はじめに
以前に「特定技能1号「自動車運送業」分野 ~業務開始までの流れ~」と題して、トラックも含めた自動車運送業分野の手続きの流れをブログ記事で書きましたが、その時点では、まだこの分野での「特定技能1号」ビザを申請することはできませんでした。

現在では、自動車運送業分野の上乗せ告示が発表され、協議会も発足しましたので、ビザ申請(在留資格申請)をすることができます。
それに伴って、前回のブログ記事では、バス・タクシードライバーの手続きについてお伝えしました。今回は、需要の多いトラックドライバーの手続きについて、詳しくお伝えしていきたいと思います。トラックドライバーの手続きは、バス・タクシードライバーの手続きに比べると、費用も時間も少なくて済みますが、それでも他の特定技能の手続きより手続き数が多く、手間のかかる作業となります。

トラックドライバーを雇用する時の手続きの流れ
トラックドライバーを「特定技能1号」で雇用しようとする場合、主に以下の手続きが必要になります。
手続の概要
- 外国人を採用する
- 自社支援をしない場合は登録支援機関と契約する
- 協議会に入会する
- 雇用契約書と雇用条件書を作成し、外国人にサインをもらう
- 「特定活動」の在留資格申請を行う
- 外国人に外免切替をしてもらう
- 外国人に日本語研修を行う
- 「特定技能1号」の在留資格申請を行う
- 在留資格申請が認められれば業務を開始する
手続きの詳細
通常は、日本の人材紹介会社や外国の送出し機関から紹介を受けて、外国人を採用します。1人あたり15万円~30万円程度の固定額、または 1人あたり年収の20%~30%程度の人材紹介費用が必要です。費用をかけずに外国人を採用したい場合は、以下の方法を取ることもできますが、手間や時間がかかる可能性があります。
- 日本人と同じように、募集広告から応募してきた外国人を直接採用する
- すでに採用している外国人(永住者や日本人の配偶者など)の知り合いを紹介してもらう
- アルバイトで採用している留学生に、特定技能、日本語の試験と普通自動車免許の試験に合格してもらう
- SNSで自社のアカウントを作成し、アカウントを育てて募集・採用をする
特定技能の登録支援機関は、特定技能を持つ外国人労働者の支援を行う機関です。特定技能1号では、必ず外国人の支援計画を立て、支援を行うわなければならないと定められています。支援内容は、外国人労働者の入国手続きや住居の確保、職場環境の整備、日本語教育の提供など、多岐にわたります。
これらの支援を自社で内製化することもできますが、内製化を考えた場合でも、まずは登録支援機関に委託をした方が良いでしょう。特定技能の制度自体が複雑かつ支援内容も多岐に渡りるため、社内の人間で支援をするのは大変な手間がかかり、本業に支障をきたしてしまう可能性が高いからです。
所属機関は必ず「自動車運送業分野特定技能協議会」に入会します。また、登録支援機関に支援を依頼した場合は、登録支援機関も協議会に入会しなければなりません。協議会の入会は届出制ですが、「特定活動」の申請に必要な「協議会の構成員であることの証明書」は、すぐに発行されるわけではありません。国土交通省の旅客課のお話では、1か月もあれば発行されるでしょう、ということでしたので、余裕をもって届出を行っておきましょう。届出は国土交通省のホームページからオンラインで行うことができます。
雇用契約書も雇用条件書も、出入国在留管理局(入管)のホームページからダウンロードできますので、そちらを使用してください。
また、外国人の労働者に内容を確認してもらい、サインを貰う必要があります。採用した外国人の分かる言語で書かれた雇用契約書と雇用条件書を使用しなければなりませんが、英語を含めた10か国語の雇用契約書と雇用条件書が入管のホームページよりダウンロード可能です。
雇用契約書と雇用条件書は、外国人一人につき2部づつ作成してください。自社の社印を押印し、1部は自社用、1部は外国人用にしてそれぞれが保管します。入管提出用はコピーでかまいません。どちらかというと、原本を嫌がる出入国在留管理署もありますので、コピーのほうが無難です。
特定活動に必要な書類は、入管の「在留資格特定活動」のページから、「自動車運送業分野の「特定技能1号」になるための準備活動(日本の運転免許取得又は新任運転者研修の修了)を希望する場合(「特定活動」(特定自動車運送業準備))」に入ると、詳しい内容を知ることができます。
外免切替が終っている外国人、もしくは日本で運転免許を取得した外国人の場合、「特定活動」のビザ申請は必要ありません。このステップをスキップして、ステップ8の「特定技能1号」の在留資格申請に進むことができます。
特定技能でドライバーとして就労を希望する外国人は、雇用契約を結ぶ前に、いずれかの国の運転免許を所持している必要があります。外国の免許のみを所持し、外免切替を行っていない外国人には、特定活動期間中に外免切替を行ってもらいます。外免切替が終っている外国人、もしくは日本で運転免許を取得した外国人は外免切替をする必要はありません。
日本語研修は任意です。特定技能1号でトラックドライバーを目指す外国人は、日本語能力検定N4レベル以上の日本語能力を持って入社してきます。N4のレベルは以下の通りです。
基本的な日本語を理解することができる
読む
- ・基本的な語彙や漢字を使って書かれた日常生活の中でも身近な話題の文章を、読んで理解することができる。
聞く
- ・日常的な場面で、ややゆっくりと話される会話であれば、内容がほぼ理解できる。
外免切替が終ったら、速やかに「特定技能1号」の在留資格申請を行ってください。外免切替が終ったにもかかわらず、「特定活動」の在留資格で雇用を続けてはいけません。
在留資格が認められるまでの間は、ドライバーの仕事に就くことはできませんが、洗車などの付随業務をしてもらうなどして、会社は雇用を続ける必要があります。
在留資格は認定制度ですので、必ずしも申請が認められるわけではありません。認められなければ、当該外国人をドライバーとして雇用することはできません。また、他の在留資格での雇用も難しいとなった場合は、帰国してもらう他はありません。
特定技能1号の在留資格が認められれば、晴れてトラックドライバーとして、業務を開始してもらうことができます。
この段階で外国人が所持している自動車免許は、普通自動車免許のみであることが多いと思います。外国人が中型や大型の免許を所持していない場合、必要であれば、この後に中型や大型の免許を取得してもらうことになります。
まとめ
最後までお読みいただきありがとうございました。
「特定技能1号」でトラックドライバーを雇用する場合に必要な手続きは、バス・タクシードライバーを雇用する手続きよりも簡易ではありますが、「特定活動」の在留資格を挟んで、外免切替の試験に合格する必要がありますので、他の「特定技能1号」の手続きよりも手間と時間がかかることが予想されます。
また、「自動車運送業分野」は2024年9月に、「特定技能1号」の分野に新たに追加され、実際の運用が開始されたのが12月ですので、現時点では「特定技能1号」でのドライバーの採用に不慣れな会社も多いことでしょう。
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