認定送出し機関(PRA)とは
フィリピン人をフィリピン以外の国で雇用する場合、MWO申請をして、雇用主の会社がDMWに登録をされる必要があります。
その場合、通常はフィリピン政府に認定された認定送出し機関を通して、MWO申請をしなければなりません。認定送出し機関は、英語で、「Philippine Recruitment Agency」といい、PRAと呼ばれています。日本語の正式名称は「フィリピン政府公認の認定送出機関」です。フィリピン労働省の認可を得て、国内の労働者を海外の雇用主に仲介・派遣する事業を行うエージェントのことです。
これまでのブログ記事では、PRAを通したMWO申請を見てきましたが、今回はPRAを通さないMWO申請を解説していきます。
直接雇用(認定送出し機関(PRA)を通さない契約)のメリット
直接雇用をすると、大きなメリットが2つあります。特に費用面でのメリットが大きいため、後述の要件に当てはまる受入れ機関の方は、是非活用されることをお勧めします。
メリット1.費用がかからない
認定送出し機関(PRA)と契約すると、フィリピン人材の紹介料や書類作成料、教育料などの初期費用がかかります。初期費用は、一人当たり5万~10万円が相場のようです。また、月々の手数料がかかる認定送出し機関もあり、相場としては、一人当たり5千円~1万円ぐらいのようです。
契約料は明確に決まっていないようで、送出し機関によって金額に幅があります。大部分の送出し機関は、フィリピンに拠点がありますが、日本に営業所を構えているところもあります。日本に営業所のある送出し機関の最大のメリットは、日本語が通じるということです。また、MWO申請についても精通していることが多く、分からないことがあってもすぐに聞くことができます。ただし、その分割高になるようです。
メリット2.書類が少ない
送出し機関を通してする契約の場合よりも、MWOへの提出書類は少なくなります。ただし、契約書の公証は、認定送出し機関(PRA)を通した時と同じように取得が必要ですので、手間はあまり変わりません。。
PRAを通さず直接雇用するための要件
基本的に、フィリピン人を海外で雇用する場合には、PRAと契約し(有料)、そこを通してMWO申請をする必要があります。
つまり、PRAを通じて人材を紹介してもらわなかったとしても、DMW(Department of Migration Workers / 移民労働者省)のルール上、PRAとの正式な契約を結ぶことが義務づけられています。
ただし一部例外として、PRAと契約せずにMWO申請を行いDMWに登録できる場合もあります。
以下がMWO大阪の直接雇用に関する記載です。
左側が、直接雇用が認められた場合に必要な提出書類です。別の記事で詳しく解説します。
右側に、「直接雇用の禁止」について書かれています。

抜粋|MWO大阪
こちらが、右の文章の日本語訳です。
【POEA規則(2016年改訂)要約】
海外におけるフィリピン人労働者の「直接雇用」に関する規定
第123条:直接雇用の原則禁止
海外雇用主は、フィリピン人労働者を直接雇用することは原則として禁止されています。
第124条:直接雇用が認められる例外(免除対象)
以下の雇用主に限り、特別に直接雇用が認められます:
- 外交団に所属する人物
- 国際機関(国連など)
- 国家元首、および副大臣級以上の政府高官
- 労働雇用大臣(Secretary of Labor and Employment)が特別に許可した雇用主
補足的な免除の条件:
- 上記1〜3に該当する機関の下位の役職者で、POLO(フィリピン労働海外事務所)の承認を受けた者、またはPOLO不在時に認定された代表者も対象。
- POEAが定める基準を上回る条件で契約された専門職・熟練労働者も対象。ただし、雇用主が初めて雇用する場合は最大5名まで。グループ雇用でも1人としてカウント。
- 受入国に永住している親戚や家族に雇用される場合も免除対象。
※POEAは2022年秋の省庁編成によりDMWに統合され、POLOもMWOに統合されています。一般的には、旧POEAがDMW、旧POLOがMWOの認識で通っています。ですので、上記の文書は2022年前と同じものを引き続き使用していると見受けられます。
例外的に直接雇用が認められるケース
まずは、第123条で「直接雇用の原則禁止」が謳われています。フィリピン政府の労働機関であるDMW(Department of Migration Workers / 移民労働者省)では、海外の企業や個人がPRA(フィリピン政府公認の認定送出機関)を通さずにフィリピン人を雇用することを原則禁止しています。
この制度の背景には、過去に発生したトラブルや人権侵害から労働者を守るという目的があります。
次に、124条で例外的に認められるケースについて列記されています。
このブログ記事を読んで下さっている方で、特に気になるのは、専門職、熟練職を雇用される会社ではないでしょうか。
専門職、熟練職と書かれていますので、技能実習生や特定技能1号労働者を雇用する場合は、やはりPRAを通す必要があります。その為、技能実習と特定技能に関しては、特に提出書類が定められているのです。以下は、特定技能でフィリピン人を新規で雇用する場合に、必要な書類をまとめたブログ記事です。

つまり、直接雇用の対象となるのは、「技術・人文知識・国際業務」や「高度専門職」、「医療」などの在留資格で働こうとする外国人を雇う受入れ機関で、DMWの基準を上回る雇用条件で雇用する場合です。この条件でポイントとなるのは、役職や給料額です。どちらも高ければ高いほど、直接雇用を認められる可能性は大きくなります。
この「POEAが定める基準を上回る条件」が、はっきりと明記されていれば良いのですが、私が探した限りでは、サイト上でこの条件を見つけることはできませんでした。
「POEAが定める基準を上回る条件で契約された専門職・熟練労働者」なのかそうでないのかを確かめる方法
それでは、どうすれば「POEAが定める基準を上回る条件で契約された専門職・熟練労働者」であるか見極め、直接雇用でフィリピン人を雇用することができるかどうかを確認することができるのでしょうか?
