はじめに
前回と前々回のブログ記事では、フィリピン人の方を雇用する時に必要となるMWO申請について、「MWO申請関する用語や概略」と「詳しい手続きの流れ」をお伝えしました。
今回は、初めてDMWに登録をするという受入れ機関が作成・収集しなければならない書類を紹介していきたいと思います。
MWO新規申請に必要な書類
以下が初めてDMWに新規登録をする受入れ機関が用意しなければならない書類です。MWOのホームページからダウンロードして書き込めば良いものから、取得して翻訳が必要なものまで多岐に渡る書類が求められます。また、枚数も多く、「在留資格変更許可申請」や「在留資格認定証明書交付申請」と同じぐらいの厚さになることもあります。
まずは、書類の全体像を知るために、全ての書類を並べてみましたので下記をご覧ください。
- 特定技能申請書(Application Form)
- 営業許可証などの写し(Business License/Permit)と翻訳
- 企業プロフィール(Company Profile)
- 登記簿謄本(Company Registration)の原本と翻訳
- 人材派遣企業と送出し機関の協定書(Recruitment Agreement)(日本の公証役場で公証印の押印が必要)
- 受入れ機関/人材派遣企業の代表者のパスポートの写し、又は公的に発行された身分証明書(署名者が代表取締役でないときは委任状も提出すること)と翻訳
- 送出し機関のDMW/POEA許可書の写しと代表者のパスポートの写し
- 役職、求人数、給料を記載している求人依頼書(Manpower request/job order)
- 特定技能者によりこなされる仕事・責任内容と職業の説明書、及び同等な職務をこなす日本人の給料の証明書(List of tasks, duties and responsibilities and/or description of the occupational category)
- 雇用契約書(Master Employment Contract)
- 雇用条件書(Written Employment Conditions)
- 給与内訳(Salary breakdown)
- 日本の一般的な状況や現実に基づきMWO審査上にて必要とされる他の書類
Guide-to-Labor-Docs.pdf (dmw.gov.ph)(参照 2024-10-8)
次に、上記の書類を「MWOがひな形を用意している書類」と「受入れ機関が準備する書類」に分けて詳しく説明していきます。
MWOがひな形を用意している書類
ここでは、MWOがひな形(フォーマット)を用意してくれている書類について詳しく解説していきます。書類の解説に入る前に、ひな形の取得方法をお伝えしておきます。
MWO Osaka (dmw.gov.ph)からダウンロードできます。
Home→ Servicesタブ→labor Documentationを選ぶ→ Downloadable Formsを選ぶ→特定技能労働者は英語でSpecified Skilled Workerなので、この文字の下の書類から必要な書類をクリックする→ダウンロードする
※MWO大阪のホームページの内容、様式が変更になる可能性があり、その場合上記のやり方ではダウンロードできないかもしれません。
【】内がひな形の名前です。
- 特定技能申請書(Application Form)→【Annex E】
- 企業プロフィール(Company Profile)→【Annex D】【Annex D1】
- 受け入れ機関/人材派遣企業と送出し機関の協定書(Recruitment Agreement)(日本の公証役場で公証印の押印が必要)
- 役職、求人数、給料を記載している求人依頼書(Manpower request/job order)→【Annex C】
- 特定技能者によりこなされる仕事・責任内容と職業の説明書、及び同等な職務をこなす日本人の給料の証明書(List of tasks, duties and responsibilities and/or description of the occupational category)→【Annex C2】
- 雇用契約書(Master Employment Contract) →【Annex B】
- 雇用条件書(Written Employment Conditions)→【Annex B】
- 給与内訳(Salary breakdown)→【Annex C1】
ここからは、細かな注意点を書類ごとにお伝えします。
- 書類は受入れ企業が作成しなければなりません。
