対するビザは用意されていませんでした。ですので、高卒で働きたい場合は、親と一緒に永住許可を取得するまで待たなければならなかったのです。また、それが長年日本に住み続けている外国人家族の一般的なルートでした。
ですが、2019年に永住許可の要件(条件)が改訂され、税金や保険料の納入のきまりなどが厳しくなったため、永住許可を取得できる外国人が大幅に減少してしまいました。また、これは特に公表はされていないのですが、求められる年収も上昇しており、以前は年収350万が永住を認められる最低ラインだと言われていたのですが、最近では400万近くの年収がないと認められないようなのです。
では、永住許可を取得できず、家族滞在ビザのまま、子供が高校を卒業して就職したいとなった場合どうなるのかというと、その子供は資格外活動許可の範囲内(週に28時間以内)でしか働くことができなくなります。
つまり、いつまでたってもアルバイト生活ということです。しかもフルタイムで働くこともできません。そこで2015年に始まったのが、日本で高校を卒業した若者を対象とした「定住者」ビザと「特定活動」ビザの制度です。
「定住者」ビザと「特定活動」ビザ
さて、日本の高校を卒業して就職を考えている若者に用意されている「定住者」ビザと「特定活動」ビザですが、「家族滞在」ビザと大きく違うのは、フルタイムの仕事ができることです。また、職種に制限もありませんので、単純労働に就くこともできます。
「定住者」ビザと「特定活動」ビザの違いですが、「定住者」ビザの方が安定性があります。「定住者」ビザは、日系2世、3世や永住者の海外で生まれた子や養子、難民など、「他のいずれの在留資格にも該当しないものの、日本において相当期間の在留を認める特別な事情があると法務大臣が判断した人を受け入れるために設けられた」在留資格だからです。
それに対して「特定活動」は、「現在存在する他の在留資格に該当しない活動を行う外国人に対して付与される特別な在留資格」です。 この資格は、法務大臣が個々の外国人について特に指定する活動に基づいて決定されるため、政府が入管法を改正することなく、柔軟に対応できるのが特徴です。つまり、すぐに変更されてしまう可能性のある不安定な在留資格ということです。
「定住者」ビザと「特定活動」ビザに変えることができる人
どちらのビザでも求められること
まずは、2つのビザどちらにも求められることを見ていきたいと思います。
- 17歳までに日本に入国していること。
- 日本の高等学校などを卒業しているか、卒業見込みであること(高等学校にあたるかについては↓をご覧ください)。
- 入国後、引き続き「家族滞在」のビザをもって日本に在留していること。(※「家族滞在」以外のビザでも「家族滞在」と同じ状況とみなされれば対象になります。)
- 就職先が決定していること(内定でも可)。
- 就職先で資格外活動許可の範囲を超えて就労すること(1週につき28時間を超えて就労すること)。
- 住居地の届出等、公的義務を果たしていること。
- 定時制高校
- 通信制高校
- 中等教育学校の後期課程(中高一貫校の後期課程など)
- 高等専門学校
- 専修学校
- その他、学校教育法第125条に規定する高等課程であって、大学入学資格がその修了者に認められる課程として文部科学大臣により指定されている学校
「定住者」ビザに変えることができる人
「定住者」ビザに変えることができる人は、上の「どちらのビザでも求められること」にプラスして、次のことが求められます。
日本の義務教育(小学校と中学校のどちらも)を修了していること。
小学校の入学前に日本に来るか、小学校途中でも卒業が認められれば対象となります。また、日本で産まれた人もこのビザの対象になります。
- 夜間中学校
- 義務教育学校の後期課程(小中一貫校の後期課程など)
- 中等教育学校の前期課程(中高一貫校の前期課程など)
- 特別支援学校の中学部
「特定活動」ビザに変えることができる人
「特定活動」ビザに変えることができる人は、上の「どちらのビザでも求められること」にプラスして、次のことが求められます。
高校入学から日本にいる場合
扶養者(生活や経済的な面倒を見てくれる人のこと)が身元保証人として日本に居住していること。
外国の高校からの編入で日本にいる場合
扶養者(生活や経済的な面倒を見てくれる人のこと)が身元保証人として日本に居住していること。
日本語能力試験N2程度の日本語能力があること。
以上の内容はこちらの表にまとまっていますので、合わせてご覧ください。
出典:法務省 https://www.moj.go.jp/isa/content/930003573.pdf
まとめ
最後までお読みいただきありがとうございました。
今回のブログ記事では、日本の高校に通う外国人の方が、高校を卒業してから、日本で就職したいと思った時に考えるべきビザ(在留資格)についてお伝えしました。
今回ご紹介したビザを取得することで、日本に住む外国人の若者が、安心して人生を切り開いていけるとしたら、なんとも素晴らしいことだと思います。その願いも込めて今回の記事も書かせていただきました。
次回は、小学校前から日本にいなくても、「定住者」ビザを取得する方法をお伝えしたいと思います。
対応可能地域
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いずれも公共交通機関が利用できる地域を想定していますが、地域についてはご相談に応じます。