ずばり、MWOに直接聞くほかはありません。MWOに連絡して、ご自分の会社の雇用条件を伝え、直接雇用ができる案件なのかどうかを問い合わせましょう。
問い合わせ方法は、電話とメールの2種類があります。それぞれメリットとデメリットがありますので、記載しておきます。
メリット
割と繋がりやすいため、繋がればすぐに答えが聞ける。(現在、MWO大阪では15時以降のみの対応となっているようです。)
デメリット
最初は英語対応の為、通訳に代わってもらうよう英語で言う必要がある。また、通訳が不在の場合や、担当者不在の場合も英語で伝えられるため、リスニング力は必要となる。
メリット
日本語で書いて送ることもできる。また、返信が英語であっても、翻訳機にかけてやり取りをすることができる。
デメリット
すぐに返信が返ってくることはあまりない。返信が無い事もある。
以下が、MWO東京とMWO大阪の情報です。
北海道・青森・岩手・宮城・秋田・山形・福島・茨城・栃木・群馬・埼玉・千葉・東京・神奈川・新潟・長野・静岡・山梨
在東京フィリピン共和国大使館移住労働者事務所(MWO)
〔所在地〕東京都港区六本木5-15-5
〔電話番号〕03-6441-0428、03-6441-0478
〔メールアドレス〕mwoosaka.professionalskilled@gmail.com
愛知県、岐阜県、三重県、富山県、石川県、福井県、滋賀県、京都府、大阪府、兵庫県、奈良県、和歌山県、鳥取県、島根県、岡山県、広島県、山口県、徳島県、香川県、愛媛県、高知県、福岡県、佐賀県、長崎県、大分県、熊本県、宮崎県及び鹿児島県・沖縄(2023年10月1日より東京管轄から大阪管轄へ)
在大阪フィリピン共和国総領事館移住労働者事務所(MWO)
〔所在地〕大阪府大阪市中央区淡路町4-3-5 URBAN CENTER御堂筋7階
〔電話番号〕06-6575-7593
〔ホームページ〕https://tokyo.philembassy.net/attached-agencies/migrant-workers-office/ にメールフォーマットあり
まとめ
最後までお読みいただきありがとうございました。
今回は、認定送出し機関(PRA)を通さずに、フィリピン人を雇用する場合のメリットと、その要件、また、要件に当てはまるかどうかの確認方法についてお話してきました。
直接雇用をした場合のメリット
- 認定送出し機関(PRA)に払う費用が0円になる
- MWO提出の書類が少なくて済む
直接雇用ができる受入れ機関の要件
- 外交団に所属する人物
- 国際機関(国連など)
- 国家元首、および副大臣級以上の政府高官
- 労働雇用大臣(Secretary of Labor and Employment)が特別に許可した雇用主
補足的な免除の条件:
- 上記1〜3に該当する機関の下位の役職者で、POLO(フィリピン労働海外事務所)の承認を受けた者、またはPOLO不在時に認定された代表者も対象。
- POEAが定める基準を上回る条件で契約された専門職・熟練労働者も対象。ただし、雇用主が初めて雇用する場合は最大5名まで。グループ雇用でも1人としてカウント。
- 受入国に永住している親戚や家族に雇用される場合も免除対象。
自社が要件に当てはまるかどうかの確認方法
管轄のMWOに電話かメールで直接問い合わせる
縁あってフィリピン人を直接雇用したけれど、送出し機関を通さないといけないのかどうか分からない、MWO申請が必要と聞いたけれど、具体的にどうすれば良いのか分からない、というようなお困りごとをお持ちの、受入れ機関様や登録支援機関様、監理団体様がおられましたら、お気軽に行政書士長尾真由子事務所までご相談ください。
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