- チェックボックス(直接雇用/人材派遣企業)にチェックを入れてください。
【Annex D】フィリピン労働者人数(社員・パート、永住者含む)公式代表者、連絡先、職内容と財務状態を記載します。
【Annex D1】受け入れ機関/人材派遣企業で現在勤務中のフィリピン国籍労働者の名簿(社員・パート含む)を作成します。
※承認権者名、判子/印鑑押印が必要です。
- 協定は受入れ機関とパートナーとなる送出機関(PRA)とで結んでください。
- 6ヵ月以内に日本で公証印の押捺されたものが必要です。
- 日本側の署名者名、判子/印鑑を協定書のすべてのページに記載・押印してください。
- 送り出し機関の署名者はPOEA上に登録されている代表者であることを確認して下さい。
- POEA様式の協定書規定、特に紛争解決、解約、適用法が含まれているか確認して下さい。(ひな形がありますので、そちらを使用すれば全て含まれています。)
- 協定有効期間(契約解除条規)は4年間までとなります(ひな形にも記載があります)。
※日本の公証役場にて 公証印の押捺が必要です。手数料として11,500円がかかります。
※MWOのひな形を取得するページの下の方に、Other downloadable forms という項目があり、そこからダウンロードすることができます。
- 求人依頼書は送り出し機関宛てにして下さい。
- 役職、ビザ、求人数、基本月給を明記して下さい。
- 同等な職務をこなす日本人の給料/手当の説明書と証明書(給与明細書など)を添付してください。
- 同等な職務をこなす日本人の給料/手当の説明書と証明書には翻訳書類が必要です。翻訳者名を記載し、署名/判子/印鑑の記載・押印をしてください。判子/印鑑は日本人が翻訳者の場合のみ必要です。
※承認権者名、判子/印鑑押印が必要です。
(List of tasks, duties and responsibilities and/or description of the occupational category)→【Annex C2】
職務(肩書)がすべての書類において統一されているか確認して下さい。
※承認権者名、判子/印鑑押印が必要です。
雇用条件書と同じ【Annex B】の書類ですが、別の書類となります。MWO大阪のダウンロードのページにも2種類の書類が用意されていますので、どちらもダウンロードして、記入したものを提出してください。
※全てのページに受入れ企業の承認権者名、判子/印鑑押印が必須です。
※MWO提出時には外国人の署名は必要ありません。
- 雇用期間は3年以上は記入しないで下さい(日本の法律で有期労働契約は3年までとなっています。)。
- 職種は求人依頼書(Manpower request/job order)と統一して記入されているか確認して下さい。
- 就業場所は企業プロフィール/登記簿謄本と統一している記入しているか確認して下さい。
- 勤務時間が‘1年間変則的’である場合、企業カレンダーの提出が必須となります。
- 年間休日数と年間有給日数は必ず記入してください。
- 時給金額と県別の最低賃金金額の確認して下さい(2024年10月に最低賃金が変更されたので要注意です)。時給は最低賃金より下回ってはなりません。理想的な時給 金額は最低賃金金額より100円以上増しだそうです。
- 記載されている賃金は求人依頼書(Manpower request/job order)と統一して記入されているか確認して下さい。
- 家賃の控除額は平均15,000円であり、上回る場合は相談が必要となるそうです。
- 光熱費の控除額は平均5,000円であり、‘actual prorated cost of utilities’と備考として
記載する。 金額が上回る場合は相談が必要となるそうです。 - 就業場所を記入する欄がありますので、就業場所が複数の場合は就業場所の数だけ必要になります。
※黄色い下線部分は、MWO大阪の規定です。MWO東京では異なる可能性があります。
※MWO提出時には外国人の署名は必要ありません。
賃金の支払いの記載事項は給与内訳と求人依頼書と一致している必要があります。
※承認権者名、判子/印鑑押印が必須です。
受入れ機関が準備する書類
- 営業許可証などの写し(Business License/Permit)と翻訳
- 登記簿謄本(Company Registration)の原本と翻訳
- 受入れ機関/人材派遣企業の代表者のパスポートの写し、又は公的に発行された身分証明書(署名者が代表取締役でないときは委任状も提出すること)翻訳
- 送出し機関のDMW/POEA許可書の写しと代表者のパスポートの写し
- 翻訳書類には翻訳者名を記載し、署名/判子/印鑑の記載・押印をしてください。判子/印鑑は日本人が翻訳者の場合のみ必要です。
- 全ての書類上での受入れ企業の英訳名が統一されているかを確認してください。
- 営業許可証の有効期限を確認してください。期限切れのものは受け付けられません。
- 分野によっては「営業許可証」という名前ではない可能性があります。その場合は、日本の行政機関から発行された営業許可証にあたるものを提出してください。(例 介護施設→指定通知書)
- 登記簿謄本は発行日から3か月以内のものを提出してください。
- 翻訳書類には翻訳者名を記載し、署名/判子/印鑑の記載・押印をしてください。判子/印鑑は日本人が翻訳者の場合のみ必要です。
- 全ての書類上での受入れ企業の英訳名が統一されているかを確認してください。
- 社長/代表取締役/専務取締役がすべての書類においての署名者である事、そう
でない場合、受入れ企業は委任された代表者名をSSW申請書に記載すること - 自営業者の場合は日本の 行政機関から発行された納税証明書とその翻訳を提出してください(翻訳者の署名、印鑑については登記簿謄本と同じです)。
又は公的に発行された身分証明書
- 受け入れ機関か人材派遣企業の雇用主もしくは委任された代理人のパスポートを提出してください。
- パスポートが無い場合は、運転免許証やマイナンバーカードなどの公的に発行された写真付きの身分証明書をパスポートに替えて提出して下さい。
- 署名者が雇用主/代表取締役でない場合は委任状を提出して下さい。
- 翻訳書類には翻訳者名を記載し、署名/判子/印鑑の記載・押印をしてください。判子/印鑑は日本人が翻訳者の場合のみ必要です。
- 有効な送り出し機関の許可書と代表者/委任代理人のパスポート又は公的に発行さ
れた 身分証明書の写しを提出して下さい。 - 特定技能としてのフィリピン国籍労働者配置に関するPOEAの証明書、又は送り出
し機関名が POEA上のリスト内に含まれているかを確認して下さい。 - これらの書類は送出し機関から取得してください。写しを提出しますので、メールなどで送付してもらうと良いでしょう。
日本の一般的な状況や現実に基づきMWO審査上にて必要とされる他の書類
具体的には何も書かれていませんので、MWOから要請があった場合に対応する他はないでしょう。
提出先
MWOの事務所は東京と大阪にあります。以下がそれぞれの管轄と連絡先です。本社と受入れ事業所の住所が違うために管轄が異なる場合は、受入れ事業所の住所の方の管轄のMWOに申請をします。
基本的には東日本がMWO東京で、西日本がMWO大阪の管轄ですが、愛知県が大阪管轄であることに注意してください。
北海道・青森・岩手・宮城・秋田・山形・福島・茨城・栃木・群馬・埼玉・千葉・東京・神奈川・新潟・長野・静岡・山梨
在東京フィリピン共和国大使館移住労働者事務所(MWO)
〔所在地〕東京都港区六本木5-15-5
〔電話番号〕03-6441-0428、03-6441-0478
愛知県、岐阜県、三重県、富山県、石川県、福井県、滋賀県、京都府、大阪府、兵庫県、奈良県、和歌山県、鳥取県、島根県、岡山県、広島県、山口県、徳島県、香川県、愛媛県、高知県、福岡県、佐賀県、長崎県、大分県、熊本県、宮崎県及び鹿児島県・沖縄(2023年10月1日より東京管轄から大阪管轄へ)
在大阪フィリピン共和国総領事館移住労働者事務所(MWO)
〔所在地〕大阪府大阪市中央区淡路町4-3-5 URBAN CENTER御堂筋7階
〔電話番号〕06-6575-7593
申請は作成・収集した書類を郵送で送ります。レターパックを使うと便利です。MWO宛のレターパックに受入れ機関宛の返信用のレターパックも入れておきましょう。
審査期間
約2週間から1か月程かかります。また、修正を求められることも多いですので、多めに見積もっておくことをお勧めします。
まとめ
最後までお読みいただきありがとうございました。
この記事では、MWO新規申請に必要な書類を、「MWOがひな形を用意している書類」と「受入れ機関が準備する書類」に分けてお伝えしました。
MWOの新規申請には、多くの書類とそれに伴う労力や時間がかかります。
また、MWOとのやり取りや、書類、面接は基本的に英語で行われるので、慣れない方には大変な作業だと思われます。
MWOの申請書類についてお困りのことがございましたら、お気軽にお問合せ下さい。
今回の記事は、MWO大阪の公式ホームページを基にして書いています。
MWO Osaka (dmw.gov.ph)(参照 2024-10-8)
Guide-to-Labor-Docs.pdf (dmw.gov.ph)(参照 2024-10-8)